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黒の駒〜呪いで世界を平穏に〜  作者: 矢凪川 蓮
最悪の祭りの日
138/340

オマケ四・鬣犬の悪巧み

――――――――――――――――――――――――

 

  初めての環境、初めての経験、そして新たにできた家族。普段の生活からガラリと姿を変え、まるで退化したかのような自然の生活。だが、ノムは退化とは考えず、進化として捉える以外考えもしなかった。


 マラを失い一人ぼっちになるはずだったノムを鬣犬は快く向かい入れてくれ、自分が望んでいた力をつける事にも手を貸してくれると約束してくれる。

 強くなって大切な人を守れる力、それを与えてくれるかどうかは裏奴隷施設での黒爪(ブラッククロー)との戦いで証明してくれた。


 最初は辺りに漂う自然臭が鼻を刺激し、身につける獣皮の衣服も獣臭い為、不満はあったが今では慣れたもの。


 そんな生活が始まって早二ヶ月余り、ノムは両腕を限界まで広げて持てる籠に採ってきた果実を山のように乗せて住処へと運んでいた。ノムが鬣犬に入ってきてから与えられた仕事はこの果実運び。


 色々と抗議はしたものの、鬣犬現リーダーであるメメの了解は得られず、不満を抱えつつやっている。

 ただ、先日メメから刃物を研ぐ作業を教わり、その時の事をノムは思い出した。



『ええ感じやんノム。初めてにしては上手く扱えとる。ひょっとしたら才能があるかもしれんな〜。』



 かけられた褒め言葉がノムの頬を緩ませ、小さい身体を大きな歓喜で満たされた。次第に早歩きにもなり、鼻歌までしてしまう始末。完全に舞い上がっていた。



 ――へへ、『才能がある』だって!これは狩りに参加出来る日も近いな!サチコがこれ知ったら慌てたりして!......姉ちゃんがもし空から見てくれたなら心配そうにしてるだろうけど



「....俺、今すっげぇ楽しいよ。姉ちゃん。」



 木の葉の隙間から見える曇りひとつない晴天に向けてノムはポツリと呟いた。それと同時に鬣犬との充実した生活で忘れさせてくれた姉の喪失感を感じ、ノムは目に浮かんでしまった涙を拭き取り、再び歩き出した。


 少し歩くと、今では見慣れた鬣犬の住処が見えた。大きな石を家のように立て置き、建物補強の結界魔法で崩れないよう固定していた。

 鬣犬の生活は基本自給自足で仲間と明確な目的もなく暮らすので、時間は有り余っている。ちゃんとした家も作れるだろうが、鬣犬は色んな所を転々と移動する為、雨に晒されなければ別に構わなかった。



 二ヶ月もここで過して見慣れているはずなのに、不格好な住処を見るとノムは鼻で笑ってしまった。

 すると、住処の裏側の森林地帯からノムに向かって手招きしている鬣犬の男が見えた。名はゲル。目元の隈が生まれつき濃いのが特徴、鬣犬の男性陣を仕切っている副リーダー格の存在だ。


 そんな彼が必死に手招きするが、ノムは何を慌てているのか不思議でしょうがなかった。



「....?何〜!?俺になんか用なの!?」

「バッ!...馬鹿野郎、大声出すな。ちょっとこっちこい。」



 辛うじて聞こえる程度でゲルは小声で話しかけた。何故声を貼ってはいけないのか、ノムには相変わらず疑問が残る。



「何なんだよ....俺、これをメメん所に持ってかないと行けないんだけど〜!?」

「そんなの後でいい!お前以外の男は全員来てんぞ?」



 そう言われると仲間外れになるみたいでノムの心はぐらつく。結果、ノムは渋々籠を住処付近に置き、ゲルの元へと駆けつけた。


 そこにはゲルの言う通り、鬣犬の男性陣全員が円を描くように集まっており、中心には木箱が置かれていた。



「...?何これ?何でお前ら集まってんの?」

「ククク...今にわかるさノム。よし、男性陣全員集まったってことで、お披露目といこうじゃないか!ここまで持ってくるのにどれだけ苦労したか...この日を皆、強く待ち望んでただろう!?」



 ゲルの一言に男性陣の全員が頷き、今かと木箱を見つめてウズウズしていた。当然、ノムにはそんな話は知らないので首を傾げた。


 ゲルは両手の指を動かして慣らすと、木箱の蓋にそっと手を置いた。



「...復国軍のエンスさんに交渉してから早三ヶ月。エンスさんは快く承諾してくれて、上手いことノトレムさんを動かして(騙して)、ようやく届いたぞこの品が!まずは、エンスさんに感謝....そして、今日この日を迎えられた事を神に感謝だ!!」



 両手で蓋をガッと掴み、ゲルは思いっきりその木箱の蓋を開けた。期待の歓声を漏らす男性陣に対し、ノムは理解も出来ていなかったので木箱の中身が怖くて目を細めた。


 恐る恐るノムは木箱を見てみると、そこには透明の器に入っている何本もの棒状の飴。色とりどりのカラフルな棒に突き刺さっている飴を見てノムはポカーンと口を開けていると、ゲルはニヤニヤしながらそれを一本取り出して天へと掲げる。



「見よ!!これがエンスさん設計、ノトレムさん製作の最新傑作!!名付けて!『超エチエチ!ハイパークイーンペロペロキャンディ!!』」

「「「うぉぉおおおおおお!!!!」」」



 飴一本に対してこの盛り上がり様。変な期待をしていたノムは目を細めて大きな溜め息を吐きこぼした。



「はぁ〜、なんだよそれ。ただの飴じゃんか。どんなヤバいやつなのかって期待したけど大損じゃんか。そんなの下級国民でも普通に買えるっての。」

「ククク、分かってねぇなぁ〜ノムぅ〜?これがどんだけ凄い発明なのか...今に教えてやんぞ〜?」

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