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捜索

 手枷が無くなった開放感と締め付けられて痛む手首を撫でながら安堵の息を洩らした。



 「ふぅ〜一時はどうなるかと思ったわい...じゃあ約束通り回復してやる。段階二・回復(レベル二・ヒール)。」



 老獣人が両手でかざすとサチコに緑色の粒子が浴びせられた。全身に流れるように動く激痛が次第に癒されていき、サチコの顔色も良くなっていく。



 「あ、ありがとうございます....」



 「ふん、礼を言う必要なんてない。寧ろこっちが頭を下げたいくらいじゃ。だが、見捨てようとしたことは忘れんがな。」



 「あ!そ、それは本当に...ちょっと急いでて....」



 「冗談じゃ冗談。助けたい言ってたのは最初の小娘じゃろ?ワシは老いぼれで非力じゃ、救出には協力出来んじゃろうが、出来ることはする。ワシの分まであの娘を助けてやってくれ。」



 老獣人は微笑みながらそんな言葉をかけ、サチコは緊張感を保たなければならないと分かっていてもホッコリとしてしまうのだった。


 少しして老獣人の治療も終わり、サチコは試しに立ってみるがやはりふらついた。貧血状態のような感覚だが、治療前と比べると段違いで回復していた。



 「よし、地に足が着くくらいには回復したようじゃな。それにしてもお前何者じゃ?魔具の手錠を無理矢理外すなんて聞いたことも....いや、すまんな。余計な詮索はしないと言ったのはワシの方じゃったか...」



 「....ごめんなさい。助かります。」



 「いや、いいんじゃ。ここまで解放されたんじゃから感謝でいっぱいじゃ。ありがとうな、気をつけてお行き。」



 サチコはこくりと頷き、マラの元へと廊下の奥へと足を進めようとする。だが、廊下に設置してある別の独房から一人の犬の獣人のオスが思いっきり鉄の扉にぶつかり、サチコはビクッと身体を跳ねて足を止めた。



 「おい!姉ちゃん!俺も助けてくれ!!奴隷になんかなりたくないんだよ!!」



 その声に呼応するかのように他の独房からも同じく助けを懇願する声で溢れかえった。それぞれが必死に顔を扉窓にへばりつかせ、涙ながらサチコに訴えかける。

 サチコはそんな現状に冷や汗をかく。本心としては全員助け出したい。が、そんな事をしていてマラ救出に間に合うのか?今にも酷いことをされ続けていて、いざ辿り着いた時には亡骸なんて事が頭によぎる。


 懇願の声はサチコの頭を凄い勢いでぐちゃぐちゃに掻き混ぜていた。



 すると廊下奥が何やら騒がしくなる。何人もの足音に誰かが騒いでいる。それは助けを求む奴隷という訳ではなく、何かの仕事でバタバタしていると言ったことに近い。

 声の主は黒ローブの者達というのはすぐに分かった。


 それは同時に老獣人にも感じ取り、老獣人は汗をかきながらもサチコから鍵束を奪うように取ると、最初に助けを求めた獣人の男の独房へ向かう。



 「お、おじいさん!」



 「おばあさんじゃろ糞ガキ!安心するんじゃ!すぐ終わる!!」



 老獣人は慌てた手つきで独房を開け、中にいた獣人の手錠を解いた。解かれた獣人は涙ながら老獣人に何度も頭を下げて礼を言うが、老獣人はその顔をガッと掴み、すごい剣幕で睨みつける。



 「礼なんぞ後でやれ!今は廊下に倒れてる黒ローブを独房に入れることに協力するんじゃ!!小娘!あんたも早く手伝うんじゃ!!」



 サチコと獣人はわけも分からず、老獣人の必死さに当てられ、急いで倒れている黒ローブを独房に入れると、老獣人はすぐに扉を占める。

 その直後、何人もの黒ローブが、反対側の廊下の奥へと走り去っていく。



 もし、老獣人がすぐに行動に移さなかったらサチコ達は発見されていた。その事実にサチコと獣人はホッと胸を撫で下ろした。

 だが、老獣人はまだ緊張感を保っているのか小言で話しかけてくる。



 「....恐らくこの二人の黒ローブに何かが起きたと察知した騒ぎじゃろ。こんなに早く気が付くとは...何かしら定期的な連絡法でもあったんじゃろうな。

 こうなったら長居すればするほど不利になる。小娘、名前は?」



 「え?さ、サチコです!」



 「サチコ、ワシらは黒ローブを被り、例の小娘を探し出すんじゃ。ワシは戦闘面はまるでダメじゃが、探すとなると人が多いに越したことはないじゃろ。

 で、獣人のお前さんは他の皆を解放してやれ。全員の手錠を外したならこの独房の隅に鍵を置いて、どこかに隠れて脱出の機を探るんじゃ。いいな?」



 老獣人の的確な指示にサチコらは顔を縦に振ることしか出来なかった。この切羽詰った状況の中、老人とはいえ冷静に物事を判断出来るのにサチコは関心するのだった。



 サチコと老獣人は黒ローブ二人のローブを剥ぎ取り、部屋の端に寄せて閉めた。ローブは少しゲボ臭く、魔獣狩りの事もあり顰めっ面しながら身に付けた。


 そこからすぐに獣人は他の捕まっている者を解放し始め、サチコと老獣人はローブを深く被り、少し早歩きで廊下を歩いた。



 「よし、これで万一遭遇した時も何とかなるじゃろ....さて、例の小娘が何処にいるのか検討は着いとるのか?」



 「えっと...さっきの黒ローブの人が言うには"廊下奥の上"とまでしか聞き取れなくて、恐らくここから上の階にいるとしか....」



 「結構アバウトじゃな...こりゃあ脱出までだいぶ時間かかるぞ。恐らくやつらは一番上、この施設の出口は必ず固めておる。ここに入ってきてから下に降りっぱなしじゃったから、ここは地下じゃろうな....出口以外逃げ場はない。

 やつらがこの階に姿をそれほど表さないのはそれが理由じゃろ。なら、時間が経てば経つほど出口はより強固に化していく。...小娘は諦めて脱出を優先させるのは」



 「だ、ダメです!それは絶対にダメですよ!!」



 サチコは老獣人にがっついて両肩を掴んで揺さぶり、老獣人のローブが剥がれそうになり必死に抑えた。




 「わ、分かった!分かったからやめておくれ!

 一応解放させてもらった恩はあるから最後まで付き合うわい!!」



 「ほ、本当ですよね?信じていいですよね?」



 「ああ、どちらにせよ、サチコがおらんと完全に固まった出口突破は無理そうじゃしな。それより....問題はここからじゃな。」




 老獣人が見つめる先には廊下奥にある螺旋状階段があった。階段から人の話し声やバタバタしているのが薄らと聞こえ、サチコは唾を飲む。




 「...この施設が何階まであるのか分からんが、順に二人で慎重に見ておこう。二度手間は避けたいからの。そしてもし、見つけることが出来なくて出口近くへ来たら、諦めるんじゃな。」



 老獣人は睨み付けるようにサチコを見ると、目線を一瞬逸らすが何とか合してサチコは見つめ返す。



 「いいえ、諦めません。ただ、その時は出口解放を優先はさせます。私のわがままで手伝ってくれてる老獣人を危機には合わせられませんから。」



 「ふっ....捕まってる小娘が羨ましいの。こんなに自分を想ってくれる人間がいるなんてのぉ...小娘とは長いんか?」



 意地でも意志を曲げないサチコに思わず老獣人は笑ってしまうが、それと反比例にサチコの顔色は暗くなっていく。




 「いいえ....合って殆ど時間は経ってません。ですけど、マラさんが無理矢理嫌な事されてるのを見て...助けたいって思ったんです。私、人助けが出来るような人に生まれ変わりたいって思ってて....」



 「...そうか。なら、さっさと急ぐとしようかの。そのマラが無事なのを願ってな。」



 老獣人もサチコもより一層気を引き締め、黒ローブと出逢わぬよう、マラの無事を祈りながらも揃って階段を昇った。


 一つ上の階へ来たが、そこには奥まで黒ローブの姿は見えなかった。物音一つ聞こえぬ空間に二人は不気味さを感じ、罠があるか警戒しながら慎重に探す。

 廊下には空き部屋が殆どで、牢屋もあったりしたがものけのからだった。


 まだ一階目、それは分かっているが少しでも見つける時間が遅れれば遅れる程不安に押し潰されてしまう。


 ――マラさん....一体どこにいるの?もしかしたら私を確実に捕まえるために上へ...それとももう....ころ




 「さ、サチコ!おったぞ!!マラじゃ!!」




 その言葉にサチコはいち早く反応し、バッと 振り返って老獣人の元へと向かった。鉄の扉に飛びつき、扉の小窓を見ると薄暗いが確かに下着状態のマラがそこにいた。

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