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女の敵

 そんなリーヤの顔と対応に当てられ、最初は感じていた戸惑いも徐々に薄れていき、嬉しさが津波のように押し寄せてきた。



 ――こんなに言い寄ってくれるなんて初めて。日本にいた時は寧ろ離れていっていたし、言い寄ってきた時は嫌がらせ目的だった。

 だからどんな距離感でいいのか分からないけど、名前はどう呼べばいいんだろ? さん付けだとあれだから....リーヤちゃん? 距離詰めすぎかな? でもそれ以外になんて呼べば....

 初めての友達か〜...凄く....嬉しいな〜。



 自分にとっても欲しくて堪らなかった友人という存在、まだ時間としては少すぎる仲だが、それでもサチコは期待と嬉しさが込み上げてくる。

 その想いが表へ自然と出てきて、サチコはニヤニヤしながら少し小さく変な笑い声を出してしまう。


 リーヤは少しだけ思ってしまう。



 ――普通の子かと思ったら....内面アブノーマルっぽいな〜。喜んでくれてるから悪い気しないけど、変な地雷があるかも....




「...じゃあこれからは困ったことがあったらなんでも言ってきて!ウチができることならなんでもするし、勿論サッチーにもお願いしたいことがあったら遠慮なく言うからよろしくね!」

「あ....う、うん。私にできることだったら...」

「ところでサッチーは何か聞きたいこととかある?ウチの事でもいいし、別のことでもいい。エンスが戻ってくるまでお話しよ?」



 最初は戸惑っていたリーヤの眩しさは自分でも驚くほど早く慣れていき、同時に心をポカポカと温める。彼女の明るさに元気をもらっている気がしてサチコは幸せに満ち、表情も緩くなっていく。



「う、うん!えっと....そうだ、リーヤ...ちゃんって呼んでいい?」

「全然いいよ!!サッチーなら寧ろ呼んで欲しかったくらいだから!」

「そうなんだ....へへ...えっと、それでね?リーヤちゃんはその、エンスさんとあまり上手くいってないのかな?」




 この部屋に訪れた時にしていたリーヤの態度、サチコは単純にその事が気になっていた為質問するが、エンスの名前が出てきたことで顰めっ面になっていくリーヤの顔を見て汗が滝のように流れる。



 ――わ、私のバカ!!まだそんな時間が経ってないくせにリーヤちゃんに暗い話を出してどうすんの!!やばい....ようやく友達が出来ると思ったのに...寿命三分も経ってないよ....



「あ、あの!ごめん!言いたくなかったら全然言わなくていいし、私もそんなに聞きたいってわけじゃないから!適当に話振っちゃって....ごめんなさい!!」



 サチコはこれでもかと頭を勢いよく振ってリーヤに謝る。折角できると思われた友達という関係性を失いたくなかったサチコは精一杯謝るが、当の本人は何故サチコがそんなに慌てているのか不思議がっていた。



「?何でサッチーが謝るの?質問あるかって聞いたのはウチなんだから、例えウチが不機嫌になってもサッチーじゃなくて話振ったウチが悪いでしょ。

 そもそもウチは嫌な気持ちになってないし、仮にそうなってたら全部エンスが悪いんだから。」



 リーヤは大きくため息を吐きながらそう伝えると、サチコは心の底から安堵した。



「えっと...何かあったの?」

「何があったって....あぁ〜、問題点が多すぎて頭が壊れそうだよ〜。サッチーもエンスには気を付けてよ?サッチーが段々変な道を歩いていく姿なんてウチ見たくないからさ。」

「変な...道?」

「そうそう、めっちゃ変な道。エンスの背中追っかけてその道進んだら絶対やばいよ。だから、とにかくエンスには要注意!仕事以外で話は厳禁だから!エンスはウチら"女の敵"って事をよく覚えておいて!!」




 リーヤは人差し指を上に指しながら真剣な表情でサチコに言い寄った。常にニコニコしていて人当たりが良い彼女がここまで警告している事にサチコは唾を飲み込んだ。



 ――仲間内にもこんな事を言われるなんて....エンスさん、一体どんな人なんだろ...最初はカッコよくて色っぽいってイメージだったけど、中身はそんなにやばいんだ....



「...エンスさんって一体なんなの?そんなにヤバいの?」

「ヤバいもヤバいから。エンスがウチらにやってくる事と言ったら」




 サチコが気になっていた重要事項をリーヤが口にする直前、部屋にノック音が聞こえた。二人は同じタイミングでドアの方を見ていると、少ししてドアが開いた。

 ドアの向こうにはノトレム、そして話題の人物であるエンスもいた。


 科学者のような足元まで伸びている白いコートに身を包み、ダボダボの袖から細い手を出してサチコに向けてニコニコしながら手を振ってきた。



「やぁやぁ、サチコちゃん。こんにちは〜。」

「え、エンス!!あんたもう帰ってきたの!?」

「"もう"って半日も出てたじゃないか〜。一時間って訳じゃないし驚くことじゃないでしょ〜?それにしてもビックリだよ。帰ってきたらノトレムが居るだけじゃなく、ずーっと会いたかったサチコちゃんが居るんだもん。久しぶりだね〜?サチコちゃん。」



 そう言って再びエンスはサチコに向かって手を振ると、リーヤはバッと立ち上がってサチコの背後へ回り、自分の胸にサチコの後頭部をつけてを守るように抱きしめた。



「サッチーにあんまり話しかけないでくれる?あんたの変な癖がこびり付いたら嫌なの!」

「変な癖?リーヤちゃん、ま〜たあることない事言ったの?」

「あることない事って....そもそもそんな話題が出ないようにしなよ!!サッチーは純粋なの!!変な色に染まらせたりなんかさせないんだから!!」

「あらら、これは困ったな〜。ね?サチコちゃん。」




 リーヤの拒否反応を諸共せず、懲りずにエンスが話しかけるとリーヤの抱きしめる力と睨む目が鋭くなる。エンスの危険性が未だ分からないサチコは反応に困るが、自分の取り合いをされてるみたいで変に嬉しくなったのだった。



「...まぁ取り敢えず、僕の部屋に集合しようか。殺人鬼についての情報共有と作戦会議だよ〜。」

「....ウチが行く。サッチーはここで」

「ダメダメ。サチコちゃんは僕らの仲間なんだし、これから行動を共にするんだよ?サチコちゃんだけ仲間外れっていうのは良くないんじゃないかな〜?」



 煽るようにエンスが言い放つとリーヤは苦しそうな表情を浮かべる。エンスは軽く笑うと、背を向けて歩き出した。

 少し重い雰囲気が漂うが、ノトレムは別に何も気にしている様子は無かった。彼の性格上、悪い雰囲気をどうにかしようと動く筈だが動かない、そんな違和感にサチコは少し疑問を持っていた。



「まぁエンス君の言ってることは一理あるよ。リーヤちゃんもあんまり敬遠しすぎると、エンス君の印象悪くなっちゃうよ?」

「いいでしょアイツに限っては!一回あんなやつ好感度ダダ下がりした方がいいに決まってるよ!!」

「ま、まぁまぁ。そんな事言ってても時間だけ過ぎるだけだからさ。取り敢えず行こ?エンス君のペースがダメだと思ったらサチコちゃんは途中で抜ければいいからさ。」



 そんなノトレムの言葉に負けたリーヤは悔しそうにしながらサチコを解放する。もう少し守ってもらっても良かったと感じていたサチコは無神経にも少しガッカリする。


 その後はリーヤがサチコの手をギュッと握りながらノトレム含む三人でエンスが泊まっていた部屋へ移動する。

 エンスの泊まっていた部屋はリーヤといた部屋とは少し違って少しだけ広く、部屋の中心の机も丸型で六人ほど座れる大きさだった。


 部屋に入ってすぐ目が合う形で座っていたエンスは、三人が来るのを見ると笑顔で出迎える。だが、その笑顔にリーヤだけがそっぽを向き、半ば強引にサチコを移動させた。

 エンスの右隣にノトレム、エンスの向かいにリーヤでその右隣にサチコ。エンスとノトレム隣には空席が出来ている形で各々席に着いた。



「じゃあ早速作戦会議といこうか〜。」

「ちょっと待って!!エンス、ガチめにマジメでやってよ!?おふざけ無しだからね!?」

「信用ないな〜。念押ししなくても仕事中はしっかりやるよ〜。僕ら何年の付き合いだと思ってるの〜?」

「キッモ!そんな事言わないでよ気持ち悪い!」




 ――ビックリするくらい嫌ってるんだな〜。リーヤちゃん、過去にエンスさんに何をされたんだろ...


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