第198話 迫りくるフラグ
「ブッ!アハハハッ!君たち面白いね!」
俺の獣人好きの話題で盛り上がっていると、イケメンが突然吹き出した。
「ごめんごめん!私の名前はグレッグ・エドリバー。隣のイースト・パレスから留学に来ているんだ。よろしくワタルさん」
「グレッグさん騒がせてしまって申し訳ない。でも俺は変態じゃないので誤解しないで下さい」
「グレッグで良いよ。年下なんだし。敬語もいらない。まぁとっても仲が良いってことは分かった」
「それじゃ俺の事もワタルでいい」
おっ!このイケメン王子は気さくな性格のようだ。話しやすくて助かる。
「それにしても君たちはどんな関係なんだい?」
「私はワタルの幼馴染。腐れ縁ね。行く先々でトラブルが起きるから監視してるの」
「私はワタルお兄ちゃんの妹。運命で結ばれてる。たまに一緒にお風呂に入る」
「ゴホンッ私はワタルの・・・こ、婚約者になった!」
「婚約者!?アリシアそれは本当かにゃ!」
「ああ」
「うーんまぁ一応本当だ」
「ビックリだにゃ!これは学園が荒れるにゃ!」
大きな瞳をクルクルさせながら、リズさんは慌てている。週刊誌を読んでいる事からこういう話題は好きなのかもしれない。
ウェンディは俺と幼馴染という設定にしている。ウェンディが自ら言い出したことだが、ロード様から入れ知恵だろう。
「おお・・・なんか情報が洪水を起こしているな。でもなんとなく関係は分かったよ。もう1人同じ国からの女の子の留学生がいるから紹介したいけど・・・今日も来ないみたいだね」
グレッグは空席の机を見ながらいった。
「あれ?それってもしかして・・・」
グレッグと同じ国で女の子、ロイヤルクラスに留学している事からピンときた。
「ダリア・コンフォートという公爵家の娘だね」
「なんで居ないんだ?」
「少し前に、相当酷いことを書かれた手紙を受け取ったとかで、精神的に参ってしまってね。内容は分からないけど、酷い事をする人もいるんだ」
「「あ・・・・」」
「何か知っているのかい?」
「い、いえ・・・」
「その手紙が来る前もクラスには来なかったけど、今では完全に引きこもりだ。困ったものだよ」
はい・・・その犯人は目の前にいます。九割方ウェンディのせいだけど。
・・・・・・・・・・
さて、ロイヤルクラスの人たちとの交流もそこそこにして、俺は学校を案内してくれるアドレーヌ様とアリシアの後に付いてミルフィーユ学園をあちこち歩き回っている。
まずは本館にある食堂に足を踏み入れた。大学の学食を想像していたが、目の前の光景はファンタジー感あふれる空間だった。
1000人を超える生徒が利用するので、広さは幕張メッセの会場ばりの大きさ。それぞれのテーブルにはランプが浮かんでおり、壁には風の精霊エアロ様やドリュアス様の絵画や彫刻が並んでいた。
2階にはカフェテリアも併設されていて、生徒の憩いの場となっている。その隣には特別豪華な部屋があり、そこでロイヤルクラスのメンバーはそこで食事をするらしい。
朝が早いということもあり、生徒はまばらだが、俺たちが入ってきた事でまた注目を浴びてしまった。
「キャッ!」
「おっと大丈夫?」
「チッ!」
お盆にコーヒーを乗せた女の子が俺にぶつかりそうになったので、軽く避けた。謝罪を言われても良い状況だが、女の子は舌打ちをして去っていく。
うん!仕込みだな。
コーヒーをかけてハンカチを渡し、後日返しに行くというフラグを確信した。仮に王族にコーヒーをかけてしまったら、最悪死刑になるということを分かっているのかな?
その後、3度ほど同じことが起こったが、全てを回避してやった。目をギラギラさせて向かってくるので分かりやすい。
「注意が散漫な生徒が多いぞ!」
仕込みと気付かないアリシアは去っていく女の子に注意する。
その後、食堂を後にした俺たちは、騎士学科の生徒が学ぶ建物に向かった。
アリシアが主に学んでいる騎士学科の建物の裏手には大きな訓練場があり、多くの生徒が剣を振るっていた。
「どいて!どいてーーー!!!」
突然、空から聞こえてくる声に驚く。
女の子が空から降ってきたのだ。
「風の幼霊たち力を貸してくれ」
ブワッ!
俺が空に手をかざすと一瞬の突風が女の子を包む。落下の速度が落ちていき、無事着地したことを確認して声を掛ける。
「君大丈夫?ケガはない?」
「あ・・・・すみません・・・ハッ!任務の途中だった!これにてドロン!」
ドロンって!明らかにロード様の手先だろ!空から降ってくる女の子という使い古されたネタを確信した。
「まじかよ・・・どんだけ工作員がいるんだよ」
「なんで女が空から降ってくるのよ?」
「あれにぶつかるとフラグが立つんだよウェンディ」
「あれじゃただの襲撃じゃないの!」
「そうだな・・・怖いな」
ウェンディの言った通り、フラグと知っていなければ空から襲いかかる賊だろう。
まぁ、白いものが見えたから良しとしよう。
そんな事を思いながら騎士学科の建物を見学したのであった。
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