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シスター・シアラ

――――――――――――――――――――――――――


 気が付くと幸子はベッドの上で寝かされていた。

 木造の天井、窓越しから暖かく明るい日差しが部屋と幸子の顔を照らしていた。これまた木造の机に小さいタンスも置かれているだけで少し殺風景な部屋だった。


 純白でフワフワとした敷布団を掛けられ、日干しのいい匂いが漂う。頭もまだぼんやりとしていて、あまりの心地良さに二度寝をしてしまいそうになる。ふと目線を反対側へ向けると、そこには森で出会ったシスターが座っており、静かに鼻息をたてていた。


 透明感のある肌でパーツがそれぞれ小さく、口もまるで少女のように小さくて可愛らしい。身長は低いが服越しに分かる胸の膨らみに腰の締め具合は、大人の女性ということを主張しているようにも思えた。



 上半身を起こしてみると、自分が真っ白の服に着替えられているのに気が付く。

 幸子はシスターに声をかけていいか迷っていると、シスターの目がゆっくりと開き、小さい欠伸をした。



 「ふぁ....ん...あっ!えと、お目覚めですね!あぁ、すいませんなんか...お恥ずかしいところを....」



 シスターは顔を真っ赤にしながらモジモジとしていた。まるで初心な少女のような反応に幸子はポカーンとしている。



 「えっと....とにかく!目覚めて良かったです。貴女、精神的にも身体的にも随分疲弊していたんですね。倒れてしまってから三日程眠っていましたよ?」

 「そんなに!?....ごめんなさい...ご迷惑かけちゃって....」

 「大丈夫ですよ。私、こんな也をしているので分かると思いますが、この村のシスターをやっています。人を救い、導くのが私の仕事なので気にする必要はありません」



 そんな話をしていると部屋のドアが開く。そこからは白いシャツを着ているガッチリとした筋肉質な青い短髪の男性が現れた。髭を生やしていなく、肌は女性のように綺麗なのだが、女性には無いやわらかさを感じさせない顔の筋肉に、目は細く鋭いので獣を連想させてしまう。

 男性は何を言うでもなく、ジーッと幸子を見ていた。




 「あ、すいません。この子、あんまり口数が多くはないんです。

 まだ私達の紹介してなかったですね。

 私はシアラ・ナーチャリー。この無口で無愛想な人はラーズ・ウェルバーっていうの」



 ラーズはシアラの紹介が引っかかったのか、ため息を吐き漏らした。



 「...どうも」

 「ラー君!目が覚めたらどうするって約束しましたっけ?」

 「...........いきなり殴って済まなかった」



 ラーズが渋々頭を下げると、シアラはニコッと微笑みながら頷いていた。年代は見た感じ同じくらいなのに母と子のやり取りのようで幸子は少し微笑ましかった。

 だが、幸子は男性に対してまだ慣れていない。戸惑いや緊張ではなく、二度に渡る男性による性的暴行の体験が未だ恐怖を感じてしまう。


 寒さとは違う恐怖から来る幸子の震えにラーズは勿論、シアラも心配そうに見ていた。



 「....ラー君、何か温かい物でも作ってきてくれない?」

 「......分かった」



 ラーズは何か幸子に言いたげにしていたが、状況を察して部屋を出ていった。シアラが幸子の右手を優しく包むように握ってくれたおかげで少し震えが治まった。



 「....大丈夫ですか?彼も悪気は無かったんですけど、やっぱり傷付きましたよね」

 「違うんです...私、男の人に....その...」



 その言葉に大凡のことを理解したシアラは無意識にギュッと握る手の力を強めた。目線を少し落として、顔色を暗くしていた。



 「....ごめんなさい、嫌な事を思い出させてしまって。辛かったでしょうね...」

 「....すいません、ありがとうございます。あの、私は大丈夫ですから...」

 「そんなことはありません!同じ女性として、その辛さは経験していなくても分かります。....お名前聞いてませんでしたよね。なんて言うんですか?」



 シアラは優しく話し掛けてくれた。心安らぐ声と対応に幸子は安らぎを覚えた。



 「幸子です。前田幸子...」

 「"マエダ"さんっていうのね。いい名前じゃないですか。マエダさんは」

 「え!?あ、違います!私の名前は幸子の方で....」

 「え?そうなの?それじゃあサチコ・マエダじゃないですか。からかわないでくださいよ」



 シアラはクスクス笑いながら軽くサチコの肩を叩いた。シアラの反応にサチコは頭に疑問しか浮かばなく、反応に困っていた。



 ――あれ?なんで名前が先に...それって外国の人達じゃないの?ん?そう言えば....この人、明らかに日本人じゃない。どちらかとロシア系の人っぽいけど、日本語...

 ん?ん?な、何かここに来てから急展開過ぎて意識してなかったけど、おかしくない!?



 サチコは今更自分の置かれている状況に気が付き、頭を抱えた。シアラは心配そうに顔を覗き込むが、今は頭の整理に精一杯だった。



 ――気が付いたら見たことも無い場所にいて、見たことも無い獣、確か"魔獣"とか言ってたっけ。それに魔法とかなんとか言ってた気が....私が感じた力も魔法?いやいやいや...有り得ない!ファンタジーの世界じゃないんだから。何考えてんの私。

 ...部屋の雰囲気も現代じゃなくてヨーロッパ中世っぽい。もしかして.......ファンタジーの世界に来ちゃった?あの世じゃなくて異世界転移!?



 予想すらしてなかった展開に頭から煙が上がりそうになる。昔から殆ど一人だった為、家では勉強かネットを使うのが日常。アニメや小説などが大好きになるのは自然で、当然異世界系の作品も何作品か見ていた。


 "こんな世界行ってみたいな"という冗談半分の願いが叶ってしまった。嬉しさというより戸惑いが大きすぎたサチコだった。



 ――で、でも...勘違いって可能性が...



 「し、シアラさん!ここって一体どこですか!?」

 「え?あぁ...ここはナルテミ村。イザゼル帝国所属の小さな田舎村ですよ。地区的には...第五区間ですね」



 見たことも聞いたことも無い村と国、サチコの予想が当たりつつあり、頭がパンク状態だった。



 「どうしました?あ、私も聞きたかったのですが、サチコさんは何故あの森に居たのですか?何か用があったんですか?」



 ――正直に言っても良いのかな...アニメとかなら大抵は隠してるけど、隠すのは嘘ついてるみたいで...



 「えっと...気が付いたらあの森に居たんです。不可抗力っていうのか....私も全く分かってなくて...あの!日本って国聞いたことあります?」



 サチコはダメ押しに聞いてみるが、シアラは眉間にシワを寄せるだけで困り果てていたのはすぐに分かった。



 「......そうですか。すいません、困らせちゃって....」

 「いえいえ、こちらこそお力になれなくて...私の仲間達にも一応聞いておきますね。

 あの....もし記憶が曖昧とかでなければ、サチコさんは"新天地"から来たのですか?」



 また新たに出てくる単語にサチコは思わず目を細めた。頭がパンクして思考停止しかけていると察したシアラは少し慌てていた。



 「あ、あのですね?前々からこの世界には別の世界、新天地という場所があるというのが噂でありまして。もしかしたらそれかなと...反応を見る限り、大国であるイザゼル帝国も知らなそうでしたし...」

 「えっと....まぁそんな感じだと思います。あの、この世界の事を教えてくれませんか?この世界で暫く暮らしていくと思いますし、帰りたくないっていうか...」



 サチコはシアラの顔を見れずにそんなお願いをする。帰りたくないというワードに対して説教の一つや二つ来ると覚悟していたが、シアラは何も聞かず丁寧に教えてくれた。


 理解出来ていなさそうな部分も根気強く教えてくれたおかげで、覚えるのが苦手なサチコでも理解が深まっていく。



 この世界ではやはり基本的には魔法で生活と戦闘を賄っている。

 日常生活の助けになる魔力で使用出来る"魔具"だったり、医療関係も魔法が多く関わっているだとか。


 魔法にも大きくわけて二つあり、誰でも努力をすれば習得可能な段階魔法(レベルマジック)、そして世界の殆どの人が持っている各々の特別な魔法個性魔法(オリジナルマジック)

 個性魔法(オリジナルマジック)に関しては強弱激しく、この世界で強者の位置にいる者の殆どがこの個性魔法(オリジナルマジック)が優秀だとか。


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