クリアリング・ホロウ2
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「本当にキミここで働きたいの?大丈夫?犯罪歴とかない?」
「ここで働きたくて応募しました。あと犯罪歴はないです。」
「依頼人の匂いとか嗅がない?ボクの事務所の印象悪くしたりしない?犯罪歴とかない?」
「誠意をもって仕事に励みたいと思っています。あと犯罪歴はないです。」
「変なこ「あと犯罪歴はないです。」」
「き「あと犯罪歴はないです。」」
「…。」
「あと犯罪歴はないです。」
「もう逆に怪しいよ…。」
何故か頭を抱え始める天神さん。完璧な受け答えのはずだったのに。
大きめのビルのテナントの一つにある探偵事務所。アンティーク調の家具、小物で構成されたその事務所の応接室で、私は面接を受けていた。
そのとき横から紅茶の入ったティーカップが差し込まれる。見ると妙齢の女性がにこやかに給仕してくれていた。上品な雰囲気をまとった方でどこか安心できる、そんな印象だった。
「ようこそ、天神探偵事務所へ。ここで事務をさせていただいている阿須原といいます。」
「あっどうも、ありがとうございます。有木有太郎です。大学一回生です。」
阿須原さんは微笑んで頷くとトレーを持って下がっていってしまった。天神さんが苦い顔をしながら話始める。
「ちゃんと働いてくれる気がしないのですよ。素性もよくわからないし。」
「この前の事件で興味を持ったんですよ。それで是非働きたくなりました。免許もあります。」
「うーん…。」
天神さんはうなり続けていたが、急に立ち上がって叫び始めた。
「やっぱりナシナシ!怪しすぎますもん!!」
「そんなことないです!ちゃんと頑張ります!」
「信じられねぇ!」
ヒートアップして叫びあう私たち。負けてらんねぇ!大声勝負だ!
「変態!評判下げ!犯罪者!」
「健全!歩く広告!犯罪歴はありません!」
「犯罪歴はあります!」
「犯罪歴はありません!」
『犯罪歴はありま「す」「せん」!!!!』
「あのー…。」
はっとなって見ると、スーツ姿の女性が入り口に立っていた。
「ここって探偵事務所ですよね?」
阿須原さんがカップを差し出す。女性は会釈をして受け取り、一口飲んだ。天神さんが切り出す。
「で、どういった依頼で?」
「あ、はい。私は飯田といいます。人を探してほしくてここに。」
「人探し?」
飯田さんは写真を取り出した。私服姿の飯田さんと筋肉質な男性がピースをしながら写っている。
「恋人の優斗君です。もうそろそろ交際し始めて1年で結婚の約束もしてたんです。なのに2週間ぐらい前から急に連絡がつかなくなってしまって…。」
「ほう?逃げられたということですか?」
「そんな!すごい仲もよくて、プロポーズした時も泣いて喜んでくれたんです!一緒に住むために家だって決めたところだったのに…。」
「…わかりました。では彼の現在の居場所を探せばいいのですね。彼の情報をもう少し詳しく教えてください。」
天神さんが優斗なる男性の情報を詳しく聞いてメモする。聞き終えたところで勢いよく立ち上がり胸を叩いた。
「ありがとうございます。後はこの名探偵、天神明星にお任せください!…早速調査に行きます!阿須原さん、車を出してください!」
「私この後生け花教室に行くので。」
「…。」
胸を叩いたポーズで固まる天神さん。そこで私はスマートに免許証を取り出し、天神さんに見せた。天神さんは苦虫を嚙み潰したような顔をするが、やがて腹をくくったように声を出した。
「…試用期間だ!ついてこい助手!!」
「あいよキャプテン!」
「先生と呼べ!」
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