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境界剝離、ブラックアウト11

https://twitter.com/Wakatsukimonaka

 黒鍋の車庫の中。照明で煌々と照らされ、眠っていた鉄道車両はその光を反射している。

 私は車庫の中にいた犯人に声を掛けた。


 「それで一応話は聞きましょうか?…黒鍋近代鉄道の社員の皆さん?」


 光に照らされる中には、丸山さん、柏木さん、社長の黒鍋さん、コントロールセンターにいた人たち…その他にも多くの人たちがいた。彼女らは信じられない、といった顔をしており、その中でも黒鍋さんは特に狼狽している。


 「まさかみーんなグルだったなんてねぇ。」

 「ちょ、ちょっと待ってください!いったい何のことですか!?これは何の騒ぎですか!?」

 「では一から説明しましょうか。」


 しらばっくれようとするので、言い逃れできないよう追い詰めることにする。警察の武装部隊が展開する中私は今回の事件を説明する。


 「まずあなたたちは逢性麗人会だ。」

 「うっ!?」

 「しかし、大木さん、稲垣さん、そして神崎さんはそんなあなた達から離反しようとしていた。…大木さんも稲垣さんと同様に警察か誰かに密告しようとしていたんじゃないですか?だから大木さんを殺害した。」


 ここで相川さんが補足する。神崎さんから少し話を聞いたのかな?


 「多分、元々は普通の鉄道会社だったんじゃないかな?それを逢性麗人会が乗っ取るように牛耳り始めて、ほとんどの社員も彼女らに賛同したけど、その三人は賛同しておらず、無理に従わされていた。…じゃないと既婚者の神崎さんが男性の人権を奪いたい麗人会に入る理由はないし。」

 「ちょっと待ってください!なんですかそれ!しかもどうして私たちがそれで疑われることになるんですか!?」

 「逃走方法ですよ。」

 「え?」


 困惑する黒鍋さん。そんな彼女を尻目に私は続ける。


 「二つの殺人事件の犯人はいずれも事件の瞬間以降、一目や監視カメラに見つかっていません。それは何故か?

電車に乗って移動したからです。」

 「え?」

 「もちろん駅から乗ってないことは明らかです。おそらく商店街近くにあった踏切から線路内に侵入し、線路の途中から回送電車に乗った。そしてそのまま実行犯を乗せたまま移動し、途中で降ろしたのでしょう。回送電車を優先して運行したり、犯人を乗せるために線路上で一時停車したりしたせいでダイヤに乱れが生じて運行遅れが発生し、また普段は電車が通らない時間に事件の後だけ回送電車が通った。…この二つは記録で確認済みです。」

 「電車なら道路の人やカメラに見つかるはずもないし、線路内の監視カメラは黒鍋のものだからいくらでも改ざんして、嘘をつける。それでも回送電車もいつかは通常の電車として運用するはずだし、途中で犯人を下ろさなくてはいけなくなった。だから犯人は遠く離れたところで見つかったんですね!」

 「そう。そしてそんな大胆かつ単独でできない逃走方法を成立させるためには、鉄道会社全体で協力しないといけない。だから皆さんが犯人になるんです。」


 黒鍋社長をはじめ、社員の人たちは目を見開いて顔を真っ青にしている。

 私はスマホを取り出し、フードと神崎さんが喋る動画を再生する。柏木さんがビクッと震えた。


 「実行犯はおそらく柏木さんですね?神崎さんが敬語を使っている以上、大木さんと同期の神崎さん以上の立場の人になりますし、…よく聞けば声もそっくりです。」

 「…」


 柏木さんは震えながら黙ったままだ。ここで黒鍋社長が大きな声で叫び始める。


 「いっ、言い掛かりです!大体そんな証拠がどこにあるんですか!?」

 「相川さん。」

 「りょーかい。これかな?」

 「それはっ!?触らないでくださ「動かないで。」」


 黒鍋社員の後ろにたくさんあった木箱に相川さんが近づく。黒鍋社長は止めようとするが、相川さんにけん制された。

 そのまま適当な箱を相川さんは蹴り壊した。…中から銃や弾薬、爆薬など物騒なものがゴロゴロと出てくる。


 「うわぁ、すごい数。サミットでも襲撃しようとしてた?そりゃ警察に密告しようとするわけだ。」

 「…」

 「これであなた達が危険な集団だとわかりました。皆さんの会社のパソコンのデータも探せば、線路内の監視カメラのデータも見つかるんじゃないですか?」


 黒鍋社長は崩れ落ちるように座り込んだ。相川さんたちが彼女たちを拘束しようと近づいたとき、はっと何かに気づいたように黒鍋社長が声を張り上げた。


 「だれか!外部に急いで連絡しに行きなさい!幹部様にここに来てはいけないと!!」


 社員全員が気づいたように顔を上げ、車庫から出ようと暴れ出した。相川さんが素早く指示を出す。


 「誰も外に出すな!スマホにも気をつけろ!!」


 規律良く効率的に動く警察の部隊と黒鍋社員が入り乱れる。私は専門職に荒事を任せて後ろに下がるが、見ると一人、警察の網を抜けて車庫の外に出ていった。

 私のそばにいた遥空もそれに気づいたようで、一人で駆け出した。


 「私あいつ捕まえてきます!」

 「えっ、おい遥空!」


 遥空を追いかけようとしたが誰かが銃を持ちだしたらしく銃声が車庫に響き、物陰に隠れざるを得なくなった。


 「大丈夫か、あいつ…。」





 スーツ姿の女が車庫から出て走っている。しかし追ってきた私に気づいたらしく、急にこちらに向いてきた。

 手にはナイフを持っている。まずい?


 私を始末しようと女はこっちに踏み込んでナイフを振ってきた。私は後ろに飛んでよけるが、さらに女はこちらに駆けてくる。私は手首をコキコキと動かし、装置を起動した。

 女は腰元にナイフを構え、私を刺そうとする。切っ先が迫る中、私は…袖口からワイヤーを射出した。ワイヤーは女の手にくるくると巻き付き、私がそれを引っ張ると女はバランスを崩す。その勢いでナイフは女の手から離れ、明後日の方向へ飛んでいった。


 女は丸腰になったが、それでも私に向かって飛び掛かってくる。まだやるのか。

 素早くワイヤーを巻き取って回収し、今度は上に向かって射出する。ワイヤーの先にはフックがついており、真上にあった街灯に引っかかった。ワイヤーが巻き取られると私の体はそれに引っ張られ、上に勢いよく登っていく。

 その勢いのまま飛び掛かってきた女の顎にサマーソルトキックを叩きこんだ。





 気絶した女の所持品を確認し、怪しいものや通信できるものを取り上げてから街灯の根元に縛り付けておく。


 「ふへーぇ、緊張したぁ。」


 やっぱり仕事道具はいつも持っておくに限る。

 先生のことが心配だし車庫に戻ろうとしたところで、…大きな爆発音が響いた。


 せんせい?


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