いつか思い出のカンパネルラ2
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スイーツが食べたいと言い出した明星先生の為に車を走らせ、事務所から少し離れたところにあるショッピングモールまでやってきた。その一角にあるカフェが件のスイーツがある店だった。
ショッピングモールに着いてすぐ行ってみると人気店なのか結構な人が並んでいたが、回転率は良いらしくすぐに席に着くことができた。注文を終えると、楽しみなのか明星先生は妙にソワソワしながら待っている。
「そんなに楽しみなんですか?」
「ふふん、ここのスイーツは味はさることながら、見た目もいいことで有名なのですよ!そんなスイーツをボクのインスタに載せれば、バズること間違いなしです!」
「インスタの為にわざわざ…?」
「もちろん純粋に食べたかったのもありますよ。それでも映えはやっぱり捨てられません!」
やっぱり明星先生は名声重視らしい。そんな話をしていると注文したものが運ばれてくる。美味しそうなスフレパンケーキで周りにはイチゴや桜色のソースなど、春らしく華やかに彩られていた。
明星先生はスマホを取り出し、何やら角度に気を付けて写真を撮っている。
「助手、そこ移りこむからちょっとどけろ。」
「はいはい…」
「はいは一回」
要望通り椅子から立つと、いい感じの写真が撮れたのか明星先生は満足そうにしている。もう座ってもいいだろうか?
私は席に座って一緒に届いたチョコケーキと紅茶を食べ始める。メニューの写真を見た限り甘いのかと思っていたがそこまで甘くなく、くどさも感じない。明星先生の言う通り見た目だけでないらしい。
舌鼓を打っていると明星先生は何かの作業を終えたのか、スマホを見てうんうんと頷いている。
「投稿終わりです!これはバズること間違いなしです!」
「ここのスイーツ美味しいですね。食べないんですか?」
「無論!食べます!」
濡羽色の髪を持つ美少女が嬉しそうにスイーツを頬張る。スイーツじゃなくてこっちを写した方が人気は集まるのではないかと思ったが、そういやここは貞操逆転世界だった。あんまり女性の顔でバズらないのだったか。
少し気になったのでスマホを取り出して調べてみる。インスタで少し調べてみると明星先生のものっぽいアカウントがあった。一番新しい投稿はあのパンケーキの写真だ。間違いないだろう。
『春薫るスフレパンケーキ。束の間の息抜き。 #名探偵 #天神探偵事務所 #天神明星 #名探偵の休日 #スイーツ 』
なんだこれ。
ちょっと腹が立ったので、恨みを返すのも含めて投稿にコメントを返す。
「あっ、早速コメントが付きました!いやー人気者は困りますねぇ!」
『名探偵の休日wwwwwww』
「喧嘩売ってんのかぁああ!!こいつぅううう!!!」
スイーツを食べ終わり、少し不機嫌になった明星先生と店を出た。車に戻ろうと少し歩いたが、先生はまださっきのコメントに怒っている。
「何なのですか!あのコメント!このボクに何てことを言うのですかねぇ!!」
「まぁまぁ、たかが1コメントじゃないですか。それに人気なら一定数アンチとかつきますよ。」
「まあそういうものですかね。…はー、人気者はつらいです。」
納得したのか先生はやれやれと首を振った。そこで何かに気づいたように頭を触る。
「あれ、ボクの帽子は?」
「帽子ってあの白黒のディアストーカーですか?さっきの店に置いてきたんじゃないですか?」
「えー、戻らないとですかね…。」
先生は何やら戻ることを渋っている。一瞬めんどくさいのかと思ったが、少し足を気にしていた。ああ、そういうことか。
「いいですよ、取ってきます。明星先生はそこのベンチで待っといてください。」
「え?あっ、はい、わかりました…?」
明星先生をそばのベンチに座るように促し、私はさっきの店まで戻ることにした。
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