オマケ四・鬣犬の悪巧み②
ゲルだけでなく他の男達もニヤニヤと気持ち悪い笑みをノムに向けてくる。そんな彼らの笑みがひたすら気色悪いと感じていたノムの背後から、女性の声が聞こえた。
「あんたら、何やってんの?ギャーギャーワーワーって...エロ本でも見つけたのかい?」
声をかけてきたのはヘレン。女性陣を率いるゲルと同じく副リーダー格の人物。手を腰に当て、見る者を誘惑するような魅惑の谷間を晒し、呆れた表情で彼らを見ていた。
だが、男性陣は動揺もせず、ノムにゲルが耳打ちをする。
「見てろよノム。この飴がただの飴なのかどうかを....」
ゲルはノムから離れると、ヘレンに例の飴を無言で渡す。訳もわからず何となく受け取ったヘレンは、目を丸くしてその飴を見つめていた。
「...何これ?」
「見りゃあ分かんだろ?ただの飴だよ。復国軍のノトレムさんが作ってくれた最新作だ。全員分来てるぞ?ほれ、舐めてみな?めちゃ美味いぞ?」
そう言うとゲルはもう一本取り出して舐め始める。すると男性陣もわらわらと木箱に群がり、一本づつ取ると舐め始めた。
流れに乗ったノムもその飴を舐め始めるが、舐める箇所によって味が変化していて飽きることは無い。まるでレストランのフルコースが一つに纏まったような満足感、ノムはその飴に夢中になり、少しゲル達を見直した。
男性陣が美味しそうに飴を味わってる姿を見て、ヘレンも少し興味深そうにしていた。
「へぇ〜...そんなに美味しいんだ。でも、何だって私らにこんな贈り物をしてくるんだい?」
「それは....そ、そう!この前のやつだよ!!俺達サチコちゃんとか助けに行った時のお礼がしてなかったって、贈ってくれたんだってさ!」
「ふ〜ん。ま、疑うわけじゃないけどノトレムさんが関わってんなら何かと安心だろうし、遠慮せず頂くとするかな。」
ヘレンは短い髪を耳に掛け、長い舌を飴に伸ばし、それが触れた。飴の味にヘレンは目を見開いた後は飴の虜、色んな箇所を舐めたり口に含んだりと飴を堪能していた。
彼女は満足気だったが、それは男性陣も同じだった。いやらしく飴を舐め回すヘレンを見て、彼女に悟られぬ様に小さく盛り上がっていた。そんな大人達の反応をノムは唖然と見ていた。
――こ、こいつら。女のああいう姿を自然と見るためだけにこんな物まで用意したっていうのか?
「...........て、天才だ!」
ノム、アホな大人への第一歩を踏み出した瞬間だった。
「....あんたら、こないなところで何しとん。何や変な事でも企んで無いやろな?」
次にヘレンと男性陣の間から現れたのは現リーダーメメ。寝起きなのかボサボサの髪で欠伸をし、彼女の姿を見て固まった男性陣の中からノムの姿を見ると、メメは溜め息を吐いた。
「ノム...あんた、いつもの仕事置いてどこほっつき歩いとんのや。それに、この集まりはなんや?説明してくれるやろ?」
そう尋ねるメメの質問に応えるように、ゲルは満面の笑みで木箱から例の飴を取り出し、メメに渡しに行こうとすると。
「メメ姉さん!これ復国軍から贈られてきたんです!受け取っ」
「...待て!ゲル!!」
呼び止めたのと同時にゲルの肩を掴んだのはスキンヘッドが特徴的の男、ジルだった。彼はゲルと古い仲で、二人はとても仲が良かった。
「....何の真似だよ兄弟。この手は何?」
「お前...自分がしようとしてること分かってんのか?どんな気持ちでメメ姉さんにそれを渡すか」
「うるせぇ!!!!」
ゲルは思いっきりジルの手を振り切り、目を見開くジルに泣きそうな表情を向けながら叫んだ。
「んな事分かってんだよ!!メメ姉さんは未来に希望もなかったどうしようも無い俺を救ってくれた!俺だけじゃない!!ここにいる全員がメメ姉さんに感謝してんだ!!メメ姉さんは俺らの英雄だ!!
お前の言ってることなんてとっくに分かってんだよ!!」
叫び終わったゲルは息が荒れつつ、絞ったような声でメメには聞こえないように喋った。
「でもよぉ....メメ姉さん。クソエロいじゃんか...男に生まれたならそういう目で見ちゃうのは仕方ないじゃないか....」
「....ゲル。」
「....へへ、やっぱ駄目だよな。こんな気持ちでメメ姉さんの元に付いてる奴なんて....クソ以外だよな!俺が悪かったよ。これは捨てるよ。」
ゲルが抱いた希望、それは仲間達によって阻止され、彼の手元から希望の元である飴が手放されようとした。
だが、その手を握り、阻止したのはまたしてもジルだった。そんな彼の行動にゲルは言葉も出ずに呆然と見るしか無かった。
「何やってんだ?こんな事したら、メメ姉さんだけ仲間外れになっちまうだろ?渡さなきゃ駄目じゃないか。」
「...兄弟?」
「確かに、お前のような下心丸出しで渡すのは最低だ。今までの恩を仇で返すようなもの、メメ姉さんに対する侮辱行為だ。」
ハッキリと言われたゲルは自分の犯した愚行を恥じた。だが、そんな彼とは違い、ジルは彼に向かって微笑んだ。
「だから、そんな下心無しでメメ姉さんに鬣犬の一員として渡すんだよ。その結果、メメ姉さんが舐める姿がエロく見えちまったらそれは意図的じゃない....事故じゃないか。」
「ッ!.......兄弟!すまねぇ!俺が...俺が間違ってたよォ!!」
「いいんだ...生き物皆ミスはする。お前は今まで俺達の事を引っ張って来てくれた。だからその分、お前がミスした時は俺達で支えるよ。」
二人は涙を流しながら抱き合い、そんな光景を見ていたノム含めた男性陣は目に涙を浮かべ、しんみりとしていた。
だが、状況を把握出来ていないメメにとっては摩訶不思議な状況。急に喧嘩したと思ったら意味分からない仲直りをし、なんか良い雰囲気になっている。「何やってんだお前ら」と言わんばかりにポカーンと口を開けて見ていた。
そんな彼女にゲルはすすり泣きながら近付き、飴を差し出した。
「グスッ....メメ姉さん、どうぞ。」
「あ、あぁ....ありがとう?...何やねんお前ら今の茶番は....」
「いえ、気にしないで下さい...どうか....思いっきりそれを味わって下さい...」
メメの知りたい内容は何にもなくて戸惑い、飴をただただ見つめていた。
「なんやこれ...ただの変な色合いの飴やろ?....なぁヘレン、これ美味いんか?」
声を掛けられたヘレンはすっかり飴が気に入り、ぺろぺろと舐めながら何度か頷いた。
「美味しいですよ。復国軍からの差し入れみたいで、ノトレムさんの最新作ですって。」
「へぇ〜。そりゃあ楽しみやな〜。復国軍の贈り物言うから変態エンスやったらどないしよと思っとったけど、ノトレムやったら安心やな。
....変な空気感やけど、まぁ頂くかな?」
エンスの名にビクッとしている男性陣には気付かず、メメは大きく口を開けた。唾液で濡れた綺麗な舌はゆっくりと飴に伸びていき、彼女の顔も緩みきって頬も少しだけ赤くなる。
頭がピンク色に染まり切っている男達にとっては完全に夜のソレ、動き過ぎて爆発してしまうような心臓の鼓動と共に奇跡の瞬間を今かと待ち望む。
そしてメメの舌先が、飴に、触れた...
次の瞬間、緩みきった顔から怒ったように眉間に皺を寄せ、舌先が触れた直後に口の中に突っ込み、尖った歯で噛み切った。そして口内で更に飴を細かく分解させて次々に飲み込んでいく。
それと同時に男性陣の興奮は冷凍されたように下がっていく。
そんな男性陣のテンションに気付かなかったメメは上機嫌のまま、飴を噛みまくっていた。
「んん!美味いやないか!!やっぱノトレムの菓子は天下一品やな!」
「あの....メメ姉さん...噛み砕くのはちょっと....」
「?」
男性陣の反応に疑問を感じつつ、構わずメメはあらゆる方向から串ごと飴を噛み砕いていく。
その最中、男性陣は顔色を悪くさせて股間を抑えていたのだった。




