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オークション

 まるでロボット起動のようにふいに目を覚ます。周りを見渡しても真っ暗で何も見えないが、汚臭が漂う。背中には硬い壁、そこにもたれ掛かる形で座っていたのだとサチコは理解する。


 目が徐々に慣れていき、薄暗い中で自分の姿を確認する。目を覚ましてから感じていた違和感だったが、制服と下着が胸の上まで上げられ乳房が露になっていた。下もスカートと下着が膝の方まで下げられており、性器を触ってみると湿っていた。


 自分が気を失っていた間、何をされていたのかをゆっくりと押し寄せる波のように理解し、悲しさと苦しみが徐々に肥大化していく。その場で蹲り、泣いているとふと自分がされたことを想像してしまう。


 すると、とてつもない嫌悪の電流が流れる。身体が虫に刺されたかのように痒く疼く。最初は腕、そこから腹、足、胸、尻、性器、顔と掻き毟る箇所が増える。全身が異常な程に痒く、まるで小さな虫が身体中を駆け巡っているかのようだった。



 ――痒い!痒い痒い痒い!!触らないでよ...私に触らないで....嫌でしょうがない....痒くてしょうがない...



 掻きむしっていたのが終わったのは腕から血が出てからだった。痛みと血が視界に入るとサチコの痒みも頭の混乱も落ち着き、静かに制服を着直し、また一人で泣き始めた。

 現代でも遭ったトラウマ行為をまた味わい、絶望にくれるが、まだ気を失っていた間というのが幸いだと感じている部分もあった。


 手錠をふと見てみると二つ分付けられていた。マラを助けようとした時は何とか壊れそうだったが、今度は無理だとサチコは感じ、そこからは寝るのと泣くのを繰り返していた。


 しばらくすると部屋の扉を黒ローブ一人が開け、サチコを無理矢理立たせて連れて行かされた。

 サチコはその間何も抵抗しなかった。二つの手錠というのもあるが、サチコの心はもうズタボロで逃げ出そうという気も起きずにいた。


 連れていかれたのは何処かの舞台裏のような場所だった。色んな小道具やらが端に寄せられ、サチコが来た時には何人もの奴隷が並ばされていた。

 サチコはその最後部になり、隣はグリムに足を刺された少女だった。


 涙をボロボロと流しながら必死に声を抑えていた。初めて見た時には無かった腕や顔の痣、微かに臭う体液の臭い、自分より一回り小さい少女なのにも関わらず、自分と同じことをされたのはすぐに理解し、サチコ自身も涙を浮かべてしまう。


 並ばされると黒ローブから色々と個人情報を聞かれた。出身国や年齢、家族編成や色々根掘り葉掘り聞かれた。この事が何を意味するか分からなかったが、この後すぐに分かることとなった。


 壮大な音楽とマイク音が奥から聞こえる。奥もカーテンで隠されており見えなかったが、先頭にいた犬のような獣人が奥のカーテンから出てきた黒ローブに連れられ、カーテンの先へと姿をくらました。


 何を言っているのかは分からないが、カーテンの奥は凄い盛り上がりだった。


 それから徐々に先頭がカーテンの先へと消え、遂に自分の次である少女の番へと変わった。

 少女は泣きながらも黒ローブに連れていかれ、助けることが出来ない自分に歯ぎしりをしながら、そっとカーテンを捲って少女がどうなっているのか確認した。


 カーテンの先には舞台のような所で黒ローブに捕まりながらスポットライトを浴びている少女、そして舞台端には仮面はしているが明らかにグリムがいた。更に、舞台前には大きな水晶が番号に振り分けられ何個も並べられており、そこには一個につき一人口元だけ映っていた。



 「皆さん!いよいよ終わりを終わりが近づいて来ました。残すところ後二人の奴隷!ですがご安心下さい、過去このオークションに参加されている方はお察して頂いていると思いますが、終わりが近付くにつれ価値ある商品をご用意させて頂いております!最後までお楽しみ下さい!!

 さぁ、そんなメインの前座に当たるのがこの少女、ナナリー・ベロラムぅ!!」



 グリムが手を広げて少女ナナリーを紹介すると水晶に映っていた人間も大盛り上がりの歓声を浴びせる。



 「出身国はゴリアム皇国、年齢はまだ幼く九歳!小声で臆病者という点が特徴でございます!商品として出され、買われた皆様が奴隷をどう扱っているか定かではありませんが、この少女は全てにおける万能タイプと評価させてもらっています!!

 性なる夜でも拷問、薬漬けでも皆様に熱と興奮をもたすのは間違いなし!!この可愛らしい少女が小さく蹲って泣いているのを見て、私はまるで宝石だと感じます。ですが、宝石を壊した時、その爽快感は言うまでもありません!それほどの価値があると踏んでおります!!!」



 グリムの一つ一つの言動に会場は大盛り上がり、それに反比例するかのようにナナリーの震えも顔色もドンドン悪くなっていく。次第には舌を伸ばし始め、サチコは冷や汗がブワッと沸き起こるが、ナナリーを捕まえている黒ローブに布で口を封じられる。


 そんなナナリーを後目に見てグリムは鼻で笑い、再び水晶に向かって演説する。



 「可愛らしい少女だというのは皆様に十分伝わったかと思います。それでは、早速....競売を始めさせてもらいます!!スタートは金貨三十枚からとさせて貰います!それでは皆様どうでしょうか!?」



 グリムがそう促すと、水晶に映る人物達は一斉にして声を上げ始める。



 「十番!五十枚!」



 「三番!百五十!」



 「七番!二百五十枚だ!」



 水晶に映るもの達の熱が会場を温め、サチコにも伝わってくる。それと同時にサチコは今の状態、自分らが置かれた立場というのをハッキリと理解する。



 ――私達は奴隷、商品だ。私達はまるで物みたいに買われ、物のように使われて物のように捨てられる...人の命を....この人達は人の命をなんだと....いや、この世界ではこれが常識なんだ。じゃなきゃ奴隷なんて居ない、差別国家なんて出来やしないんだ...



 ナナリーもその事を身に染みて実感し、泣き崩れてしまった。だが、そんな姿を見ても会場の熱は引かずに寧ろヒートアップする。まるで美味しい料理にトッピングするかのように、少女の悲しみは彼らにとっては幸福なのだ。

 場はヒートアップし続け、気が付くと四番と十二番の争いになっていた。


 四番は見た感じ太っている男性で、十二番は口元もマスクをしており分からないが声的には女性だった。



 「十二番、金貨千二百枚。」



 「さぁ千二百枚出ました!どうですか皆様!どうですか四番様!?」



 「グッ....四番!金貨千三百枚だ!!」



 「十二番、金貨千八百枚。」



 苦しそうにする四番に対して十二番はまるでブレない。膨大な資産があるのか値段が上がっても動揺ひとつ見せずに発言する。

 そこからは四番は何も言えなかった。グリムが何度か促すが、ここから値段は上がらず、結果は十二番の女性の勝ちとなった。




 「ご購入ありがとうございます!!さて....皆様注目のメインの登場となります!私自身この世界で長く飯を食べてきていますが、こんな者は見たことはありません!正に伝説!書籍上の架空かと思われた人物!サチコ・マエダの登場です!!」




 その声と同時にサチコはいつの間にか裏にいた黒ローブにガッチリ捕まえられ、舞台の中心に引っ張られる。スポットライトがやけに眩しく、目を細めながらも目の前にある水晶から目を背ける。

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