オマケ参・サチコの趣味②
「い、いや、本当に違うんだよ?ちょっとサッチーのリアクションにビックリしちゃってただけで。それにしてもサッチーこういうの好きなんだね。私、こういうの全然興味ないから読んだことないんだよね。」
リーヤの一言にサチコは目を見開き、店の本を勢いよく閉じて勢いよく叩き置く。
「え!?BLを読んだことないの!?それは勿体ないよ!!リーヤちゃん人生の八割り損してるって!!」
「いや、逆に人生八割りBLに染まってるサッチーの方が損してるよ?というか、それは商品....」
「よし!じゃあ私が指導してあげる!!リーヤちゃんにBLの良さを教えて、楽しい人生に導いてあげるよ!」
「あ、それはいいんだけど、話は後で聞くから取り敢えずここ出よ?傷付けちゃった本も買うから、外で待っててもらえる?」
このままではラチがあかないと思ったリーヤは強引に終わらせようと、サチコの手を引っ張るがそれを振り払い、サチコはリーヤの肩を掴んだ。
「ダメだよ!そんな後で後でってしてたら絶対に話すの忘れちゃうって!覚えてる内に言った方がいいの!!」
「い、いや忘れないしちゃんと聞いてあげるから。ここ店内だし迷惑...」
「関係ないよ!!?軽くでもいいから聞いてよ!絶対に逃がさないよ!?沼に落ちるまでは....うふふふ...」
まるで別人のように笑う不気味なサチコ。彼女の意外すぎる一面にドン引きしていたリーヤだが、どうしても引かない為、少しだけ付き合うことにした。
「じゃあ....手短にできる?」
「うん!!私に任せて!!」
――わぁ、凄い良い笑顔。
「じゃあ目を瞑って〜。想像力を引き立てるの!そうだな〜、身近な人がいいから...エンスさんとラーズさんを思い出して!」
「いや....実兄と変態はちょっと...」
「そんなの今は気にしないで!顔の偏差値だけに意識向けて!じゃあはい!目を瞑って〜?私の言うことを想像して〜?」
サチコはそう言いながらゆっくりと目を瞑る。凄い乗り気のサチコだが、このまま置いて帰ろうかとリーヤは思ってしまう。だが、一度言葉にしたのもあり、乗ってあげようとすると彼女はあるものを見つけてしまい固まった。
そんなリーヤに気づかず、目を瞑りながら自分が楽しめるような妄想を引き立てる。
「そうだな〜?ラーズさんは元々そんな気はないの。ノンケだから男性に興味なんてわきもせず、BLの人達の気持ちが全然分からないの。でも、エンスさんにだけは違った。」
「ちょ、ちょっと?サッチー?」
「エンスさんの裸姿を見ると、いつも胸が高鳴り、ラーズさんは不思議に思ってた。そんな困惑しているラーズさんをエンスさんは面白がって、胸のチラ見せだったり、変に顔を近づけたりして〜耳元で優しく声かけちゃったり〜?」
ノリノリでヨダレを垂らすサチコに対し、リーヤは彼女に訪れている危機が伝わらずに焦っていた。
「困惑の違和感、エンスさんに主導権を握られている苛立ち、限界を超えたラーズさんが遂に押し倒す!キャー!
突然の反撃に困惑しつつ赤らめるエンスさんを見てラーズさんも身体が火照っていくの!抑えきれない熱、それに従い本能のままに顔を近づけて...えへへへ....」
「さ、サッチー!ストップ!辞めて!」
「な、なんなの!?今凄くいい所だから邪魔し」
「.......へぇ〜、サチコちゃ〜ん。」
聞き覚えのある声が耳に飛び込んできてサチコは固まる。ゆっくりと声の方を見てみると、そこには本棚に背を預けていたエンスがいた。
「僕らをそ〜んな目で見てたんだ〜。いやらし〜。」
落雷のような衝撃はサチコの心と意識を破壊する。石化のように固まるサチコを見て更にリーヤは慌てる。
「さ、サッチー?大丈夫?エンス!あんた絶対にお兄ちゃんとか他の人に言わないでよ!?」
「大丈夫大丈夫〜、これは僕の心の中に大事にしまっとくから安心してね〜?」
「ほ、ほら!大丈夫だからサッチー!とにかくここ出よ?」
リーヤの声掛けにもサチコは応じなかったが、次第に笑い始めた。あまりのショックに壊れたように笑い始め、リーヤは心配になる。
「ふふふふふ....リーヤちゃん。新天地の伝統を教えてあげるよ。」
「え?何で今?」
「私達、新天地...日本人はね?抱えきれない罪や恥を感じたらね?こうやって刃物を用意してお腹を裂くの....
ディス・イズ・ジャパニーズサムライ!!!」
そう叫んだサチコは取り出した短刀でお腹に突き刺そうとする。予想もしてなかったサチコの行為にリーヤは小さい悲鳴をあげつつ、彼女の両手を掴んで阻止した。
「な、なにやってんのサッチー!?」
「離して!!私はもう生きていれない!!死んじゃった方がマシなんだぁ!!離してぇぇ!!」
「な、何言って...音波!」
リーヤはすかさず魔法を出し、サチコの短刀を破壊する。そして手を振り払い、折れた短刀が床に落ちる。
「はぁ....はぁ...サッチー!何やって....あれ?」
説教をしようと思ったリーヤだが、サチコはいつの間にか目の前から消えていた。周りを見渡すと、サチコが本屋から出て行くのが見え、すかさず追いかけた。
「さ、サッチー!待ってよ!」
「リーヤちゃん....武器屋どこ?...刃物はどこ?...」
「ま、まだ言って....ダメだよ!もう帰るの!!」
リーヤはサチコに抱きついて引き留めようとするが、サチコはその力に対抗して武器屋を探そうとした。
「やめてぇ!私を止めようとしないでぇ!腹切り!腹切らせてよぉ!!腹切らせてぇぇぇぇ!!!」
周りの上級国民の目線や笑い声を気にせず、サチコは商店街一帯に響き渡る声量で叫んだ。
後日、イザゼル帝国の新聞に大々的に『イザゼル帝国に下級国民・ハラキリ女現る!!』と載せられ、それを知ったサチコは三日三晩部屋に篭もりっぱなしだった。




