お菓子の家攻城戦10
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そんなこんなあってマンション内に小型カメラを多数仕掛けることになった。今は阿須原さんの運転でマンションまで向かっている。
そういえば今から渚さんに会わなくてはならないのだった。…彼女に会うのか。
少しだけ陰鬱な気分になっていると相川さんが話しかけてきた。
「有太郎君、ちょっといい?」
「あっ、はい、何ですか?」
「犯人のことなんだけどね、先の事件で犯人グループが銃を持っていることがわかってるんだよね。」
「はい、そうですよね。…ん?」
ということは、私はいまからとんでもないところに行くのでは?
「本当はそんなところにあんまり行ってほしくないんだけど…」
「ダメです。そうしたら証拠が見つからないじゃないですか。」
「…まあ、少しでも危ないと思ったらすぐに逃げてきてね。本当に危ないから」
「は、はい」
ま、まあ、カメラ仕掛けるだけだから大丈夫でしょ。多分。
そうしてマンション前に到着した。小型カメラがたっぷり詰まったバッグを背負い、車を出る。相川さんは心配そうにこちらを見ており、阿須原さんはサングラス姿で微笑んだままだった。天神先生はこちらに目もくれずスマホを見ていた。…行こうか。
マンション前で渚さんに電話をする。
「…もしもし、渚さん?」
「あっ、有太郎さんですか?もう着きます?」
「はい、今マンション前で。今から部屋に行きますね。」
「わかりました!フロントの人には言ってあるので、私の名前を出したらエレベーターまで案内してくれると思います!待ってますね!」
「はい、じゃあまた後で。」
そういって通話を切る。マンションの中に入りフロントに行こうとすると、そこには従業員と共にあのオーナーがいた。少しだけ委縮してしまったがこちらのことはバレていないはずなので、気にしないようにフロントに問い合わせた。すると確認のため少し待つように言われる。ここでオーナーが話しかけてきた。
「おはようございます。素敵な方ですね。…現在のお住まいに不満などございませんか?」
「えっ、あっ、はい。ありがとうございます。いえ、とくには…」
「当マンションは低価格で男性専用フロアに住めるので、よろしければ検討してみてくださいね。」
「は、はい。ありがとうございます…。」
急に話しかけてきたので驚いた。どうやらオーナーのお眼鏡に叶ったらしい。全然うれしくないが。
そうしていると確認が取れたらしく、従業員の人がエレベーターまで移動するよう伝えてきた。こちらをじっと見てくるオーナーを尻目にエレベーター前まで移動するが、少し気になったので倉庫まで寄ってみる。倉庫の扉のドアノブをひねってみると、鍵は開いておりすんなり中を見ることができた。中には誰もおらず、やはり倉庫は普段は開いているようだった。
エレベーターまで戻りボタンを押して待っていると、やがてエレベーターが到着した。エレベーターが開いて入ろうとすると、出る人がいたらしくぶつかりそうになってしまった。
「きゃっ」
「うおっ、あっ、すいません」
見ると若い美人の女性だった。ヨーロッパ系の顔に綺麗な白い髪、加えて赤い眼。アルビノ?
妖艶な雰囲気をまとっており、妖精というより…夢魔という感じだ。
「ふふ、大丈夫よ。ここの住人?」
「いえ、ここの人の知り合いで…」
「へぇ、そうなの…」
「リリア様、お時間が…。」
「ああ、そうだっけ?」
後ろに何やら執事服を着た女性がいた。リリアという人に時間が迫っていることを伝えている。そのまま二人は私の横を通っていこうとしたが…すれ違い際にリリアさんがこちらに顔を向ける。
「あら、同郷?」
「えっ?」
「ふふ、また会いましょ?」
リリアさんは何かよくわからないことを言ったあと、マンションのフロントの方に行ってしまった。同郷?
気になるが、今はそこまで時間がないのでさっさとエレベーターに乗ることにする。エレベーターの中にはエレベーターガールのような人がおり、私が何も言わずとも21階のボタンを押した。
21階に到着するとエレベーターガールが開ボタンを押して、私に出るように促した。礼を言ってエレベーターを出る。さて。
廊下を見ると誰もいないようでまさしく絶好のチャンスと言えた。カバンから小型カメラを取り出し、できるだけ死角がないように仕掛けていく。ここの階以外はどうしよう、階段から移動するようにしようか。
「何をしている?」
突然後ろから声をかけられる。…振り向くと黒のパーカーに黒のズボン、黒マスクと黒ずくめの女性が立っていた。怪しんでいるようで私を睨んでいる。彼女は手を伸ばすと仕掛けたばかりのカメラをつまみ上げる。
「これは…、カメラ?」
「あはは…」
「まさか、探りに?警察?」
黒ずくめの女性はこちらをさらに強く睨み、パーカーのポケットを探りだした。そのまま取り出したのは黒光りする銃で…ッ!?
女性が叫ぶ中私は廊下の奥へ駆け出した。
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