表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/216

第12話 ウェンディの魔法講義

「風の精霊エアロよ。我の魔力を糧にその偉大なる力を示し給え。願わくはすべてを切り裂く一陣の風。」

 俺は右手をかざし眼の前の凶悪なる魔獣に目標を定める。


「さぁ灰燼に帰すがいい。その刃に恐怖せよ」

 不敵な笑みを浮かべ、右手の紋章が青く輝き、俺の中の膨大な魔力が集まりだした。


「うぉぉー!ウィンドカッター!!!」


 荒れ狂う魔力が一つの風の刃となり、すべての物を切断する・・・・・・予定だった。


 フサァー

 心地よい風が頬を撫でる。


「あれ?」

「・・・・・・あなた何やってるの?」

「い、いや。凶悪なる魔獣を倒そうと風魔法を・・・」

「もう、逃げていっちゃたわよ。うさぎ」

「そうか!恐れをなして逃げ出したか!今日のところはこれくらいで勘弁してやろう!」


 どうやら、うさぎは俺の膨大な魔力に恐れをなしたらしい。


「バッカじゃないの!あれだけ大声で叫べば逃げるに決まってるでしょ!相手はただのうさぎよ。《《うさぎ》》」

「うっ!でも魔法には詠唱が必要で・・・」

「はぁ?何よ詠唱って。必要ないわよそんなの。」

「い、いや俺の世界では常識で・・・」

「それにエアロ様のこと呼び捨てにしたでしょう?謝りなさい!」

「・・・ごめんなさい」


 さて、俺達がなんでこんな事をやっているかと言うと少し時は遡る。


 精霊馬車を手に入れた俺達は、「暴走モード」を見ないことにして、各種機能を確かめた。

 これでなんとか出来そうだと一段落着いたので、今後の事を話し合うことにしたのだ。


「やっぱりこれを使って荷物を運ぶ仕事をするのが良いだろう。」

「そうね。人族は馬車を使って物や人を運んでいるのをよく見かけるわ」

「なぁどこかに町や村はないのか?」

「ここからだと、ミルフィーユ王国が一番近いわね。少し行けば街道に出られるわよ」

 とりあえず町や村に出て、仕事を探そう。荷運びの仕事くらいあるだろう。


「さて、それじゃ早速馬車に乗って行くか」

 俺は意気揚々と立ち上がり、御者台に乗り込んだ。

 もちろん、馬車など運転したことはないが、この馬は俺の契約精霊だ。思いを伝えるだけで動いてくれると取り扱い説明に書いてあった。


「それじゃしゅっぱーつ!」

 年甲斐もなく大きな声をあげ、右手を掲げた。

 なんだか旅の始まりっぽいな。


「・・・・・・」

 ん?ウェンディはなぜだか馬車に乗り込もうとしない。やはりまだ怖いのかな?


「どうやってこの馬車走らせるのよ?ここは森の中よ。獣道でも行くつもりなの?」

 そう言われて辺りを見回す。道らしきものは存在しない。

「・・・・・・恥ずかしい」

 ついテンションが上り、出発する事ばかり考えてしまったようだ。


「馬鹿すぎる。とりあえず馬車をしまって歩きよ」

「そうだな。ウェンディの言うとおりだな」

 サッと馬車から飛び降りた俺は冷静に言った。せめて降り方くらい格好をつけたい。


「それでは改めましてしゅっぱー」

「あら?ウサギね」

 馬車を収納し、二度目の出発宣言をしようとした俺の言葉をウェンディが遮った。

「ちょうど良いわ。あなた魔法を使ってみなさい」


「え?ああ分かった」


 突然始まった初異世界バトル。ついに俺の風魔法が炸裂する時が来たのだ。


 そして冒頭の戦闘に繋がるのであった。


 ・・・・・・・・・


「あのね。魔法に詠唱なんて必要ないの。なぜだか人族にはブツブツ言いながら魔法を使う人がいるけど、本来はイメージして発動するだけ」

「そうなのか。詠唱すると効果が2倍とかになると思っていた」

「なるわけ無いでしょ。大体、詠唱している間に攻撃受けて死んでしまうわ」

 まぁ、言われてみればその通りだ。


「でも、イメージを固めるために魔法名だけ言う魔法使いは多いわね。魔法名はなんでもいいわ」

「それじゃ魔法名はオリジナルでもいいのか!」

「まぁそうね。分かりやすい魔法名にしてる人が大半だけど、お願いだから変な名前にしないでよ」

 イメージをしっかり持って、魔法名を叫べば発動するようだ。

 ん?でも、おかしいことがある。


「なんでいきなり俺に魔法を使わせたんだ?」

「私が教える前に、変な詠唱始めたからでしょ!」

「そ、そうなんですね。気をつけます」

 確かに興奮してたな。反省します。


 さらにウェンディは続ける。

「ワタルがいくら魔力が多くても、今日会ったばかりの私とでは繋がりが薄いでしょ。つまり、導線が細いのよ。だから、台風とか竜巻とか強力なイメージの使えないの」

 まぁ、俺とウェンディは仮契約だし、繋がりが薄いのは仕方ないな。


「なら、俺とウェンディがもっと仲良くなれば、仮がとれて強い魔法が使えるんだな」

「そ、そんなのは知らないわよ。私がワタルのことを嫌いになるかもしれないし」

「まぁそう言うなよ。仲良くやっていこうぜ」

「フンッ!」


 よし、ウェンディに好かれるようになるのが目標だな。俺はこの妖精との付き合い方を決めたのであった。















ご意見ご感想お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いよいよ魔法が本格的に登場し始めましたね! 詠唱が必要と思っていたワタルと、イメージだけで魔法は発動すると教えるウェンディの掛け合いが小気味の好かったです! [気になる点] 絆が深まると魔…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ