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クリアリング・ホロウ3

 なんだかんだあって私たちは飯田さんの恋人、三木優斗さんの現在の居場所を調べるため、三木さんが失踪以前によく顔を出していた場所に向かうことになった。それでまず三木さんの職場にやってきたのだが。


 「三木は二週間くらい前から来てないですよ。」

 「そうなのですか…。」

 「連絡も何も寄こしてこないので私共も居場所を知りたいぐらいです。」

 「わかりました、ありがとうございます。」


 飯田さんに姿を見せなくなった頃と同じくらいから仕事にも来てないようだった。その後実家や飯田さんが把握していた友人、母校まで調査に向かったが、何の手がかりも得られなかった。


 「なーんでだよー!!」

 

 長野まで車を飛ばしたのにも関わらず、情報が集まらないことに激昂する天神先生。運転した私も疲れたよ…。


 「そういや三木さんの家って見に行ってないですよね。なんでですか?」

 「あー、飯田さんから行くだけ無駄って言われていたのですが、ここまでくると行くしかないですね。ご近所さんなら何か知っているかもしれないですし。ほれ助手、車。」

 「はいはい。」

 「はいは一回。」


 そうして三木さんの住所までやってきた。都内の中心から離れたところにある高層マンションで、下層にはスーパーやアパレルショップなどの店を抱えており、一目見ただけで高い家賃を想像させる。


 「すごいな。こんなとこに住んでたんだ。」

 「…三木さんの会社は中小規模。聞く限り平社員のはずなのですけど、どうしてこんなところに住めているのでしょうか?」

 「社宅とか?」

 「にしては大きすぎます。とにかく入りたいのですが…。」


 店とは別のところにある居住者の為の入り口を見にきたが、大きなフロントに二重の自動ドア、複数人の警備員とかなり厳重なセキュリティがあるようだった。するとそこに見覚えのあるロゴの配達員がやってくる。どうやらフードデリバリーの人間のようだ。

 フードデリバリーはフロントに宅配に来た旨を伝えているようだったが、配達物を職員に渡しそのまま帰っていってしまった。フロントへの届け物かと思ったが、配達物を持った職員はエレベーターに乗り、そのまま上まで行ってしまう。


 「まさか配達員も中に入れないようにしてる?」

 「何かあったときトラブルになりそうですが…。かなり厳重なセキュリティですね。部外者は完全お断りのようです。」

 「どうします?事情を伝えれば入れてくれるでしょうか?」

 「無理でしょうね。ボクたち警察じゃないですし。行くだけ無駄ってこういうことかぁ。」

 「となると、まだマンションに住んでるかどうかわからなくないですか?」

 「ですね。飯田さんや仕事場に連絡を取らず中で引きこもっているだけの可能性もあります。…助手、行きますよ。」


 天神先生はその場を離れようとしたので慌ててついていく。車のところに帰るのかと思ったが、そのままマンションの入り口の周りを散策し始めた。

 「天神先生?どこに行くんですか?」

 「正直あんまり手掛かりがないです。なのでちょっと強引に行きます。」


 そういって入り口から道路を挟んで反対のところにあるコインパーキングを見つけた。天神先生は頷き、私に声をかける。


 「車を持ってきますよ。張り込みの時間です。」





 コンビニで物資を補給してから、見つけたコインパーキングまで車でやってきた。ちょうど後部座席からマンションの入り口が見える位置に止める。


 「これバレないんですか?」

 「遮光フィルターは貼っています。覗き込まれなきゃ大丈夫です。」

 「へー。でもなんで張り込みなんですか?」

 「いくら宅配があるといっても、一人暮らしであればいつかは出てこないといけなくなると考えたのです。顔は割れていますし。」

 「でもめちゃくちゃ時間かかりません?」

 「わかっていますよ。時間の区切りは付けています。三木さんのSNSとかこのマンションとかを調べている間に出てきてくれたらいいな、ぐらいの打算です。ちゃんと見ておいてくださいね。」


 そういって天神先生はカバンからノートパソコンを取り出し、電源をつけながら光が漏れないように自分ごと黒い毛布をかぶった。見ていてくれ、と言われても男性が出てくれば嫌でも目立つため、そこまで気を張る必要はない。途端に暇になった。

 毛布の中からあー、とかむーとか聞こえてくる。なんだこの生物。そういえば天神先生のことについてあんまり知らないな。


 「そういや私あんまり天神先生のこと知らないんですよね。」

 「…バイトに志願しに来ておいて?」

 「まあそれは置いておいて。天神先生のこと教えてくれません?」

 「んー、まぁ、それ自体は殊勝な心掛けです!ではまずボクが名探偵と呼ばれるようになった事件から…!」


 やべぇ、長くなる!てかそういうことじゃない!


 「いや聞きたいのは武勇伝じゃなくて!もうちょっとパーソナルなことですよ。」

 「警察の誰もが首をかしげる中、ボクは揚々と…、んん?パーソナル?」

 

 すぼっと毛布の塊の中から艶やかな黒髪ショートの美少女の頭だけが出てくる。なんだこの生物。


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