襲撃
「おっけー。じゃあ後はお兄ちゃんだ。連絡入れとくよ。....音話。」
リーヤは魔力を帯びると、口元と右耳をそれぞれ抑えて目を閉じて集中する。その行動をサチコは真っ先に受話器連想し、電話しているのだと察した。
予想通り、リーヤは口をモゴモゴと動かし、何度も同調するかのように何度か頷いていた。
――多分、音の塊をラーズさんに飛ばして、あっちの音を塊にして持ってきてるのかな?口とか動いてるけど、全く音が聞こえないや。
通話をしているとは思えない静寂な時間が流れると、リーヤは魔力を抑えるのと共に手を外して目を開けた。
「ふぅ〜...了解だって。後、あんまり突っ込み過ぎないようにも言ってた。気を付けてよね〜シーチャ。」
「分かりました。それでは皆さん、ご迷惑かける形で申し訳ないですが、行きましょうか。」
こうして少年を含んだ四人は少年の家へと足を進めた。
祭りの昼のような明るい空間にいたせいか、普段のデモーノ街の薄明かりがとてつもなく不気味に感じる。風も背筋が凍るかのように冷たく、視線を感じる訳でもないのにキョロキョロと周りを見てしまう。
小さな物音ですら大きく聞こえ、祭りに行っていない物の生活音にすらサチコは驚いてしまう。
心臓が大きく脈打ち、まるで耳元で太鼓が演奏をしているかのよう。飲みずらい唾と吸いずらい酸素を何とか身体に取り込みながら、先程まで感じていた幸福感とまるで相対の恐怖感を抱きながら何とか歩を進めていた。
しばらく歩いていくと、目的の建造物までもう少しという所まできた。サチコは後ろを振り向いて見ると、祭りの方の光はまだ輝きを帯びており、上手く行けばまだほんの少し遊べると期待を胸に秘めるのであった。
すると、少年はいきなりシアラの手を掴み、先へと走って引っ張った。
「え?え??ちょ」
そんな驚いているシアラの事を気にもせず、少年はリーヤとサチコとの距離を離すかのように走る。その少年の行動に二人は顔を見合せつつ、その後を追った次の瞬間だった。
シアラと二人の間に近くにあった高台が倒れてきたのだった。咄嗟のことでサチコは急に身体が固まり、上を見上げると丁度自分の真上に落ちてきていた。
「さ、サッチー!!」
咄嗟にリーヤはサチコの手を取り、後ろへと飛び避けた。ちゃんと着地したリーヤとは違い、尻もちを着くことになったサチコは痛みで顔を顰めながら高台の方を見る。
大きな木材がゴミのように積もり、少し広めの道を埋めつくしていた。腰くらいまでの高さで、立ち上がると向こう側で顔を真っ青にしているシアラと目が合った。
「リーヤさん!サチコさん!大丈夫ですか!?お怪我は!?」
シアラは少年から手を離して二人の方へ向かおうとすると、上から突然火の鞭がシアラの行き先に現れ、シアラのすぐ目の前の地面を破壊した。
突然の魔法と衝撃に目を見開きながら、シアラは上を見上げると、道に隣接している家の上には七人の人物が立っていた。
どれもが若い青年で、赤いジャケットに黒いシャツにスボン、頭には白いローブといった衣装。薄汚れているのすら統一されていた。
「こ...この方達は?」
「.......ごめんなさい。」
後ろから泣いてしまうかのようなか細い声が聞こえてシアラは振り向くと、少年は綺麗な涙をポロポロ流しながら彼女に背を向けて走り去っていく。
その後を追いかけようとするシアラだが、またもや炎の鞭が行く手に攻撃し、シアラは動けずにいた。
その様子はサチコとリーヤにも見える。特にサチコはシアラに二度も渡る攻撃を放った者達に憎悪を感じ、黒目を漆黒へと変え、眉間に皺を寄せた。
「なんなんですかあなた達は!!シアラさんになんてことすんの!!」
そんなサチコの怒号に応えるように七人は降り立った。だが、二人はサチコとリーヤ、残り五人はシアラの方へと高台で区切るように降りたのだ。
二人の方は高台を背にニヤニヤしながら立ち止まっていたが、五人はヨロヨロとシアラに迫っていく。
迫ってくる男達にシアラは息を飲み、震える心と身体を癒すかのように、首に掛けている十字架をギュッと握りしめていた。
「な、なんなんですか?貴方達の目的は一体なんですか?」
「そんなの...決まってるじゃないですか〜。」
シアラの問いに答えた声の主はまた上におり、屋根からシアラの目の前に降り立った。その者は女性のように髪は長く、無償髭満載。ハエも集り、肌も所々黒ずみ、異臭が距離を置いていたシアラにも届き、シアラは思わず顔を顰める。
「あぁ...初めましてですよねぇ〜?俺はシアラちゃんの事はよ〜く知ってるけど、シアラちゃんは俺らのこと知らない。俺らはこの街のゴミの寄せ集めみたいな集団で〜、俺はシンドムって言うんですぅ〜。よろぴ?」
「し、シンドムさんって言うのね...私に何か用でもあるんですか?あの子は...」
「あのガキは囮ですよ〜。シアラちゃんならあんなガキ放っておけないって分かってますから。ここでお話したくて〜....そうだ!懺悔だ懺悔!!聞いてもらいたい事があるんですぅ〜。」
そんな人を小馬鹿にするようなシンドムとその後ろでヘラヘラ笑う若者、シアラの内に感じでいた怒りはそれらではなく、シンドムの言葉の中にあった。
「...何をお話するかは想像出来ませんが、子供を利用するなんて許されるとお思いですか!?この高台も貴方達の仕業でしょ?私ならまだしも、私の大切な人や子供に怪我があったらどうする気だったのですか!?」
「わぁ!怒ってる顔も綺麗だな〜。俺ら見たいな薄汚い人間には到底触れることも出来ない人だ。益々....
....取り敢えずシアラちゃん?黙って付いてこい!!」
シンドムはいきなりシアラに飛びかかってくる。獲物を襲う獣のように両手と口を大きく開け、汚く欠けている歯が顕になる。
シアラはゾッと顔の色が引き、腰を抜かしながら避けると、シンドムはシアラの後ろにあった道端の樽にぶつかる。
だが、樽にぶつかってから彼はすぐに立ち上がり、不気味な笑顔を向けると再びゆっくりと近寄り、それに続いて若者達もシアラへと向かう。
シアラの危機にサチコだけでなくリーヤも走って助けようとするが、目の前の二人は刃物を取り出して行く手を阻んだ。
「クッ...シーチャ!逃げて!後で私が探知して追いかけるから、今は逃げて!!」
その声がシアラの耳には届き、彼女はシンドム達に背を向けてひたすら奥へと消えていく。慌てて逃げていく彼女の姿を見て彼らは逆に興奮し、盛り上がりながら彼女の後を追って行く。
――アイツら...一体何の目的でシーチャを....取り敢えず暫くは大丈夫だと思うけど、私らも急がなくちゃ。でも、その前に...
リーヤはシアラが消えて行った方向からチラッとサチコの方を見る。魔力がゆっくりだが徐々に上昇していき、シアラが消えた方向をジーッと見つめながらブツブツと何か呟いていた。
――まずはサッチーを何とかしないと。このままじゃ人を殺しそうだし、シーチャの悲鳴なんか聞いたら絶対暴走して、関係ない人まで呪いを振り撒きそう。




