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壱と弐

 いつ飛び掛ってもおかしくない状況の中、黒爪(ブラッククロー)の集団でも目立つ背の小さい二人が一歩前へ出てローブを取る。

 二人とも鼠色のおかっぱ髪にソックリな可愛らしい童顔。違いは口元に付けているピアスの数くらいで、一つだけ付けている方が話しかけてくる。




「どうも初めまして鬣犬の皆さん。私この場を任された者です。名前はどうでもいいんですけど、ピアスの数に因んで壱と覚えといてください。因みに隣にいる弍は双子の妹です。」



 そう紹介され、弐は行儀よくお辞儀をする。そんな様を見てメメは鼻で笑って一歩前へと出た。



「で?私らになんか言いたいんならさっさといってや。こっちは早くあんたら殺りたくてしょうがないんよ。」



「どうして我々をそんなに殺したがるんですか?過去に我々に被害を受けました?」



「私は無いけど、メンバーん中にはそういう奴らの方が多いな。そいつらは個人的な恨みやろうけど、私は違う。

 人情もクソもない、自分の私利私欲の為どんな残酷な事にも手を出す外道、そんな外道が泣け叫んで苦しむ様が何よりオモロいんよ。死ぬ程自分らが行った事を後悔させたるわ。」



「....外道で何が悪いのですか?」



 そんなセリフを壱はニヤニヤとしながら言い放つ。メメのにやけ顔が消え、ギロッと壱を睨みつけるが壱はそんな事気にせず話し続ける。



「私達下級国民は明日を生きるのにも精一杯。真面目に生きて得られるのはその日のご飯のみ、真面目で生き残れるのは限られている。より高確率で生き残れるのにはどうすればいいか、それはリスクを背負うしかない。

 いくら人から狙われようが、恨まれようが、追われようが、生き残れればいいんです。そう考えるのは異常ですかね?」



 壱が話し始めると、今度は弐も口を開いたのだった。



「異常なんかじゃないよね?異常だったら黒爪(ブラッククロー)に人は来ないし、ここにも集まらない。もし、私らにそんなこと辞めさせたいなら、国を正してみなよ。私らここで皆殺しにしても対して世界は変わらない、結局あなた達がしてるのは無駄な行為。

 寧ろ、そんな真っ当な理由を盾にしてただ殺したいんじゃない?私らと同じ虫の穴でしょどうせ。」



「「私らが寧ろ正しい。国、世界が無慈悲ならば、私達の意思や行動こそ正常。あなた達が私達を外道というのなら、それはそもそもあなた達が道を外しているからそう見えている。

 人に意見する時は自分の立ち位置を見直してから発言する事ね。」」



 その双子の発言に場は静寂に包まれた。唾を飲み込む音でさえ目立ってもおかしくない空間で、全員がメメの次の行動に注目していた。

 何を言い出すのか、どんな行動をとるのか注目され、メメが暫くして取った行動は地面を強く踏み始めた。


 何度か踏みつけ、ジッと自分の足元を見つめると鼻で笑った。



「...助言通りにちょっと見てみたんやけど、お前らの言う通り少し道ズレてる気がするわ。まぁこれまで色んなやつ殺したりしたかんな〜、まぁ必然ちゃ必然。やけど、アンタらほど道外しとらんのは確かやな。」



「人が人を差別し利用する無慈悲な世界、それに対応している我々がおかしいと?対応せず死ねと?」




「あぁ、私だったら死ぬね。

 そもそも道の種類が違うんよ。私らの言ってるのは世界どうこうより人としての道や。人としてあるべき姿、心の形のこと言ってん。せやから、あんたらの人の善意や好意、幸せを簡単に踏みにじり壊す存在が胸糞悪い。

 自分らのこと正常言いたさげやけど、あんたらは意思貫く事をただ諦めて世界の波に流れる糞や。」



 そんなメメの言葉が気に触ったのか、双子は同時にローブの陰から太長い針を取り出して構え、それに釣られるように全員も臨戦態勢へ移った。



「....まぁこれ以上時間を浪費する必要はありませんね。全員手足切り取ってお得意様へ無料配布、身動き取れない性欲処理具にしてあげますよ。」



「そうかそうか...安心してな、私はそんな事しない。私がやる事はただ一つ、あんたらが今までやってきたことを後悔するくらい苦しませて殺すだけや。」



 両者は挨拶のような挑発をし合うと、同じタイミングで地面を蹴りあげ相手との距離を詰める。それに釣られてそれぞれの陣営の者達も一斉に走る。


 壱と弐の針、メメが持っていた斧がぶつかり金属音が鳴り響く。小さな戦争の幕開けの音だった。



 場は完全な混戦状態となり、そこらじゅうで金属音や叫び声が飛び交っていた。血も巻き散らかされ、倒れ込む者も次第に出てくる。

 だが、倒れていく者達は決まって黒ローブ達だけだった。圧倒的な人数差がある中で、鬣犬メンバーが誰も倒れていないのは、個々の実力が違うということだけでは無かった。


 中には実力不足で怪我をし、危なげなメンバーがいる。しかし、そこは他のメンバーがカバーへ入り、負担を共有して乗り越えていっていた。メンバーはお互いが自分の身以上に大切に思い合い、打ち合わせなど必要もなく誰ともでも自然に連携を取れていた。

 それに比べ、黒爪(ブラッククロー)はボロボロ。信頼し合う鬣犬とは違い、彼らは疑い合う、潰し合うような仲。したがって即興の連携など取れるはずもなく、ただ数の力で何とか善戦しているだけだった。


 その戦力の差は正しく、自分らがいる道の違いなのかもしれない。



 鬣犬メンバーがまだ誰一人として脱落しておらず、寧ろ押しつつある状況に歓喜するメメの元へ三人の黒ローブが襲いかかる。

 しかしメメは紙一重でそれぞれの攻撃を躱し、すれ違いざまに首を切った。メメは自分の後ろで血を吹き出しながらも倒れるのを音で確認し、斧にこびりつく血を払い落とす。



「....集団戦は頭を狙うのは間違ってないけど、それは実力が近かった場合だけや。実力がかけ離れてんなら周り潰して数でやるしかない。相手の実力よくわからん癖に飛び込むのはアホの所業と思わん?なぁ?」



 そう声をかける先には壱と弐、そしてそんな二人の餌食になった鬣犬メンバー一人が倒れていた。初めて発生した犠牲者だが、血を口から吹き出しながら何とか息をしていた。



「........さて、ウチのもんに手を出した代償は高くつくで?地獄見したる。」



 メメは魔力と殺意を漏らしながら、大股で二人に近づいて行く。それに対して壱と弐は持っている針を持ち直しながら、それぞれ左右へと円を描くように離れ、メメが壱と弐に挟まれる形になった。



「「さぁ、どっちから攻撃する?」」



「....さぁ?どっちからやろうな〜?」



 地面を見つめながら気の抜けた楽な表情でそんな事を言うメメ、少し間を開けると突然地面を蹴り上げて壱の方へと急接近する。

 突然の特攻にも壱は動揺せず、メメの顔へ針を投げるがメメは斧で弾いた。


 するとそれと同時に膝裏に激痛が走り、メメは失速。もうすぐで届きそうな所で壱には距離を離され再び針を投げてくる。

 それを対処していると先程のように弐が背後から針を投げてきて、背中に何本も刺さってしまう。



「ぐっ!....あ、あんたら〜」




「「接近戦なんて馬鹿馬鹿しい。自分の有利で楽、危険性の少ない戦闘方法が最も好ましい。」」


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