いつか思い出のカンパネルラ1
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一年は早いもので、ついこの間大学に入ったと思っていたのに季節は一巡りしてしまった。この四月から私は二回生となり、今は大学で学期初めのオリエンテーションを受けている。
「では、2021年度1学期のオリエンテーションを始めます。まずですが…」
しかし私は壇上でマイクに声を通す教授の話に集中していなかった。
少し前、マンションの事件で私は一人の女性を傷つけてしまった。彼女に対し、何か償いをしなくてはならないと思っているが、何も思いつかない。そもそも彼女は私にもう会うつもりはないだろう。それ以前に私はもう彼女に会うべきではないのか?
そんなことを考えているとスマホが震える。見ると明星先生からの電話で、目立たないように講義室を出て通話に出た。
「うわああああぁぁあああん!!あああああ!!!」
けたたましい叫び声で思わずスマホから耳を離す。しばらく大きな声が聞こえていたが、時間が経つと落ち着いてきたのでもう一度スマホを耳に当てた。
「どうしたんですか?何かあったんですか?」
「…緊急事態」
「え?」
「すぐに来い」
「えっ、ちょ、ちょっと待って」
何も情報を得られないまま電話を切られた。えぇ…、どうしようか。
でももしかしたら何か事件に巻き込まれたのかもしれない。緊急事態と言っていたしすぐに行くべきだ。
そう結論付けた私は急いで天神探偵事務所に向かった。
「期間限定スイーツを食べたいのに阿須原さんが車出してくれないぃいいい!!!!!!!」
「いい加減にしろやぁあああああああ!!!」
天神探偵事務所に着くと、スイーツが食べたいと叫び散らす明星先生がいた。阿須原さんはどこ吹く風と紅茶をたしなんでいる。
聞くとここから少し離れたところにあるショッピングモールの中のスイーツ店で、春の限定スイーツを販売しているらしい。明星先生はそれを食べたいらしく、阿須原さんにそこまで車を出してほしいと言い出したが、阿須原さんに断られたとのことだった。それで私を呼んだのか…。
「そんなんで呼ばないでくださいよ…。流石に私も大学がありますし…。」
「だってぇ…。だってぇ…。」
「ああ、もう。阿須原さんも予定があるらしいですし。」
「水彩画教室があるので。」
「でも!食べたいのです!!!」
明星先生は何かを期待するようにこちらを見てきている。でもなぁ…。
「ボク、コーヒーかけられた。」
「うっ」
「まだ許してない。」
「えー…。」
まぁでも、明星先生も食べたいんだろうなぁ。それにオリエンテーションぐらいなら行かなくても何とかなるだろう。
「はぁ、じゃあ。車のキー貸してください。」
「!!!!!!それでいいのです!!!」
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