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黒の駒〜呪いで世界を平穏に〜  作者: 矢凪川 蓮
最悪の祭りの日
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新聞

 サチコが泣き止むと、シアラは手を離してハンカチを手渡された。拭いきれなかった涙を拭いていると、シアラと出会った時に似たような事があったのを思い出し、懐かしさに止まった涙が溢れた。



「グスッ....すいません、来て早々迷惑かけて...」

「大丈夫ですよサチコさん。寧ろ、半年前とあまり変わらない印象なので安心したくらいです。」

「人はそんなに劇的に変わらないですよ。でも、そう言っても私はさっきまで劇的な成長を求めてもいたんで....説得力無いですよね。あはは。」



 から笑いをするサチコに、シアラは優しく頭を撫で始めた。髪に合わせて掌でゆっくりと撫でて、目を丸くしているサチコに微笑んでいた。



「そんな事ないですよ。この世界では苦しいことに溢れています。少し見なかったうちに別人のように変わってしまう人も珍しくありません。

 新天地がどういった世界なのか詳しくは無いですが...会った時のような少し泣き虫な心優しい貴女のままで、私は心の底から安心していますよ。」

「シアラさん....」



 そんな彼女の暖かい言葉に治まりつつあった涙が溢れそうになり、サチコは顔にハンカチを押し付けていた。



「あれ!?シーチャじゃん!シーチャだよね!!?」



 背後から大声が聞こえてサチコは振り返ってみると、ギルドの食堂の窓から身を乗り出していたリーヤがいた。彼女は目を見開いてシアラを見つめ、それに応じてシアラは笑顔で手を振った。



「あ!リーヤさん!こんにちは〜!」

「うわっ!やっぱシーチャじゃん!!ちょっと待ってて!今からお兄ちゃん叩き起してくるから!!」

「いいですよリーヤさん!ラー君、寝起き悪いでしょ?無理に起こすことはないわ。」

「いいって。お兄ちゃん、逆に寝すぎってのもあるから丁度いいし。待ってて!速攻で行くから!」



 リーヤは返事を聞かずに窓を勢いよく閉める。心做しかバタバタとリーヤが走っているのが聞こえ、サチコとシアラは顔を見合わせて笑っていた。

 十分後、ようやくリーヤとラーズが外へ出てきた。



 リーヤはしっかり着替えていたが、ラーズは寝巻き用に薄い生地の服。頭もボサボサで、目も細めて欠伸をしていて眠そうにしている。


 それに対してリーヤは両手を大きく広げて走り寄り、元気にシアラに抱き着いた。



「シーチャ〜!マジで久しぶり!!」

「お久しぶりですねリーヤさん。九ヶ月ぶりでしょうかね?随分大きくなって...」

「へへ!そうでしょ!!もうちょいでシーチャ越すんじゃない!?」

「それはそうですよ。ラー君も背が大きいし、私なんて背が低いですから。...二人が大きくなっていくのは本当に嬉しいけれど、歳は上なのに身体が追い抜かれるようで何だか悔しいですね。」



 少し残念そうに悔しがるシアラに、勝ち誇るように白い歯をリーヤは見せた。



 ――リーヤちゃんとシアラさん、そんなに久しぶりに会うんだ。....結構仲良さそうだし、シアラさんだってギルドにはいないけど繋がり大きそうだから、距離が離れてるとは言っても頻繁に合ってると思ってたけど...



 そんな二人を呆然と見ていたサチコの前をラーズは通り過ぎ、ボリボリと首裏をかきながら眠そうにシアラに目線を向けた。



「シアラ....」

「あ、おはようラー君。ごめんなさいね、急に来た上に起こすようなことになって。」

「気にしなくていい...それよりも最近村にいけなくて....すまなかったな...」

「いいんですよ。ラー君が忙しいのは分かってましたし、気軽に来る距離じゃないですから。寧ろ頻繁に来るもんですから、最近心配になったくらいですよ。」



 シアラの言葉にキョトンとしながら、サチコは気になった事をすぐに二人に問いた。



「あ、あの..."頻繁に"って...ラーズさん、結構ナルテミ村へ行ってたんですか?」



 サチコの質問にすぐにリーヤは反応し、シアラの元を離れて彼女の両手を捕まえ、訴えるようにブンブンと上下に振り始める。



「そう!聞いてよサッチー!ウチはシーチャと会うの九ヶ月ぶりなのに、お兄ちゃんなんて二週間に一度はナルテミ村行ってシーチャに会ってたんだよ!?ずるくない!?」

「え!?そうなの!?」



 目を丸くして声を上げて驚くサチコと強い目力で訴えるリーヤを見て、ラーズは大きくため息を吐きこぼした。



「....まぁ、最近は行けてなかったが...リーヤ、そうやって俺を悪い者扱いはやめろ...九ヶ月前に村へ連れてってやったら全然帰ろうとしなかったじゃないか....」

「だ、だって!その時だって半年ぶりだよ!?もっと一緒にいたくなるじゃん!それに、もうしないって言ってるのにいつまでも連れてってくれないのは酷すぎるよ!」

「駄目だ...お前の我儘を聞いてあの街から村に行き....お前を村から引き離すのに三日かかった。...あんな苦労はもう御免だ....」



 必死にお願いしてもこうして跳ね返すラーズに対してリーヤは頬をふくらませて睨みつけていた。そんな彼女を横目で見つつ、サチコはラーズに問いた。



「あの〜...リーヤちゃんはともかく、私もナルテミ村に行きたかったんですけど....」

「...サチコにも声をかけようとしたが、最近忙しそうにしていたからな....予定が会いそうだったら声をかけようと思ってたところだ...」



 ――そうだったんだ。まぁ、ロアさんの教育終わってから色々慌ただしかったし、仕方がないか〜。

 でも、リーヤちゃんと同じく私もシアラさんに会いたかった。私がずっと我慢してた中、ラーズさんはシアラさんに会いに.......



 そう思うと無性に腹が立ち、若干感じた憎しみは目の色をより黒く変化させ、リーヤと同じくラーズを睨みつける。

 そんな二人の強い目線から逃げるように、ラーズは困ったように遥か彼方を見つめていた。



「ま、まぁまぁ。折角こうして会えたんですからいいじゃないですか。それにラー君が来てくれたおかげでギルドの事とか色々聞けたりするので結構助かってます。

 あ!そうだ!サチコさんに聞きたいことがあったんですよ!」

「え?わ、私に?」

「えぇ。ラー君から聞きました。入って早々大活躍だとか!そのせいか、新聞の方でも名前を見かけましたよ!」



 ――新聞?私がしたことって言えば、裏奴隷とか殺人鬼の事だろうけど、表には出ないはずだよね?もしかして、私ヘマしてこっそり見られたんじゃ!



 そう思うと溢れ出てくる冷や汗。復国軍という超秘密組織にいるにも関わらず、そんな暗躍が確認されたとなったら一大事なのはサチコでも分かっていた。



「それで聞きたいことなんですけど...



 ......."ハラキリ"ってなんですか?」



 シアラの口から飛び出したサチコにとっての地雷発言。瞬時に当時の黒歴史(オマケ三参照)が蘇り、精神的ショックが強すぎてサチコは吐血した。



「ゲボォォォォ!!!??」

「さ、サッチー!!!!」



 吐血しながら倒れ込む友にリーヤは顔を真っ青にして近付いた。リーヤの腕の中で釣り上げられた魚のようにビクンと身体を痙攣させているサチコを見て、シアラは混乱していた。



「ど、どうしたんですか!?サチコさん!大丈夫!?」

「し、シーチャ!大丈夫だから!一時的な発作みたいなもんだから!」

「びょ、病気なの!?大変!お、お医者様は!?」

「病気っていえば病気だけど...お医者さんには絶対治せないやつだから。だからいい?サッチーの前で絶対に"ハラキリ"なんて言わないように...」



 シアラに対しての忠告だが、その単語が聞こえるだけでサチコはダメージを受け、再び吐血する。



「げ、ゲボォォ!!」

「あぁ!ごめんサッチー!!大丈夫!ウチ、全部忘れたから!なんにも知らないからァァ!!」



 再度の吐血に慌てるシアラと必死に抱き着くリーヤ。二人は正にパニックになっていたが、そんな荒れた場にいるラーズはフッと思わず笑みを零す。その小さな笑いはリーヤの耳には大きく聞こえ、同様にサチコもそれに反応して復活。二人はラーズに近寄った。




「ちょっとお兄ちゃん!!マジ笑い事じゃないからね!!?」

「そうですよラーズさん!私がどれだけ傷付いているか...ご、ゴフッ!」




 また黒歴史を自爆式で思い出すが、迷惑をかけるのを恐れて吐血を抑えた結果、真顔で閉じた口から血が垂れていた、



「あぁ!サッチー!思い出さないで!!また発作が起きちゃう!!」

「いや....すまん...そんなつもりは無かったんだが....ところでシアラ...今日は急にどうしたんだ?....お前が連絡寄越さずこっちに来るのは珍しいが...」




 何気なくラーズは尋ねるが、その質問の返答はすぐには帰ってこなかった。シアラは少し顔色を暗くし、三人が彼女の様子がおかしいのを察していると、シアラは無理そうに笑顔を作った。

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