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失態

 リーヤは軽く謝罪を入れてすぐに目を閉じて個性魔法(オリジナルマジック)を発動する。周りの音を探知し、数秒後には顔を顰めた。



「うーわ、結構な数来てるよ〜。急いでここから離れないと目撃されちゃう。ノットーって強いけど静かに出来ないからな〜、仕方ないけど...」

「そっか〜。じゃあさっさと退散しよっか〜。」



 そんな話をしていた最中、ノトレムは倒れている殺人鬼の目の前に立ち、ローブの中から縄を取り出した。

 腰を下ろして殺人鬼を見ると、ピクピクと小さい痙攣をしているがまだ意識はあるのが分かる。身体中に駆け巡る痛みに苦しみ、口から出ている鮮血を見ると"やりすぎた"とノトレムは少し申し訳なく感じる。



「お...まえ...本当に.....下級国民........なのか?」



 そんな辛そうに殺人鬼は問い掛け、すぐそこまで伸ばしていた縄をピタリと止めた。



「...うん、そうだよ。」

「なら....何故だ...強いとかは関係ない........何で上級国民を庇う....アイツらが........憎くないのか?....現状に満足....してるのか?」

「....ううん、満足なんかしてないよ。差別されるのは苦しいし悲しい、心の傷は身体の傷より痛いから嫌いだよ。だから、僕だって憎んだことはあるよ。上級国民を....それ以外すらも...人一倍にね....」



 ノトレムは話している内に記憶の片隅に置いてある過去の出来事を思い返した。



 心無い暴言、理不尽な暴力、姿形による差別。


 周りの過度な期待、期待の目、期待の思い、のしかかる重圧、壊れかける心、始まる教育、報復の教育、復讐の教育、人殺しの教育、教育、教育、

 教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育...........



 過去を思い返せば思い返す程溢れる悲しみと苦しみ、分かりやすいノトレムは表情を曇らせた。


 そんな暗くなったノトレムとは違い、逆に殺人鬼は笑い始めた。吐血をして己も苦しい筈なのに笑った。そんな殺人鬼に対してノトレムは怒りを感じない、どこかしら狂気のように思え少し怖く思えた。



「ハハ....アハハハハッ!...そうだ!....そうだろ!?安心してくれ!!....ハァハァ....俺は負けない!俺は最強だ!...だから!!........俺が変える...このふざけた世界を...」



 殺人鬼はニヤッとノトレムに笑いかけた。血で染まりかけた歯を見て、ノトレムはゾッととする。

 笑いかけながら殺人鬼は胸ポケットを震える手でゴソゴソと漁り、カチッと音を奏でると何かを取り出して地面に転がした。


 その落とした物を見てノトレムの瞳孔が開いた。殺人鬼が落としたのは青い鉄の球体の爆弾だった。


 人一人を殺せるようなこの世界流通の小型爆弾、ノトレムは押し上がる臓器を感じ、咄嗟に距離を離す。

 距離を離して荒い呼吸で様子を伺うが、いつまで経っても爆発は起きない。頭が真っ白になっているノトレムに殺人鬼は微笑み、個性魔法(オリジナルマジック)を発動する。


 殺人鬼がズブズブと沼に沈むかのように地面に潜っていき、ノトレムは騙されたことを理解してすぐに捕まえようとする。



 だが、ノトレムが辿り着くよりも早く殺人鬼は地面に潜ってしまった。汗で顔をびしょびしょにしながらノトレムは左拳で地面を殴る。地面に亀裂と破壊音が響くが、殺人鬼の頭すら目撃することは叶わなかった。


 殺人鬼は逃げてしまったのだった。



 ノトレムの失態は他三人は遠巻きに目撃していた為事情は直ぐにわかった。必死に謝るノトレムを宥めながら女性を道の端へ移動させ、四人は帝国軍が来る前に急いでその場を離れるのだった。



 千載一遇のチャンスを棒に振った翌日、ノトレムは三人を呼び出して早朝から土下座して謝った。



「本当に....ごめんね。僕が油断したばっかりに...」

「そんな謝らないでよノットー。あれは誰だって避難するに決まってるし、ウチらもそんな怒ってる訳じゃないよ。」

「そ、そうですよ!昨夜だって被害者は出なかったですし、仕切り直せばいいじゃないですか。」

「ぅぅ....そう言って貰えると助かるよ...ごめんね本当に....」



 目をうるうるさせながらゆっくりと顔を上げるノトレム。昨夜の頼もしくカッコイイ姿はまるで幻覚だったのかと思うほど消えている。だが、サチコはそんな優しく消極的なノトレムの方が安心し、頬も緩むのであった。



「まぁ〜?僕も怒ってたり責めるつもりはないよ?でもな〜、まさか復国軍として活動してきたのに偽爆弾にビビるとは思わなかったな〜?」



 分かりやすく煽るように言い放つエンスの台詞はノトレムの心を傷付ける。上げた頭を床に再びつけ、酷く落ち込んでいた。その勢いは二度と頭が上がらないのではと思う程だった。



「の、ノットー!大丈夫!大丈夫だからね!?

 ....エンス!!あんた何言ってくれてんの!!?」



 大きな身体をゆさゆさ揺さぶりながらリーヤは宥め、エンスを睨みつける。だがメンタル最強のこの男はヘラヘラしているだけだった。


「アハハ、冗談だって冗談。ほらノトレム、落ち込んでる暇ないよ〜?失敗したのは事実なんだし、ノトレムが先陣切って情報屋ラドに聞きに行こっか。」

「ラド君のとこに?」

「そ!昨夜の動きで帝国軍が何か変わったのかをね〜。最悪、僕らの姿を確認されたかもしれない。取り敢えず情報確認しないと次のステップにもいけないからね〜。」



 手招きしながらエンスはさっさと部屋を出ていってしまう。リーヤとサチコは協力して未だに謝り続けるノトレムを宥めながら立たせ、エンスの後を追って宿を出る。


 昨夜の騒動を何も知らない上級国民が溢れる通りを四人は進む。なるべく身体が触れないよう、なるべく因縁をつけられないよう端で細々とラドの元へと足を進める。


 エンスの言葉を真に受けてノトレムは先頭を歩いているが、後方からでも見てわかるノトレムの落ち込み具合は罰則兼さらし者のように見えてしまう。


 流石にエンスもそのつもりで言った訳では無いので珍しく苦笑い。出した言葉を引っ込められない彼はリーヤにチクチクと嫌味を言われ続けていた。



 ――今話し相手が居ないのは私だから....私がノトレムさんをフォローしないといけないよね。昨夜なんて私なんにもしてないし、これからも足を引っ張っちゃうことになるだろうから、こういう時こそ私が頑張らなくちゃ!



 サチコは意を決し、少し歩くスピードを早めてノトレムの隣に付く。すぐ隣に居ても彼はサチコに気が付かず、目を細めて顔から黒いオーラが出てしまいそうな感じだった。



「...あ、あの、ノトレムさん?」



 自分発信での発言+落ち込んでる人物を宥めるという二つの課題に緊張しながらも何とか話しかける。

 ノトレムはゆっくりとサチコの方を見ると、深いため息を吐いてしまう。



「はぁ〜....ごめんねサチコちゃん。僕が情けないからサチコちゃんの手を煩わせるようなことになっちゃって...」

「あ、いいえ!そんなことは....」

「そんな事ないよ...だって僕が早く立ち直ればいいって話だし、そもそも僕がしっかりしてれば捕まえられてたのにあんな凡ミス....はぁ〜...」



 ――ノトレムさん滅茶苦茶落ち込んでるな〜。普段優しいから自分の不甲斐なさと迷惑をかけちゃった事のダブルパンチが相当きいてる。私もノトレムさんみたいな立ち位置だったら、同じ感じだろうし気持ちはわからなく無いな〜。



 気持ちがわかるからこそ、フォローしなくてはならないとサチコの中で使命感に溢れ、何とか言葉を探していた。



「....で、でも!そんな落ち込まなくていいと思います!ノトレムさんが昨夜一番頑張ってたのは皆さん分かってますし...それに、人はどうしてもミスしちゃいますし、切り替えていきましょ!!」

「そうだね....そうなのは分かってるんだけど、どうも...気になって....はぁ〜...」

「大丈夫ですよ!次に挽回すれば良いだけですよ!ノトレムさんカッコよくて強いからきっと大丈夫です!」

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