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初めての友達

――――――――――――――――――――――――

 

 復国軍専属の情報屋・ラドと別れてから少し時間が過ぎ、サチコとノトレムは下級国民専用の宿へたどり着いた。

 他の建物とはうってかわりボロボロの二階建ての木材建築。所々穴が空いているのが目にとれ、真上に昇っていた太陽は沈み、建物に挟まれたところにあるため少し薄暗く、余計にボロく見える。


 ただ、横に長く伸びており結構な人数を入れることが出来るのは見てわかる。多く入れれるがボロい、まるで収容所のようにサチコは感じるのだった。


 ここはその名の通り下級国民しかおらず、受け付けも清掃係、オーナーでさえ下級国民。上級国民達はその宿を忌み嫌い、誰しもがそこの近くを通るのを嫌がる。

 だが、上級国民からの重苦しい空気から開放されるという点では下級国民にとっては天国のような所。


 そんな説明を向かっている最中に聞かされ、サチコは心底ホッとした。



 ――寝泊まりするところまであんな嫌がらせがあったりしたらストレスやばそうだし、本当に良かった〜。あんな偉そうなこと言ったくせして、ここに残るの後悔して泣き言を言いそうだもん。



 帝都に来た時より軽い足取りで着いた宿。ノトレムを先頭に宿へ入り、小汚い太った男性に事情説明をすると部屋へ案内してくれた。

 サチコは紹介された時に軽く挨拶された程度でしか二人を知らない為、不安と好奇心で胸が激しく鼓動を打っているのを感じる。


 男性を先頭にボロボロの廊下を突き進み、突き当たり手前のドアの前で立ち止まりノックをする。薄らと声が聞こえると、男性はドアを半開きにしてその場を去った。

 代わりにノトレムがドアノブを持って開くと、部屋にはリーヤがいた。


 部屋の奥には窓が部屋を照らしており、両奥にはベッドが設置してある。真ん中に長方形の木の机に椅子ふたつ、タンスも両手前に置かれている。

 最低限の家具類があり、それぞれ左右対称となって設置してある。

 そして何より注目するのはその部屋の大きさだ。十人程入れるようなスペースがあり、家具類が浮く程の大きさだ。

 その部屋の右奥のベッドにリーヤは寝そべり、天井に掲げている右手の爪を弄っていた。


 最初に顔を見た時同様の白い服装の彼女はノトレムとサチコを見ると目を丸くし、獲物を見つけた動物のようにすぐに起き上がった。



「へ?ノットーとサッチー?なんでこんなとこいるわけ?」

「丁度帝都で任務があってさ、ラド君に顔を見せに行ったら殺人鬼の話を聞いたんだ。僕らも何か出来ることは無いかなって思って来たんだけど、エンス君は?」

「アイツは買い物係で外行ってる。それに部屋は三つ挟んだところ、アイツと一緒とかマジありえないから。」



 リーヤは顔を顰めてそんなことを言うが、ノトレムは軽く笑っていた。



「それもそうだね。じゃあ折角だから僕はエンス君の部屋に行くよ。サチコちゃんはこの部屋でもいいよね?女の子同士だし。」

「それはモチ!!全然大丈夫だし寧ろ大歓迎って感じ!!」



 リーヤは満面の笑みでベッドから飛び上がった。小さく跳ねたりもしており、変に跳ね返される必要もなさそうでサチコは胸をなでおろした。



 ――紹介の時もそうだったけど、結構明るい子だな〜。意識の違いとかで変に嫌われそうにないし安心するけど...この明るさは陰の私には眩しすぎるかも....



「それじゃあ女の子同士仲良くやってね。僕はエンス君の帰りを待つから、帰ってきたら皆で殺人鬼について情報共有しようね。それじゃあサチコちゃん、またね。」



 ノトレムはそう言い残すとエンスの部屋へ向かっていった。リーヤは笑顔でノトレムに手を振って見送ると、すぐさまサチコへ近付いて両手を掴んできた。



「じゃあサッチー!!入って入って!!左側のベッドとか自由に使ってね!」

「あ、はい....お邪魔します。」



 ――...案の定眩しすぎる。



 リーヤの明るさに戸惑いながらサチコは自分の荷物をタンス手前に置き、リーヤに手を引かれながらも部屋の中心の机へ移動した。

 席に座ると目の前には両肘を机に置き、両頬を抑えてニコニコとリーヤが見詰めてくる。こんな明るく迫られる経験がないサチコは何も無いのに小さくペコペコして、何かしらに謝っていた。



「いや〜、まさかサッチーが来てるなんて知らなかったよ。いつ帝都に来てたの?」

「あ、えっと....今日の昼くらいですかね...」



 そんな消極的な反応にリーヤは唇をとがらせて首を傾げ、分かりやすいほど不思議がっていた。



「どうしたのサッチー?なんかあったりした?」

「あ、いえ....なんでもないです。」



 ――"貴女のテンションについていけません"なんて言えないよね...



「そっか〜....それよりさ、敬語なんてしなくていいよ。同じ仲間なんだし、ウチら絶対に歳近いよ。ウチは十六、サッチーは?」



 歳は近いと感じてはいたが、自分より年下ということを知ったサチコは、歳下にリードされて困惑していた自分が少しだけ情けなく感じてしまった。



「わ、私は....一応十七歳です....」

「やっぱ近いじゃん!なら尚更敬語なんて辞めようよ〜。折角、歳の近い女の子が入ってきたのに敬語同士なんて滅茶苦茶嫌じゃない!?サッチーが入ってきた時は"ようやく女の子の友達できる"ってウチ、凄く嬉しかったんだよ!?」



 リーヤは身を乗り出し、サチコを説得するかのように話していた。あまりグイグイと話しかけられる事の無かったサチコは、自分に興味を示してくれる嬉しさと迫られる戸惑いが混ざっていた。



「そ、そうなんですね....でも、私以外に女の人って」

「そりゃあいるけどさ〜。スーさんは暇さえあったらお酒を飲んでるオッサンみたいだし〜、ロアっちに関してはマジで何考えてるか分からないから実質女はウチひとりみたいな所あるよ。」



 ――あ〜言われてみれば...それにしてもこの子、私とノトレムさんにもあだ名っぽい呼び方をするな〜。ステアさんとか一瞬分からなかった。



「だ〜か〜ら〜。サッチーとはマジで仲良くしたいって訳!復国軍の仲間ってのもあるけど、それ関係なしに対等な友達になりたいの!!サッチーは迷惑だったりする?」



 少し不安そうにリーヤはサチコを見つめながら首を少しだけ傾ける。そんな彼女を見てサチコは見てわかるくらいアタフタしていた。確かに言い寄られるのは慣れていないが、リーヤと仲良くしていきたいというのはサチコも同じだったからだった。



「そ、そんなことないです!私だってリーヤさんと仲良くしたいし....」



 何故か申し訳なさそうに自分の心を打ち明けると、リーヤは一気に笑顔になり、サチコの両手をギュッと握りしめて更に身を乗り出した。



「マジ!?やった!サッチーもそう思ってくれて嬉しいよ!!じゃあ、これからは絶対に敬語禁止にしよ。いい?」

「あ、はい。わかりま」



 リーヤは可愛らしくムッと頬を少し膨らませてサチコを見つめてきていた。その目のおかげで流れるように敬語が出そうだったサチコの口が止まり、勇気を出して再び口を動かした。



「えっと...じゃあ....わ、わかったよ....?」



 不安そうに話したサチコと裏腹に、リーヤはニコッと笑って嬉しそうにしており、握っているサチコの両手をユラユラと小さく左右に振っていた。


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