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境界剝離、ブラックアウト12

https://twitter.com/Wakatsukimonaka

 警察と黒鍋社員の銃撃戦が始まった。しかしやはり素人が勝てるはずもなく次々と警察の部隊が制圧し、ものの数分で全員が拘束された。

 これで一件落着かと思ったが、開けっ放しにされていた車庫の扉から何か小さなものが放り込まれた。

 小さな丸っぽいものは放物線を描いて、床に硬い音と共にはねた後、…私は相川さんに押し倒されて、床に伏せられていた。

 次の瞬間、大きな爆音と熱が車庫に広がった。





 「えっ…?」

 「手りゅう弾?でも威力が低い。…なんで?」


 茫然する私のそばで相川さんは冷静に状況を把握する。

 車庫の外を確認しに行こうとした刑事さんが外に顔を出した瞬間、刑事さんの頭が吹き飛ばされた。


 「佐藤!!!」

 「誰だ!!外に誰かいる!!」


 突然の仲間の死に相川さんが叫ぶ。

 誰かが車庫の外にいると判断した特殊部隊が盾を構えて外に出ていった。相川さんや刑事さんたちも慎重に外の様子を確認してから車庫の外に躍り出た。私もそれについていく。


 外に出ると警察の特殊班の人たちが盾を構えて扇状に広がっていた。彼らの視線の先には一人の人影があり、彼女の手の銃は煙を吐いている。

 その女性は黒のブラウスに黒のランダムプリーツのロングスカート、その上にも黒のコートを着ており、左肩には大きなボストンバックを掛けていた。艶やかな黒髪は短く切りそろえられ、女性とは言ったがかなり若く、さらには整った顔で少女のようにも見えた。

 万人を振り向かせる美貌を持った彼女は車庫から出てきた私を見ると、いかにも楽しそうに笑った。

 彼女に対して相川さんは声を張り上げ、叫ぶ。


 「天神明星いいぃいいいッ!!!!!!!!」


 それでも彼女は笑っていた。





 「久しぶりですね?有太郎?息災ですか?」

 「先生…。」


 明星先生は私に気さくに話しかける。警察なんて何も気にかけていなかった。

 相川さんは周りの警察に距離を詰めるよう指示しながら、明星先生をさらに睨んだ。


 「天神君…。ここで終わりだよ。」

 「ボクは元気ですよ?有太郎に会いたくてしょうがなかったですけど。」

 「麗人会はサミットを襲おうとしてるのか?」

 「…ああ、もううるさいなぁ。今話しているのが見えないのですか?相川さん。」

 「…とりあえず一緒に来てもらうよ。」

 「ふーん、これを見ても?」


 明星先生は銃をその辺に放り投げ、ボストンバッグを開けた。私たちに中身を見えるようにバッグの口をこちらに向けると、その中身は大量の爆弾だった。

 いつの間にか明星先生の手にはスイッチのようなものがあり、相川さんは急いで指示を出した。


 「全員!車庫の陰まで後退!!!」


 特殊班、刑事さんの全員が車庫の陰、もしくは中まで下がった。…そんな中、私は明星先生の方へ近づいた。


 「有太郎君!!」

 「へぇ?有太郎は怖くないのですか?」

 「…先生が自殺なんてするわけないでしょ。それ、偽物か爆発させるつもりがないかのどちらかじゃないですか?」

 「ふふん、もしかしたらしばらく会わない間に変わっちゃったのかもしれませんよ?」


 私はさらに距離を詰めた。明星先生は後ろに下がりながら、棒読みのように抑揚なく話す。


 「ああ、楽しみですね。ここで二人で死んで、二人の魂は熱でドロドロに溶けあうのです。そしたら二人は地獄でも一緒です。」

 「…」

 「どこかの世界に生まれ変わるかもしれませんね。今度は生まれた時から二人で暮らすのです。」

 「…いい加減にして下さい。」


 天神先生はさらに笑って足を止めた。私は彼女に一気に近づいて手を伸ばすと、…天神先生はスイッチを押した。

 私は驚いて身構えたが、私の後方から大きな爆発が起こった。





 爆風で有太郎は前に倒れこむように膝をついた。慌てて後ろを向くと車庫が吹き飛ばされており、燃える建材や骨組みが崩れ落ちている。遠くからであるが人が倒れていたり、炎に巻かれていたりしているのが見えた。

 有太郎は声を出そうとしたが、後ろから強い力で押し倒される。仰向けになるように倒れると、天神明星はその上に覆いかぶさるように体を置いた。

 手で押しのけようとするも、天神明星に恋人つなぎのように手を握り返されてしまう。天神明星は恍惚として有太郎を見た後、その唇にむさぼりついた。


 「んぐっ!…うあっ、んむ…。んんんっ!…じゅっ…」

 「じゅるっ…。んんん…、うんんぅ…。んはっ、…んむっ」


 舌を差し込み入れ、無理やり絡み合うようにする。唇を割り、唾液を流し込んだ。

 長い間自身の愛を伝えた天神明星は唇を離すと、息も絶え絶えな有太郎の首元にもう一度キスをした。彼女が立ち上がると、そこには大きなキスマークが残っていた。

 有太郎はゆっくりと体を起こしていると、大きなローター音と共にヘリコプターが降りてきていた。そこから縄梯子がゆっくりと垂れ下がってきている。

 有太郎は慌てて天神明星を捕まえようと動く。


 「…ッ!先生!」

 「ふーん?あれ助けなくて良いのですか?」

 「!?」


 天神明星は未だ燃え盛る車庫を指さす。その言葉に有太郎は悔しそうに顔を歪ませ、車庫の方に走り出した。

 走り去る有太郎に笑いながら天神明星は声をかける。


 「もう少しで二人の愛の巣ができます。だからもう少し待っておいてください…ダーリン?」


 天神明星は梯子に手を掛けた。


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[一言] いったい探偵さんに何があったのか、、、
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