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――――――――――――――――――――――――

 

 依頼主、マラとノムが住まう家の中は外見同様古びた家だった。まだ昼だというのに日当たりも影響しているのか全体的に薄暗く、床や壁の木材も所々穴が空いていたりしている。



 「あはは...すいませんこんな所で....何か宿を取ってもらった方がいいんですけど、そこまでのお金は私たちには...」



 「別にあたしは気にしないね。いいじゃん、立派な家だ。サチコは宿とった方がいい?」



 「え?あ、いえ。私も別にそんな事...」



 ――気にはなるけど、別に不快って訳じゃないし。



 そう言うとマラは二人を二階の空き部屋へ案内してくれた。少し二人となると狭いが、事前に連絡を受けていたのか二人分の布団は用意されていた。



 「おお!布団まで用意してくれたのか!ありがとね〜。」



 「あの...それより魔獣狩りはいつからですかね?」



 マラは少し不安そうにステアに話しかけた。そんなマラに少しステアも不思議そうに見る。



 「?別に決めてないけど、少し休んでからかな?ちょいと疲れたし、久々にエネルギー補充したいしね。」



 そう言うとステアはここから一度も開けてない小さい肩掛けバックを嬉しそうに開けると、木箱を取り出した。サチコとマラは不思議そうに覗くと、木箱から出てきたのは少し高そうなお酒だった。



 「え、ステアさん。そんな物持ってきてたんですか?」



 「そんな物って言い方無いだろぉ?私には死活問題だったんだよ。」



 「じゃあ魔獣狩りは明日ってことですか?今日の今日でお酒が抜けるとは思えないし。」



 「まぁね。別に酒が残っててもいいんだけど、今行ってもどうせ夜で危ないんだし、一泊してくつもりだよ。」



 ステアは背伸びをしながら布団に横たわり、暫く目を瞑っていた。だが、気になることがあり、すぐに目を開ける。




 「で?マラはどうしたの?さっきから何か言いたそうだけど。」



 「え?あ、あの...お二人はお腹の方は空いてたりしますか?」



 「空いてるねぇ。サチコは?」



 問いかけられたサチコは頷くと、マラは少し嬉しそうな表情に変わり、手をパンっと叩いた。



 「そ、それなら今から一緒にご飯どうですかね?私達もそんなに余裕がなくて豪華なものは出せないんですけど、明日の魔獣狩りの英気を養って欲しくて....」



 「お!いいね〜。何か軽くてもいいから酒に合うツマミみたいなものも用意してくれるとありがたいけど?」



 「勿論です!それじゃあ、私早速準備しますね!」



 マラは嬉しそうにその場を去って階段を駆け下りた。そんなマラを見て微笑しているステアを他所に、サチコはカバンを置いた。



 「ステアさん、私マラさんのお手伝いに行ってきます。」



 「ん?何で?別に私らが気を遣う必要ないんだよ?疲れてるなら休んだ方が」




 「いえ、マラさんにも料理教えてもらいたし...何か手伝いたくなって....」




 「...ま、止める理由も無いしね。私はここで料理出来るまでチビチビ飲んでるよ。」



 ステアはニコッと笑うとお酒のボトルを開け始め、サチコは一階へ降りる。降りるとすぐにキッチンで作業しているマラを見つけて、お互い目が合った。



 「サチコさん?どうしました?」




 「あ、あの....私もその...料理したいって思って。」



 「大丈夫ですよ。私一人でも出来ますし、長旅で疲れてるだろうし」



 「りょ、料理教えて貰いたくて....私、自炊とか全然やってこなかったんで...ギルドの人の役に少しでも立ちたくて....その...」



 モジモジとしているサチコを微笑んで見たマラ。マラは手を止めてキッチンを離れてサチコの前に近寄った。



 「...それじゃあ、早速手伝ってくれますか?」



 「は、はい!よろしくお願いします!!」



 サチコはその一言が嬉しくて目をキラキラさせながらお辞儀をした。

 そこからはマラから色々と指示をして貰いながら料理を作っていく。包丁の使い方や色々な食材、その組み合わせ。最初は危なっかしがったのが、時間が経つにつれ慣れていき、スピードは遅いが安定性を保てていた。



 「....上手ですねサチコさん。手つきも安定してきましたし、センスいいですよ。」



 「そう...ですかね?そう言って貰えると助かります....」


 

 褒めて貰えて少し顔が熱くなるが、自分が手間取っている果実の皮剥きを隣で慣れた手つきでスルスルと包丁でやっているマラを見て、サチコは自分の浮ついた感情に釘を刺す。


 不器用ながらも包丁の使い方に慣れ、次第に喋れるほど余裕を作れたサチコはロアに話しかけた。



 「...マラさんは何故ノム君を魔獣狩りに?その、魔獣狩りって結構危険だと思うし、食材としてなら私達だけ行かせると思うんですけど....何か意図があるんですか?」



 「それは...ノムの夢だからです。」



 マラは果実の皮むきを終え、微笑みながらも果物を包丁で細かく刻んでいく。



 「ノムは上級国民になりたがってます。生活そのものがよくなるのは勿論なのですが、私と今一階で休んでいる叔母を楽にしてあげたいらしくて....身内で一人でも実力を示せれば身内も上級国民になるのをどこかで知ったらしくて。」



 ――そうなんだ。まぁ確かに、実力者しかいなかったら城内も色々問題起きそうだし。それより、叔母さんいたんだ。



 「私的にはノムが危ない橋を渡って万一のことがあることを考えたら、今の生活でいいと思ってるんですけどね。でも、姉として弟の意志も尊重したい思いもあって。だから、今回魔獣狩りを経験させてノム自身どうして行くか決めさせたかったんです。」



 マラは手がだんだん止まり、不安そうな顔をしている。そんなマラを見てサチコも自然と手が止まってしまう。

 彼女の不安を察し、サチコは口を開いた。



 「...応援してあげて下さい。」



 「え?」




 「ノム君が魔獣狩りが終わっても上級国民を目指したいっていうなら心から応援してあげてください。

 応援してくれてる人が居るっていうだけで頑張れることもあると思います。マラさんの想いはノム君に力を与えてくれると私はそう思います。」




 サチコはマラの目を見つめて真剣に言うが、目を丸くしているマラの反応に段々冷静を取り戻し、ボッと火をつけるかのように顔が熱くなる。



 「す、すいません!!こ、こんな低脳の分際で変に大きいこと言って!」




 「フフッ。いいえ、サチコさんの言う通りだと思います。私は魔獣狩りが終わった後でもノムの背中を快く後押し出来なかったと思います。ですけど、サチコさんのおかげでしっかり応援出来そうです。ありがとうございます。

 さぁ!さっさと終わらせましょう!ノムもお腹すいているだろうし、ステアさんもそろそろおツマミが欲しくなりそうなので。」



 マラは顔を明るくしながら料理をいつも以上のペースで作る。その姿からマラはどこか心の重りが外れて楽しそうに料理をしているように見え、サチコも何だか心が温かくなったのだった。

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