祭り終了
サチコ達が祭りの会場へ着くと、祭りはまだやっていた。だが、テントには商品などはもう並べられていなく、全員が夜空を眺めながら何かを今かと待っていた。
そんな光景をサチコはポカーンと口を開けて見ていると、ラーズが合流してくるのが見えた。
「ラーズさん!あの人達はもう大丈夫ですか?またシアラさんとかを襲うなんて....」
「大丈夫だ。...話はつけたし....命は奪ってない。人を襲うことももう無いだろう...」
「そうですか....良かったぁ。あ、それで聞きたいんですけど、これって皆は何を待ってるんですか?何かあるんですか?」
そんな彼女の疑問にラーズは微笑んで答えた。
「それは見た方が...早い。....サチコもきっと気に入る。」
そんなラーズの言葉に首を傾げながら、サチコはラーズとシアラに挟まれる形で一列となって空を眺めていた。
夜空に広がる星々の照明はとても美しく、ボーッと眺めていると、下の方から火の玉らしきものが上がってくる。
それは高々と上がると、色とりどりの火の花を咲かせて見せた。爆音と共に咲かせる火の花、花火はどんどん続けられて放たれ、綺麗に咲き誇っていた。
――花火か...家の窓から見えたことはあるけど、間近だったらこんな迫力があって綺麗なんだ。
そんな花火に感動していると、遥か真上から魔力を感じ、サチコは更に目線を上げると、何やら透明でキラキラしているものを見つけた。そしてその輝きはどんどん空へと広がり、この祭りの会場をドーム状に覆っていく。
「な、なんなんですかあれ!大丈夫なんですか!?!?」
「大丈夫だサチコ。....ここへ来た時に会った....グリって男の個性魔法だ。...他の人から魔力を借りて....空に鏡の空間を作る。...結構見物だぞ。」
その言葉通りに鏡はどんどん上空を侵食していき、祭り一帯を覆った。すると、そんな中で打ち上がった花火の光が色んな所で反射していき、まるで一つの花火が複数に分身したかのような感じだった。
夜に染った上空は昼のように明るく、そして輝く。光の反射、感動の反射、サチコはそんな上空の美しい景色に見とれ、花火に負けぬ程に目を輝かせた。
――凄く綺麗!少し眩しいけど、そこは調整してくれてるのか?全然見るのが苦じゃないし、寧ろ見とれちゃう!
この世界に来てから魔法って便利だけど危ないって印象だったけど、こんな使い道が....魔法って、凄い!!
魔法への印象がガラリと変わり、信頼出来る大切な仲間と共に見るこの時間はサチコにとって至高の幸せだった。
だが、シアラの横からサチコを見るリーヤの顔は暗く、心の隅で巣食った恐怖が表情を通して現れていたのだった。
その花火をもって祭りは終了。後片付けを協力して行い、最後まで手伝ってくれたということで、リグがシアラの採ってきたプラセルのジュースを振舞ってくれた。とてつもなく美味しく、サチコの疲れは一気に吹き飛んだのだった。
もうすることなど何も無く、四人は帰り支度をするが、シアラはここで別行動となる。デモーノ街から帰った方がナルテミ村が近く、用事があるということで、サチコはガックリと肩を落としていた。
「あはは...落ち込んでくれるのは嬉しいですが、困りますね。すいませんサチコさん、どうしても外せない用事なので。」
「いえ....大丈夫です。でも、この先シアラさんと会うのは何時かと思うと...」
そんな彼女の言葉にシアラは顔を暗くさせた。その顔を見たラーズはサチコに声をかける。
「....今度...お互い暇な時があったら....ナルテミ村へ連れてってやる。....だから...気を落とすなサチコ。」
その言葉にサチコは目を輝かせ、リーヤはここぞとばかりに身を乗り出した。
「お兄ちゃんお兄ちゃん!ならウチも!!」
「はぁ...分かった。....今回はワガママを言わなかったから...今度は連れてってやる。」
「やった!お兄ちゃん大好き!!」
リーヤは思いっきり兄へ抱き着き、彼は恥ずかしそうに顔を少し赤らめる。そんな二人を見てシアラは昔を思い出しているような遠い目線を二人に向けていた。
「........それじゃあ、私はそろそろ帰りますね。皆さん、お身体に気を付けてください。」
シアラはぺこりとお辞儀をし、彼女が頭を上げると、サチコはそれを待っていたかのように笑顔で口を開ける。
「はい!シアラさんも気を付けてください!!また来年も一緒に祭りに行きましょう!私、楽しみにしてますから!!!」
元気よくそう言ったサチコは、お互い笑顔で別れ、お互い気分よく帰ることが出来ると思っていた。だが、シアラの反応はサチコの予想とは違った。
彼女はサチコを見つめながらポロポロと涙を流していた。口を震わし、今にでも泣き叫びそうな彼女にサチコだけでなくラーズもリーヤも言葉を失う。
すると、シアラはサチコに突然抱き着いた。咄嗟の事の連続でサチコは動揺して頭が真っ白になるが、その中でもシアラの抱き締める力強さと鼻をすする音、自分に擦り付けて来る顔の感触が伝わる。
シアラはすすり泣くだけで言葉は発しなかった。だが、三人ともそんな彼女の想いに遅れて察する。祭りの印象で薄れてはいたが、これは戦争前の思い出作り。
サチコは自分の発した言葉でシアラを傷付けた事を後悔するのと共に、自分の為に泣いてくれるような存在の有難みを刻み、彼女を抱き返したのだった。
シアラと別れ、サチコ達はギルドへと戻るとすぐにギルド長室へと集合させられた。そこにはギルドメンバー全員集結しており、サチコは他のギルドメンバーと同様壁の横へと並ぶ。
この時、サチコは自分もギルドメンバーという事を実感し、少し感動した。
ラーズは祭りの事をバルガードに話をすると、彼はガクッと落ち込んでいた。
「そっか...いいな〜....俺も行きたかったぞちくしょう!!なんでシアラの奴こんな直前に言うかね!?」
「....ロアから聞いてないのか?...シアラの予言のことを....伝えた筈だが....」
「そりゃあ聞いたさ。だけどよぉ...何も近日じゃなくたって良くねぇか?一週間後とかだったら皆で行けたかもしれねぇのによぉ....俺なんて昨年から色々プラン練ってたんだぜ?」
肩を落として落ち込むバルガードを見て、エンスはヘラヘラしながら話しかける。
「またカッコつけようとしたのかい〜?どうせ失敗するから、傷つかなくて済んだじゃ〜ん。」
「お前....相変わらず容赦ないな。だが!今回はマジで自信あったんだぜ!?食べ物を噛まずに飲み込む大胆さアピール作戦だ!成功したら凄くねぇか!?」
その作戦の名前を聞いただけでサチコは思った。
――.....絶対喉に詰まらせて笑われるんだろうな〜。




