ラーズ達の過去③
シアラは泉から近い村へ観光で宿泊しており、その時に個性魔法・予知でラーズとリーヤの存在を知り、二人を探しにここへ来たのだった。
事の経緯を聞くと、シアラは二人を保護しようと申し込む。二人にとっては行く宛てもないので願ったり叶ったり。
あまりに親切な彼女の態度に二人は少しばかり違和感と危機感を抱くが、それも彼女と話している内にいつの間にか消えていくのだった。
村へ着くとシアラは直ぐに荷物を畳み、二人を乗せて馬車で移動。これから自分達が何処に行くのかも聞かされておらず、少しばかり嫌な予感がしていた。
そしてその予感は的中。シアラが訪れたのはゴリアム皇都、上級国民以上が住まう別世界だった。
巨大な壁を隔てる都市を見て二人はポカーンと口を開けていると、シアラは助手席の足元に隠れるよう二人に指示をする。
検問を逃れる為に隠れるのだが、上から見れば丸見え。二人はすぐに反論するが、シアラは折れずに何度も指示をする。
結局二人は折れ、見つかった時の仕打ちにビクビク震えながら隠れていると、難無く検問をクリア出来た。これもシアラの魔法によるもの。魔法でどの辺りに隠れれば検問を抜けれるか、それを事前に予知していた。
初めて訪れたゴリアム皇都。自分の住んでいた街とは比べ物にならない程栄えており、清潔感にも溢れていた。
建造物にホコリやヒビ、苔なんかは当然目につかず、外の者に見られないようにチラッと目線を向けると、近くを歩く者たちも上品で自分には一生身につけることが出来ない衣服を着ていた。
その事に目を奪われるが、自分達の生活とは天地の実態に悔しさがラーズは混み上がってくる。だが、リーヤに関しては目から光線が出るのではないかという程にキラキラしていた。
馬車が向かっていったのは白く綺麗な教会だった。周りの人に見られないように注意しながら教会へ入り、そこである一室へ移動させられる。
そこは大広間とは言わないが中々大きな一室で、そこには十人の子供達がいた。楽しそうにお喋りしたり遊んだりしており、年齢や性別、そして人間と獣人といった種族の差も気にしている様子は無かった。
「皆さん!こっちにきて下さい!集合ですよ!!」
シアラがそう呼びかけると、子供達は目を輝かせてシアラに集まっていく。新顔のリーヤとラーズはそっちのけ、皆がシアラに群がっていく。
「おかえりなさい!シアラお母さん!!旅行楽しかった?」
「えぇ、楽しかったですよ。今度機会があったら皆さんを連れて行ってあげます。あ、それとミレミちゃん?お母さんじゃなくてお姉さん、でしょ?」
「今更ミレミは言い方変えられないよシアラさん。もうそっちの方が定着してるし、逆に言い方変わったら僕心配しちゃうよ。」
「サド君の言うこともわかるんですが...このままだとお母さんの年齢になったらおばさんって言われそうで....そんなことより!皆、新しい仲間ですよ!」
シアラは笑顔で二人の背を軽く押した。一歩前に出た二人に視線が集まり、心臓がバクバクと跳ねるのが分かる。
「リーヤちゃんとラーズ君よ。歳は七歳と十一歳。ラーズ君はこの中で一番の年長者さんになるから、サド君にとっては念願のお兄ちゃんですよ。」
「本当に!?やった!!」
サドと呼ばれる小さな犬の獣人は飛び跳ねて喜び、ラーズの手を取ってギュッと握る。
「よろしくお願いします!ラーズお兄ちゃんって呼んでもいい?」
「う...うん....」
「やった!やったぁ!遂にお兄ちゃんが出来た!シアラさん、ありがと!!」
感謝を告げられたシアラは嬉しそうに微笑んだ。
サドの行動が引き金で他の子供達も二人の元へ群がっていく。ラーズは勿論、リーヤは目を丸くして困惑。普段末っ子として甘やかされていた彼女が自分より小さい子達に近付かれる。
両親を失くして訪れた急激な展開、見知らぬ新しい家族に出迎えられて二人は困惑していた。
「...シアラさん....この人達は...?」
「二人と同じ境遇ですよ。色んな理由で親と離れ離れになったり亡くしたり...そんな子供達を私は保護してるんです。無許可で外からも連れてきてるので、上級国民や兵士さんに見つかると怒られる所じゃない犯罪ですけどね。あはは。」
「...何の意味があるの....?僕達を保護しても...シアラさんは危険しか伴わない....なのになんでこんな...良くしようとしてくれるんだ....?」
ラーズの疑問に彼女は少しばかり顔を曇らせる。そしてふと、近くにいる少女の頭を撫でながら優しく微笑んだ。
「...私は子供が大好き、ただそれだけですよ。明るく可愛らしく元気で....そんな子供達が苦しんでいるのが我慢ならないんです。全員を助けることなんて出来ないけれど、少しでも手が届く子は差し伸べたいんですよ。」
「だけど...」
「それに!性別や人種、国籍も違う子供達が仲良くしている、こんな光景を見てるだけで何だか嬉しくなりませんか?
....突然の事で私を疑う気持ちは分かります。ですが、時間はかかっても構いません。前向きに、私達を信用しようとしてくれませんか?」
シアラは少し不安そうにラーズに聞いてくる。まだ彼女と出会ってから殆ど時は経っていなく、信用など程遠い。しかし、幼い彼の目には彼女が嘘をついているとは思えず、内に感じる不安を抱えつつ頭を縦に振るのだった。
教会にはシアラの他に事情を知る中年の神父が一人、そしてラーズとリーヤ含む保護されている子供達で生活している。
教会を通う信者には子供達の存在は一切知らされず、昼間は基本別室か地下の一室で過ごすこととなる。お日様の光など滅多に浴びることが出来ず、外がどんな感じなのか知る由もない。
しかし、不満はそれだけ。ラーズとリーヤが初めに感じていた不安など、教会で過ごしている内にすぐに消し飛んだ。
食事は不自由なく、ゴリアム皇国上級国民特有の豪華な料理。暮らす部屋も綺麗そのもので、足りない物も言えば持ってきてくれる。
それに自分らと同じ時間を過ごす子供達との交流、毎日同じ顔を見る筈なのに飽きる時間はない。今日はどんな話をしよう、明日はどんな事で遊ぼうか、今ではなく未来を見ることが出来る。
両親を失くした二人に神様が恵むかのように現れた第二の家族。両親の事は忘れられないし思い出すと悲しいが、そんな心を教会の生活は癒してくれた。
シアラから「この教会の保護活動を話さなければいつでも出て言っていい」と言われているが、ラーズとリーヤ、そして他の子供達も出る気など更々なかった。
この保護活動を都内でやるのは理由がある。シアラと普段生活していないと、個性魔法で予知しずらい。その上、外は犯罪者集団黒爪の餌場。都内で兵士だけを気にすればいいというのも理由にあたる。
危険と隣り合わせだが幸せな時間はあっという間、二年後のある日の事。シアラとラーズとリーヤは皇都を歩いていた。ラーズとリーヤは深くマントを被り顔や格好が目立たないようにしている。




