予言
少しばかり目を奪われ、ハッとしたサチコはすかさず質問をした。
「それじゃあ復国軍っていうのは、その戦いで生き残った人達って事ですか?」
「まぁ間違ってはないんだけどね、ちょっと違うかな〜。復国軍には元グルエル王国の者もいれば、ゴリアム皇国、イザゼル帝国の者達もいる。寧ろ後者の方が割合的には多いらしいよ。
因みに私は元グルエル王国で、ロアはイザゼル帝国出身だ」
――そうなんだ。グルエル王国を復活させる為の復国軍。確かにそれが達成出来たのなら凄い事だし、実感はハッキリと無いけどこの酷い世界にも平和が訪れる。でも多分かなり...いや、ほぼ不可能に近いと思う。二つの大きな国に対して復国軍は一組織だし....でも、ステアさんが不安そうにしている様子はないし、もしかしたら具体的な案が?
サチコはステアの顔を覗き込むようにしながら首を傾げていた。サチコの頭の中は疑念いっぱいだが、ステアからしたら何故か急に顔を難しくしてるので不気味でしか無かった。
「な、なんだいサチコ.......あ!そっかそっか!!そういえば言ってなかったね復国軍の仕事について」
「へ?....あ!は、はい!教えて貰えると有難いです!」
――わ、私もすっかり忘れてた〜。
「まぁ復国軍の仕事はそのまんまでグルエル王国の復活。正直私も復国軍がどんな組織形態でどんな部隊があるのかすら分からないんだ。だけどサチコはそんなに難しく考えなくていいよ。
私らは簡単に言えば戦闘部隊さ。だから力をつけることだけに取り敢えず集中すればいいのさ」
「せ、戦闘ですか!?その....私そんなに運動神経良くないし、皆さんの足を引っ張っちゃうんじゃ...」
「何言ってんだいサチコ、その為の教育だろ?大丈夫、ロアはあ〜んな奴だけど腕は確かだ。信頼していいと思うよ」
ステアはケラケラ笑いながらサチコの背中を何度も叩いた。男のような慣れない対応に困惑するのは勿論、ロアとの教育が頭の中を駆け巡り、苦労するしかない未来にサチコのテンションはただ下がっていた。
「元気だしなよサチコ〜。あ、そうだサチコ。私からも聞きたい話があるんだよ。サチコ、"自分と共通性のある三人"って聞かれたら想像つく?」
「...へ?」
サチコは質問の意味が分からず頭がショートする。何か言い出す訳もなく、ただ困惑するサチコを見てステアは察した。
「ん〜....変な質問して悪かったね。私らも今回の"予言"のケースは初めてなもんだから手探り状態なんだ」
「...予言?どういう事ですか?」
「え?シアラから何にも説明されてないの?」
サチコはナルテミ村での一ヶ月を思い出すが、そんなことを言われた覚えがなく、戸惑いながらも頷くとステアは自分のおでこを叩いた。
「シアラ....変なとこでポンコツ出すんだから全く....
えっとね、それを説明するならシアラの個性魔法の説明から入るよ。
シアラの魔法は未来予知。未来を予知したり予言できる魔法なんだ」
「そうなんですか...そんなの知らなかったです....」
「まぁ予言って言われて困ってるの見てるとそうっぽいね。サチコとシアラ達が出会ったのは偶然じゃない、シアラの魔法によるもんだ。つまり、シアラは前もって予言していたんだ。
でも、サチコだと認識した上じゃない。私らも憶測とかで動くしか無かった。....その時の予言の内容は確か...」
『東西南北の四箇所にそれぞれ人が降り立つ。時に世界を壊し、時に世界を救う事が可能なこの者ら。それは希望となるか絶望となるか....予期出来ぬものなり』
「東西南北に...四人....?」
「そうなんだ。だから、サチコと同じような奴...仲間みたいなやつとか想像つかない?」
サチコは自分の記憶をたどってみるが、自分の味方になってくれる人間は当たり前のように浮き出てはこなかった。
――私の周りは敵ばっかりだった。もし、私に関連するというなら、自殺...あの時、私と同じタイミングで自殺した人達なのかもしれない。それか..........
「...ゴメンなさい。どんな人かとか詳しいことは全く...あの、シアラさんの魔法でその三人がどんな人か占えないんですか?」
「う〜ん、出来なくはないけど...シアラも村や私達復国軍、自分自身に降り掛かる脅威みたいなのを定期的に見てくれてて余裕が無いんだ。
それにそいつら探すってなっても全く接点ない人間だから、詳しい情報引っ張るってなったら大量の魔力と体力消耗、最悪命を落としかねない」
――そうなんだ。便利そうと思ったけど、結構リスクあるんだ。
....シアラさんは何で黙ってたのかな?本当にうっかりしてたのかな?...もしかしたら、その魔法で私にどんなこと言えばいいかとか...
サチコは思いもよらずそんな事を考えてしまう。少しでも疑ってしまうとそこからは止まらず、疑惑と不安の沼にズブズブと入っていく。
そしてもしシアラがそういう行動を取っていたら、シアラの本心と信じていた行動や言動は嘘へと変わっていく。
"信用したい"と強く思っていた分、その嘘がどれほど自分を傷付けるのか、憶測だけで容易に想像つく。
「ん?どうしたサチコ?馬車酔いした?」
「い、いえ....あの....シアラさんって魔法使ってたんですかね?私との生活で...会話で....」
「う〜ん。まぁ、定期的な予知もしてるからサチコ滞在中にも魔法は使ってるからね。そのついでにサチコについて予知してたってそれは本人しか知らないけど...」
ハッキリと否定して欲しかった、そんな微かな希望は打ち砕かれていく。頭では納得できる余地があるのは分かっているが、悲しい気持ちが押し寄せてくる。
すると次の瞬間、サチコは妙な違和感を感じて顔を上げた。目を見開いてその違和感の方を見ると、違和感はロアから漂っていた。人の目線を感じるとか殺意が伝わるという感覚的なものに似ている何かを。
すると前を見ていたロアは半分だけコチラを向き、右腕を見せた。
ロアの右腕はピカピカと光沢ある銀色の金属だった。しかもそれだけでなく、腕の皮膚に位置する金属部分が横へ開いたり縦に伸びたりと変形し、内部の骨の位置するところも金属。そして小さく機械音も聞こえてくる。
「....魔力を感じ取れるくらいは出来るようですね。取り敢えず、赤ん坊を教育するよりかは楽で助かります」
ロアはそんな事を言うと、右腕の金属が動き出し、普通の右腕の形に戻ると肌色へと変化していった。
まくり上げていた右腕部分の服を元に戻し、外していたグローブを装着すると何事も無かったように再び前を向く。
「い、今のは...」
「今のがロアの個性魔法。んで、サチコが反応したのはロアの魔力だ。ロア、ありがとね」
「礼の必要はありません。ただ、我々の仲間に対する侮辱同等の疑念を晴らしたかっただけです」
ロアの素っ気ない対応にステアはフッと笑みを零し、新しい煙草に火をつける。
「まぁ、ハッキリと否定してなかった私も悪いな。
サチコ、シアラに限ってサチコが考えるようなことはしないよ。シアラは前から人との接し合いに魔法は使わないんだ。理由を聞いたら」
『本心ではない言葉や行動は何かしらの形で明るみになったり相手に伝わります。それに、私は魔法に頼らない言葉が一番人に伝わると思っています。
魔法がどんな完璧な答えを出そうと、私は....自分の想いを人にぶつけるだけです』
「...そんな事を....」
「馬鹿だよな〜。そんなの気にせず魔法をバンバン使えば、人の悩みぶつけられて四六時中自分が悩むことなんてないのに。
それに、シアラの予知はそんな万能じゃない。サチコが言ってきた一言一言を魔法というマニュアルで対応しようとしたら、ロアに感じた違和感、魔力を馬鹿みたいに感じるはずだよ」
ステアは笑いながらそんなことを言ってくれた。サチコはその言葉に心底ホッとした。
「...良かったです、本当に....」
「うん、私もシアラが嫌われなくて良かったよ。じゃあ堅苦しい話は無しだ!!サチコ!新天地の話をしてよ!!」
「え?新天地って...」
「サチコの過去話じゃなくていい、お前の国はどんな国だったんだ?どんな世界が広がっていた?ロア、いいかな?」
ステアはまるで元気な子供のようになり、ロアに話を振ると、ロアは再び身体半分向けてサチコをジッと見詰める。
「.......まだまだ時間がかかりますので暇潰しに良いと思います。お二人でどうぞ、私はこちらで一人集中しますので。非常事態には何かしら合図の方をよろしくお願いします」
ロアはそう言うと、すぐ後ろに設置してある木の扉をバタンと閉めた。
そんなロアの行動をステアは暗い顔で見つめていた。
「まぁ...そうだよね....よし!ねぇ、サチコお願い!!教えてくれない?」
ステアの一瞬見した暗い顔が気掛かりに感じていたサチコだったが、ステアの切り替えと勢いに押し負け、動揺しながらも話し始めた。




