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第14話 飯はどうする?

 精霊馬車の荷台はとても快適だ。取り扱い説明の通り、横になるだけでリラックス効果があるようだ。

 このままずっと寝ていたい。


 ブルッ

「さむ!」

 体は休めているが、全身が冷え切っていた。

「このままじゃ風邪をひくぞ」

 昨日は、大量の水を被ってしまいずぶ濡れのまま寝てしまったことを思い出す。


 俺は、幌馬車の荷台から降りると、あたりを見回した。


 サワサワと流れる川。

 そこに反射している大きな月明かり。

 相変わらずチラチラしている色とりどりの幼霊。

 空を見上げるとうっすら明るいオレンジ色。

 明け方のようだ。


「・・・こりゃ完全に異世界だな」

 あまりにも現実離れした光景に声が出た。

 ここが異世界だと改めて思う。


「それより体を温めよう。水を出す要領で火の幼霊を集めればいいかな」

 ゆっくり両手を上に掲げると、幼霊にお願いする。


「火の幼霊集まれ!」


「うおっ!やっぱりすごい!!」

 水の幼霊同様、俺の周りに集まってくる火の幼霊。体がオレンジ色に輝き出した。


 あとはイメージが大切だな。

 なんとなくこれかな?

 楽しくて温まるイメージは


「キャンプファイヤー!!」


 ゴォォォ!


 立ち上る真っ赤な炎。家一軒分くらい燃やせそうな業火が出現した。

「ちょっ、ちょっと」


 バシッ

「ちょっとあなた何やっているのよ!早く消すようにお願いしなさい!」

 姿が見えなかったウェンディがツッコミを入れる。


「き、消えてくれー!」

 ようやく収まる業火。


 ・・・・・・・・・


「ワタルは朝から森を燃やす気なの?バカなの?」

「ご、ごめん。寝起きの頭のまま火の幼霊にお願いしてしまった」

「森の中では極力火の魔法は使わない。これ常識!わかる」

「はい。大いに反省します」

 昨日からウェンディに怒られてばっかりだな。正座をしながら謝った。


 その後、そのへんに落ちている枯れ木や落ち葉を集め、焚き火をすることに。

「ライター」

 小さな火が出るイメージを幼霊に伝える。


 ポッ


 無事に火が現れ、しばらくすると枯れ木が燃え始めた。

「あったかい。なんだか安心するな」

 服はとっくに乾いているけど、体に熱が伝わっていく感じがする。


 ぐぅ〜〜

 人間安心すると腹が減る。


「お腹へっているの?」

「ああ、何か食べ物持ってないか?」

「あなた私を召使いか何かと勘違いしてない?あるわけ無いでしょ」

「ほら、魔法で食べ物を召喚したり、レストランに移動できたりは?」

「・・・ないわよ。自分で探すのね」

 ウェンディがジト目で答えた。


 空を見上げればすっかり日が昇り、明るくなっている。仕方ない、森の中で何か食べ物を探そう。

 馬車を収納し、出かけようとした時。


「何か来たわよ!注意しなさい!」


 ウェンディが鋭い視線を向けた先に、それはいた。

「・・・こいつは凶悪なる魔獣なのかな?」


 大きな傘に、目と口が付いた胴体。体長が50センチくらいのキノコが歩いて近づいてきた。トテトテ歩くその姿は愛嬌はあるが、顔は不敵な笑みを浮かべている。


「ワタルがでっかい火柱なんか上げるから寄ってきたんだわ。オバケキノコよ」

「・・・オバケキノコ・・・なんとも凶悪な・・・」

 異世界に飛ばされて、初の魔獣との遭遇だ。うさぎは獣だったし。

 今から生死をかけたバトルが繰り広げられることだろう。


「なんか気合入っているとこ悪いけど、こいつすごく弱いわよ」

「え?弱いの?雑魚キャラ?」

「死んだ獣や古い木に胞子を植え付けて自分を増やすの。もちろん人間にも」

「凶悪じゃねーか!」

 地球でそんな物が徘徊してたら警察案件だ。


「風魔法で倒すわよ。昨日の続きをやってみなさい。詠唱無しで!」

「わ、分かった」

 風の刃で眼の前のキノコを切り裂くことをイメージする。風の幼霊にお願いする方法もあったけど、こんな状況でやったらどうなるかわからない。


「輪切り」


 手をふるった俺の手から風の刃が飛び出し、オバケキノコに向かっていった。

「やったか?」


 そうして飛んでいった風の刃は、オバケキノコの傘を少し飛ばし明後日の方に飛んでいく。


「・・・・・・これくらいで勘弁してやるか」

「・・・あの〜オバケキノコ元気なんだけど」

「さぁ!ウェンディさんやっておしまいなさい!」

「はぁ?なんで私なのよ!」

「さぁ!ウェンディさんお願いします」

 人差し指でオバケキノコを指し、ウェンディにお願いしてみる。


「ったく。ウィンドカッター!」

 ウェンディは軽く手を振るうと、俺の魔法よりも比べ物にならないほどの鋭い刃がオバケキノコを切り裂いた。


「お見事。ウェンディは強いな」

「当たり前よ。私はエアロ様の眷属なのよ。そこら辺の妖精と一緒にしないでよね」

 偉そうに胸を張るウェンディ。


「それにしても輪切りって何よ。また、ダサい魔法名つけたわね」

「ダサいって言うな!キノコ見てたら料理している時を思い出しただけだ」

 風の魔法を使う時、きのこ鍋を想像してしまったのは仕方ないだろう。


「もう少しまともな魔法名考えてよね・・・それはそうと、解体するわよ。」

「・・・解体するの?」

「そうよ。問題ある?魔石を取り出さなきゃ」


 初戦闘を終えた俺に、第二の試練が待ち構えていた。



















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