お菓子の家攻城戦12
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しばらくして警察が到着し、倒された犯人グループが連行されていった。最初は抵抗していたが、阿須原さんを見ると顔を青ざめてすぐに黙っていた。何でだろう?
警察や野次馬の人たちが集まりマンション前が人でごった返しており、私も疲れたので少し離れたところで座って休ませてもらっている。すると天神先生が何かを持ってこっちにやってきた。
「はぁー、疲れました。」
「何やってたんですか?それは?」
「お前が仕掛けたカメラですよ。残しておくと面倒ですからね、ぱぱっと回収してきたのです。」
「あぁ…、まずいことしてる自覚はあったんですね…。ていうかよく見つけられましたね。」
「馬鹿の仕掛けそうなところなんてお見通しです。それにこの名た」
「有太郎さん!!!」
天神先生の声を遮って渚さんがやってくる。そういや連絡か何かをしていなかった。彼女はかなり心配そうにしてくれている。
「大丈夫でした!?電話の後すごい揉めるみたいな声が聞こえてきて!巻き込まれてるんじゃないかと思ったんですけど怖くて出れなくって…!銃を持ってた人がいたって聞いて本当に心配になって!」
「だ、大丈夫ですよ。特に怪我とかないですし。」
「本当ですか!?…よかったです。有太郎さんに何かあったと思うと本当に心配で…」
「あはは…。」
「これからどうします?悪い人はみんな捕まったらしいですし、私の部屋で一休みします?」
「ああ…それは…」
これからのことを忘れていた。マンションの中のことを調べるために渚さんに近づいたのだから、私としてはこれ以上渚さんといる意味はない。しかし彼女はそうではない。私とまだ一緒にいるつもりだろうし、話を聞く限りこれから先もそうなのだろう。…どうしよう。
「おい、助手。さっさと帰りますよ。カメラ片付けないといけないのです、手伝え。」
「じょ、助手?有太郎さん?この人は?」
「えっと、その。」
「ん?ああ、この馬鹿がマンションに入れるよう協力してくれた人ですか?ありがとうございます。おかげでこのボクが華麗に事件を解決することができました!」
「事件?協力?えっ、あの、どういうことですか?」
…もう言うしかないな。
私は渚さんに事件の手がかりを探していたこと、どうしてもマンションに入りたかったことを伝えた。話を重ねるたびに渚さんの顔に困惑と失望の色が広がっていく。
全て話し終えたところで渚さんは震えながら口を開いた。
「全部、…全部嘘だったんですか?」
「…はい」
「私じゃなくても、誰でもよかったんですか?」
「…はい」
「私じゃなくても、私以外にも言い寄るつもりだったんですか?」
「…はい」
「私のこと好きじゃなかったんですか?」
「…はい、でも、いえ、その通りです」
「私の内面が好きじゃなかったんですか!!!」
渚さんが激昂する。ああ、これは、顔を背けたら駄目だ。
「言ってくれたじゃないですか!私のこと好きだったって!!」
「…はい、全部、嘘、でした」
「本当にうれしかったのに!やっと理解してくれる人ができたって!やっと一人じゃないんだって思ったのに!この運命を大切にしようと思ったのに!!」
「はい、本当に…、本当にすみません」
「…ッ!!!」
心を込めて頭を下げる。その瞬間軽くて重い音が響き、右のほほに鋭い痛みが走る。
私の顔を打った渚さんは泣きながらマンションに戻っていく。
「地獄に落ちろ、クソ野郎」
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