第197話 ロイヤルクラス
「えー皆さんおはようございます。卒業まであと少しですが、浮かれずに過ごして下さい」
通称ロイヤルクラスと呼ばれる教室の扉の向こうで担任の先生が生徒に挨拶している声が聞こえた。
ここは、ミルフィーユ王国の中でも身分の高い者の子供たちが集められている教室だ。
つまりどこかのご令嬢やご子息が学んでいる。
俺が王様から叙爵された名誉騎士という身分は、一番下の騎士爵ということだそうなので、本来ならばロイヤルクラスに入れる事は出来ない。
しかし、ユキナと離れたくないアドレーヌ様のゴリ押しと上層部(管理世界)の意向で入れる事になったようだ。
「さて今日は本校に体験入学者が来ております。さっ!入って下さい」
先生に言われたので、恐る恐る教室に足を踏み入れた。
ん?案外人が少ないな。
地球の教室位の広さに十個程の机がならんでいる。そこにはアドレーヌ様とアリシアの他に3人の人物が座っていた。
一人はクルクル巻き毛の金髪で、大きな瞳も金色。気の強そうな雰囲気だ。これぞTHEお嬢様だな。
その後ろで俺たちを興味深そうに見つめている少女は猫の獣人だった。
黒毛の耳に髪飾りを付けいて、キョロキョロと顔を動かすたびにそれが揺れていた。
その子が横の男子生徒に何やら話しかけている。俺たちの噂でもしているのだろう。
話しかけられた生徒は猫獣人に静かにするように注意していた。
その生徒は茶色の短髪で、青い瞳、スッと通った高い鼻。間違いなくイケメンの部類に入るだろう。まるでアニメから飛び出したような王子様がそこにいた。
おや?いくつかの机が空席だ。これで全員じゃないようだな。
「それじゃあまずは自己紹介をしてもらいましょう」
先生と目が合った俺が最初に挨拶する。
「七ほ・・・ワタルと言います。年は27歳で皆さんから見ればおじさんですが、仲良くできれば嬉しいです。少しの間ですがよろしくお願いします」
危ない・・・七星と言いそうになってしまった。親父と同じ名字だと息子とバレてしまうので、気をつけないと。
「ウェンディ・ウィンドよ!よろしく!」
続いてウェンディが腕を組みながら、大股開きで挨拶した。アドレーヌ様からきちんと指導されているはずだが、早速やらかした。
後で説教だな。
「お初にお目にかかります。ユキナール・ホワイトと申します。故あってこのクラスに来ることになりました。私は他国の人間ですが、少しでもミルフィーユ王国の素晴らしさを知ることができればと思います。皆様よろしくお願いします」
パチパチパチ!
100点満点の挨拶をしたユキナに、満面の笑みで拍手をしたアドレーヌ様とアリシア。
思わず俺も拍手したくなる。
これがロイヤルの挨拶だ。見習うがいいウェンディ。
「はい!ありがとうございます。皆さん仲良くして下さいね。今日このクラスに来てない生徒もいるのですが、よろしくお願いします」
その後、軽くホームルームがあり解散となった。
これからアドレーヌ様とアリシアが学園を案内してくれる予定だが、すぐに一人のクラスメートが俺たちに話しかけてきた。
「あなたがあの有名な勇者ですわね!」
「えっと・・・」
「マリアンヌ・ナインティーン・ビレッジよ!ビレッジ領主の娘ですわ!叙爵されたようですけど、ここでは一番身分が下ということを忘れないでくださるかしら?」
金髪巻き髪のマリアンヌが俺を見下ろしながら挨拶をした。開口一番身分を傘にマウントを取ってくる。
「ワタルです。幸運にも叙爵され騎士爵を頂きましたが、身分は弁えているつもりですよ」
「うまくアドレーヌ様の指揮した騎士団に取り入ったようですけど、調子に乗らないことね」
「マリアンヌ!ワタル様はミルフィーユ王国に多大な貢献をしてくださいました。いくら侯爵家でもそれ以上は不敬に当たりますよ!」
「・・・・・・申し訳ありませんでしたアドレーヌ様・・・失礼しますわ!」
ビョンビョンとドリル巻き毛を揺らしながらマリアンヌは去っていった。
「すみませんワタル様!」
「いえいえ謝らないでください。一番下っ端なのは理解していますから」
「マリアンヌの家は微妙な立場なのだ。またちょっかい掛けてくるようなら言ってくれ」
「分かったよアリシア」
貴族社会というのは面子や立場を重視するので、別に下に見られるのは構わないが、マリアンヌはそれとは別の何かを感じた。
「ねぇねぇ・・・私はリズ・イーノっていうの!お姉ちゃんと一緒に戦った人ってあなたでしょ?」
「お姉ちゃん?」
「シズ・イーノって分からないかなにゃ?S級冒険者パーティ「シティ・リバー」に所属しているんだけど」
「ああ!あなたはシズさんの妹さんなんですか?」
「そう!そう!リズって呼んでほしいにゃ!」
「それじゃ俺のこともワタルって呼んでくれて構わない」
確かに言われてみればシズさんに似てあるかもしれない。
「ところでワタルさんは誰が本命なのかにゃ?」
「は?」
「とある週刊誌に、妖精や幼霊のみならず、手当たり次第に手を出す変態がミルフィーユ王国を救ったと書いてあったにゃ!特に幼い子供や獣人が大好きだから、気をつけなさいってお姉ちゃんに言われたよ!」
週刊誌・・・スプリング・ワードか!?この子も愛読していたとは!これはますます抗議に行かなくては!
「全くの誤解だ!俺は常に誠実で紳士的な男だぞ!」
「ウソおっしゃい!シズの事を根掘り葉掘り聞いていたじゃない!耳を触らせくれっていった時はドン引きしたわ!」
「あれは獣人に対して興味があっただけだ!」
「おいワタル!そんな話聞いてないぞ!やっぱり獣人だったのか!よし!明日から猫耳を付けてこよう!」
「アリシアやめて・・・国の剣聖が猫耳じゃ格好がつかないわ!」
「フッフッフ・・・進化した人化の魔法はこの姿で耳を生やすことができる・・・お兄ちゃんだったら触っても良いよ!」
「私、明日から帽子かぶってくるにゃ・・・」
「だから俺は変態じゃねーよ!!!」
あの週刊誌許すまじ!訂正記事を要求する!
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