第二章【散歩】
次の日、夏輝が散歩をしたいと言ってきたので、
先生から許可をもらってきた。
病院前の公園までなら良いらしい。
『散歩の許可もらって来たよ』と言ったら嬉しそうに
『本当ですか!?やった♪』と喜んでいた。
かわいすぎん?
まあそんな事は置いといて、
僕たちは早速準備をする。
看護師さんから散歩をする時のルールを聞いた後、
公園のベンチに座って少し休んでいた。
僕たちは特に会話はせず、風の音、木の葉が揺れる音、子どもの遊び声を静かに聞聴いていた。
僕たちは音を聴くのが好きで、よくこうやって公園のベンチに座って自然の音をくいていた。
記憶を失っても、好きな事は変わらないんだなと、
そう思った。
「なんか、良いですね、こうやって音を聴くのは、
記憶を失う前の私も、音を聴くのは好きだったんですか?』
『うん、だからよく公園や、山、海に行って、
こうやって静かに音を聞いてたよ』
『そうだったんですね』
その後も特に話す事はなく、静かに音を聴くだけだった。
30分ぐらいした後、公園の真横にある海辺に移動した。
ここの病院はかなり立地がよく、近くにはコンビニ、
公園、海、図書館まである。
入院患者からしたら天国のような場所だ。
暇だったら運動もできるし、海も見れるし、
本だって見れる。
そしてミニゲーセンまである。
さすが口コミ星5の病院だ、納得できる。
そんな事はさておき、
海はやはりいいな、潮風が気持ちいい、
そう感傷していると
『なんだか、懐かしく感じます』
『多分体が覚えてるんだろうね』
『そうなんですかね、』
しばらく経って夕方になり、
病室に戻った。
なぜ夕方になっても病院にいるのかというと、
今日は病院に泊まることになった。
まさかの関係者が寝泊まりできるように
専用の部屋まであるらしい。
ホテルか何かかな?ここは?
まぁそんな事は置いといて、
『さて、夕飯までゆっくりするか』
数十分後・・・
『ピンポンパンポーン』
『夕飯の準備が出来ましたので、付き添い入院の方は、
食堂までお越し下さい。』
とアナウンスが入った。
『さて、行くか、』
そうして、食堂へと向かった。
メニューを見て驚いた。
何故なら、種類が豊富だった。
しかも一つ一つ健康面も考えられている。
例えば、カレーなら野菜カレー、
オムライスやハンバーグなら色々野菜が入っている
サラダが付いてきたりと、とにかく本当に病院なのかと
疑いたくなるぐらい種類が豊富だった。
5分ぐらい悩んだ後、きつねうどんを選んだ。
そして夕飯を食べ終えて夏輝の病室に来ていた。
『体調はどう?』
『特に悪い所とかはないです』
『ならよかった』
…なにか話すネタはないだろうか、いや、
無理に話す必要もないな、
こうやって隣にいるだけでも夏輝は安心するだろう。
誰かがいるのといないのでは全然違うからな、
にしても、今日は色々あったからか、
めちゃくちゃ眠たい・・・
『寝ないように気おつけないとな…』
結局、その後寝落ちした
『・・・ん?あれ、なんで椅子で寝てr・・・
なんで夏輝がここに・・・』
そこで昨日の事を思い出した。
『そうだった、眠すぎてそのまま
寝ちゃったんだった』
完全にやらかした。
何やってんだ僕・・・つと反省していると、
『あ、起きてたんですね。』と聞こえてきた。
夏輝が起きたらしい。
『あ、お、おはよう。』
『おはようございます!
昨日はごめんなさい。疲れていたのにわざわざ私のそばにいてくれて。』
夏輝に少し気を遣わせてしまったようだ。
『うんん、僕がそばに居たかっただけだから、
気にしないで。』
『はい、わかりました。』
さて、今日は何をしようか、
夏輝の記憶を戻す方法・・・何も思いつかない・・・
どうしたものか、などと考えていると、
突然頭痛と体に痛みが生じだ
『ゲホッゲホッゲホッ・・・ガハッ』僕は吐血した。
『だ、大丈夫ですか!?』
意識が朦朧とする。
まさかこんな時に持病の発作が来るなんて・・・、
そして僕は気を失った。
『蓮!気をしっかりして!蓮!蓮!』