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アドバイス

 その目線にタイガは気が付いて目を細めてサチコを見る。目線が重なった時、サチコは冷や汗が噴き出し、身体がビクッと跳ねる。

 が、タイガは自分が睨まれたことに怒りを感じている様子はなかった。時が止まったかのように目を見開き、じーっとサチコを見ていた。


 少ししてタイガはサチコへ近付き、目線を固定させたまま、観察するかのように顔を近づけた。



「お前........変わった格好しているな。」




 呟くように言われた直後、慌てて店長が剣を大事そうに抱えてきた。全身汗だくで息切れをし、今にでも倒れそうな感じだった。



「お、遅くなって申し訳ありませんでした....あ!す、すいません!そいつらウチに納品遅れの品を持ってきた下級国民でして...お前ら!さっさと帰れ!!タイガ様の目が汚れるだろ!?帰った帰った!!!」

「.......だとさ。早くその蜥蜴人を連れてさっさと帰れ。」



 タイガはゆっくりと離れ、ダラダラしながらカウンターへと戻った。店長の何気無い言葉で突っかかった筈の男が何故、下級国民であるサチコに睨まれて何もしなかったことにサチコは混乱していた。


 だが、残っていたら今度こそ酷いことをされると思い、少しふらついているノトレムを支えながら店を出ようとした。

 すると、タイガが背を向けながら話しかけてくる。




「おい、女。」



 タイガは呼び止めると、立ち止まったサチコに顔だけ向ける。睨むわけでも馬鹿にするわけでもない、まるで同級生に話しかけるかのような差別ない目でサチコを見る。



「アドバイスしてやる、その変な格好をすぐ止めるんだな。ここでそんな格好してるやつ見た事ねぇ、下級国民のくせして目立ってるやつはいい標的だ。」



 何か文句やら怒鳴られると思っていたサチコはポカーンとしていると、タイガは目を細めて顎を動かす。"出ていけ"という指示とともに溢れる魔力にサチコはビビり、ぺこりと頭を下げて急いで店を出た。


 タイガの違和感は店長も感じていた。二人が居なくなった頃、店長は顔色を伺うように質問した。



「た、タイガ様?何故あのような下級国民に....その...顔見知りなのですか?」

「いや、知らねぇなあんな女。....妙な服と雰囲気を感じただけだ。お前もあの女の顔忘れんなよ?俺の予想じゃあ....雰囲気からして強い力を秘めてる。良くも悪くも名を馳せるとみた。」




 疑問をぬぐえない店長に背を向けながら、二人が出ていった出口を見つめてタイガは鼻で笑ったのだった。




 店から出てサチコは近くの木の陰にある長椅子にノトレムを座らせた。サチコの魔法と時間が経った為、程なくしてノトレムは完全に回復した。



「ありがとうねサチコちゃん、助かったよ。」

「そんな、私なんて助けられてばっかりですし...このくらいは....」

「いや、サチコちゃんは他の人には滅多に出来ないことをしてくれた。僕、本当に嬉しかったよ。ありがとう。」



 回復魔法で傷を癒したことに対してと思っていたサチコは、"助かった"から"嬉しかった"に変わった意味が分からずに首を傾げる。


 今まで庇ってくれたことなど殆どない。身体の大きさ的にノトレムが逆に色んな人を庇ってきていた。庇ってくれる、自分よりも小さい女の子が起こしたその行為の有難みをノトレムは初めて味わったのだった。




「そ、それにしてもさっきの兵士は何なんですかね?六将ってことは相当凄い人ですよね?」

「そうだね。イザゼル帝国に貴族の概念はないけど、兵士の位の大きさで結構裕福に暮らせる。上から帝王・二神衛・四天・六将・十頭って振り分けられてる。」

「その位にいる人って数字に比例してるんですよね?六将ってことは....帝王含めて八~十三番目に強いってことですよね。」

「そういうことになるね。彼は"狂戦士"って二つ名だったはず。通り名に沿って荒々しい性格だと思ってたんだけど...サチコちゃんは何処かで会ったことあるの?」



 そう言われてサチコは今一度思い返してみる。が、タイガを見かけた覚えもなく、頭を抱えるだけかと思いきや一つだけ心当たりがあった。



「あ、もしかして....私が裏奴隷のオークションに出された時、客として出席してたかもしれないです。口元しか見えなかったしあんまり覚えてませんけど、それくらいしか思いつく所が...」

「そうか....それじゃあ少し彼には注意した方がいいね。オークションの時に感情型の事をバラされたんでしょ?もしかしたら、また誘拐しようと企むかも....それもこれもあくまで推測でしかないけど、僕が近くにいない時は十分注意してね。」



 そう言われたサチコは裏奴隷の事を思い返し、唾を飲み込んで頷いた。

 あの時は鬣犬とステアが来たから逃げ出せたが、毎回上手くいくものでもないというのはサチコも重々承知、絶対にあんな目にはなりたくないとノトレムに訴えるかのような目をしていた。



「分かりました...取り敢えず、今回はこれで任務完了ってことですよね?」

「うん、だけどちょっと寄りたいところがあるんだ。少しだけいい?」




 ノトレムは少し申し訳なさそうにサチコに尋ねる。

 この帝都にはこれ以上居たくなかったサチコだったが、"少し"ということで渋々頭を縦に振った。



 二人はなるべく人混みを避けつつ移動し、一時間後にある一軒家の前で立ち止まる。

 他の家と何ら変わらない赤い屋根、灰色の石で積み上げられた家。


 ノトレムはドアを不規則にノックすると、ドアのロックが解除される音がした。

 だが、それでもノトレムは動かない。ドアが開いているにもかかわらずじーっと何かを待ち続けていた。


 しばらくするともう一度ドアのロックが開かれる音が聞こえ、ノトレムはようやくドアを開いたのだった。



「ノトレムさん。これってもしかして、合言葉代わりみたいな感じですか?」

「うん。今から会う人はこんな感じで家に入らないと色々教えてくれないからね。」




 ――? 色々と教えてくれる?




 サチコは疑問を抱えたまま、ノトレムに続いて家の中に入る。家の中は特別変わった雰囲気はなく、木のテーブルに四つの椅子、キッチンが傍にあり、部屋の隅には暖炉などが施されているごく普通のリビングだった。


 そこには椅子に一人、緑色の目で顔は丸く可愛らしい、一見女性とも見えるローブを被った男性がいた。



「あ〜、ノトレムじゃないか。珍しいな〜?」

「たまたま依頼があってね。どうせなら寄ろうと思ってたんだ。あ、紹介するね?この人はラド君、復国軍専門の情報屋だよ。

 ラド君、この子がサチコちゃん。」




 サチコは頭の整理がつかないまま、咄嗟にぺこりと頭を下げた。ラドは少し前のめりになり、目を細めてサチコを見つめる。



「へぇ〜君か〜、情報は入ってきてるよ。裏奴隷責任者を倒したっていう感情型の女の子は。見た感じそんな風には見えないな〜。」

「はぁ....どうもです。」



 サチコはラドの目線に耐えられず、少し照れながらペコペコ頭を下げていた。



「...フッ、マジで見えねぇ〜。それよりノトレム、何用だい?通信の水晶でも連絡取れたろうに。たまたま帝都へ来たとはいえ、直接だとひと手間かかるだろ?」

「たまには面と面を合わせた方がいいと思ってね、何もなさそうで良かったよ。

 じゃあ聞かせてくれない?今の戦況と黒爪(ブラッククロー)の裏奴隷売買の状況、この二つを知りたい。一応、戦況とかはバルガードさんから軽く聞かされてるんだけどね。」

「まぁ答えてもいいけど、それより座ったら?立ち話もあれだし、お茶でも淹れるよ。」



 ラドは額を齧りながら立ち上がってキッチンへ移動する。お茶を淹れてくれている間に二人は並んで椅子に座って、ラドのお茶を待った。


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