食材調達②
そう言いながらリーヤは落ちていた果物を拾い始め、それにサチコも続いた。迷惑をかけてしまった事実に何度もシアラは頭を下げつつ慎重に拾い上げた。
そして遂に偶然発見した宝、プラセルをシアラは手に入れた。両手で持ち上げ、リーヤはプラセルに段階魔法による保護魔法をかけて傷付きずらくさせた。
これにより万一にプラセルを落としたとしても、潰れることはなくなり、シアラはため息を吐きつつ自分の手で持っているプラセルを目を輝かせて見ていた。
「やりましたよ!これで祭りに参加する人達は大喜び間違いなしです!!」
シアラはあまりに嬉しく、ピョンピョンと子供のように跳ねていた。
――シアラさんっていつも大人っぽくて優しい人だけど、こんな無邪気な一面があるんだ。意外だし...凄く可愛いな〜。
自分を支え、正してくれた大人な女性が見せた童心的な行動。そんな姿を見ていると何だが心が温まるサチコであった。
「やったねシーチャ。じゃあ、そのプラセルはウチが預かるよ。」
「ダメですよ!これは私が見つけたんですから...私が皆をビックリさせますからね!」
「そんなこと言ってまた何処かで躓いたりぶつかるのは目に見えてるんだから。最後の最後はシーチャに預けるから、ウチが管理してた方がいいでしょ?」
反論をしようにもぐうの音も出ない。シアラは口をモゴモゴとしていたが、しばらくして渋々リーヤにプラセルを預けた。
――....リーヤちゃんとシアラさんって姉妹みたいな印象だったけど...すっかり逆転しちゃってるな〜。
「....それよりも、まさかこんな大物が採れるなんてね〜。採取出来てる野菜とか果物も少ない訳じゃないから、また祭りが出来たならこの時期にするのも良くない?」
リーヤはそう提案するのに対して、サチコは微笑みながら頷くがシアラは違った。また暗い顔をして俯いてしまい、リーヤは慌てる。
「だ、大丈夫だから心配しないでよシーチャ。ウチらの実力知ってるでしょ?そこいらの兵士になんか束で襲われても返り討ちに出来るって!シーチャってば不安がり過ぎだよ〜。」
そんな明るいリーヤの言葉にもシアラには届かない。顔を暗くし、何か苦しげな表情でサチコもリーヤも何かがおかしいと感じて不安になる。
「...シーチャ?」
改めてリーヤは彼女に話しかける。すると、今度の言葉はシアラに届き、彼女はハッとすると頬を強く叩き始めた。
「....そう、そうよね!皆さん怖いくらい強いですもの!ごめんなさいね、見えない先の未来はどうも怖くて...さぁ!続いてもっと採って行きましょう!」
そんな彼女の張り切る姿は何処か無理しているのは薄々二人は感じ取るが、口には決して出さなかった。いくら大丈夫だと悟らしても、言葉にしてるのは妄言。確実に安心させる方法など存在しないのだ。
だから二人はシアラの空元気には触れたくとも触れられなかった。
少なからず訪れる気まずい雰囲気。シアラとリーヤはその雰囲気を打開させようとはせず、口数を減らしていく。だが、ここであまり良くないサチコの性格が発動、中身が薄くても良いからこの雰囲気を何とかしようとする。
「あ、あの!ここって良く人が来るんですか?ここの食材取りに来るみたいな....」
サチコが何故か申し訳なさそうに言うと、シアラとリーヤは顔を見合せて思わず笑みが零れる。何とかしようとサチコが発言したのが伝わり、気を遣わせてしまったと二人は反省する。
「...どうだろうね〜。ウチは度々来てるけど人を見かけたことは無いな〜。まぁそもそも、ここって見つけにくいのもあるけどね。」
「そうなんだ〜。じゃあここって地元ならではの隠しスポットみたいな感じ?何かエピソードとかあったら教えて貰いたいな〜。」
少しでも戦争のことから遠ざかろうとしたサチコは二人に聞くが、シアラだけでなくリーヤまでもが少し顔を曇らせた。
「...あったら言いたいけど、特にないんだ。本当に偶然見つけれたってだけで...そもそも、ウチらここが地元じゃないんだ。」
「?へぇ〜。じゃあここから遠いの?」
「.......まぁね。」
最初は勘違いだと思っていたリーヤの顔色が段々と暗くなり、サチコはようやく地雷を踏み抜いたという事を理解する。口は災いの元という言葉がすぐに浮かび上がり、サチコは軽率な自分の発言に後悔する。
「ごめんなさい...変な事聞いて....」
「あ、謝らないでよサッチー!ごめんね?何か変な空気出しちゃって。」
「ううん...私が悪いから。二人が気にしてそうな事をズケズケと....」
事前に言わない限り、サチコに非がないのは明らか。だが、サチコは罪悪感だけ先走り、すぐに顔を曇らせては謝ってくる。自分のせいでこうなってしまったとリーヤは反省しつつ、困っていた。
「サッチーが謝る事ないのに...あ!そうだサッチー!お兄ちゃんだよ!お兄ちゃんの様子見てきて!」
「....?ラーズさんがどうしたの?」
「いや...それは....そ、そう!お魚!お兄ちゃん釣りしてるから、ちゃんと釣れてるか見てきて欲しいの!こっちは三人で結構集まったから後はウチら二人で十分!ね、シーチャ!」
リーヤは何処か苦しそうな笑顔を作って呼びかけると、ボーッとしていたシアラはハッとして、彼女と同じく違和感のある空元気を出した。
「そ、そうですね!その方がスムーズだと思いますし。サチコさん、頼んでもいいですか?」
「え?...は、はぁ....」
そんな二人のぎこちなさに疑問と不安が込み上げる。自分が余計な事を言ったせいで関係が劣化してると勘違いをサチコはしてしまう。
目が次第に潤んでいき、そんな彼女を見たリーヤは自分の頬を叩き、いつもの自分へとスイッチを切り替える。
「そんな悲しそうな顔やめてよ〜。別になんでもないって。それに〜.......お兄ちゃんといい感じの雰囲気あったら報告してね?」
リーヤは耳でボソボソとサチコに囁くと、彼女は顔を真っ赤にして両手と首を横へ振った。
「そ、そんなこと起きやしないよ!!それに私そんな興味ないって!!」
「え?本当に?お兄ちゃんに興味ないんだ〜。ふぅ〜ん?」
リーヤは目を細めながら言うと、サチコは言い過ぎたと思い、少し素直になった。
「あ、いや...でも、カッコイイ人とは思うけど....」
「マジ!?そう思ってはくれてるってことね!?ってことは脈アリ!?こんな可愛い子を落とすなんてお兄ちゃんやるな〜。」
「ち、違うって!!カッコイイとは言ったけど付き合いたいなんて一言も」
「...?お二人共どうしたんですか?ラー君が...なんなんですか?」
話の全貌が見えていないシアラは首を傾げながら聞くと、サチコはハッとしてリーヤを捕まえて耳打ちした。
「り、リーヤちゃん!シアラさんには絶対に言わないでよ!?変な誤解とか生み出したくないから!」
「分かったって。サッチーがお兄ちゃん気にしてるかどうかなんて分かってるから、変に噂流すようなことはしないって。でも、もしだよ?もしいい感じの展開きたら教えてね。」
ニヤニヤと嘘か真か分かりようのない笑みを浮かべ、サチコは彼女を疑いつつも渋々頭を縦に振った。
リーヤに自分が集めた野菜等を預け、サチコは湖へと走っていく。森林を抜けるとすぐに湖が目の前いっぱいに広がり、初めて見た時の感動を思い出す。
そして目的のラーズは湖の左端の所に座っており、サボっているわけでもなく黙々と釣りをしているのが見え、サチコは湖を沿って向かった。




