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復国軍の源

 馬車が動き出し、しばらくサチコは必死に感情を押さえ込んで重く静かな空間を耐えていると、ステアはポケットから煙草を取り出した。



 ――あ、煙草...獣人の人も煙草とか吸ったりするんだ。


 現代と同じような白くて薄い煙草、ステアは煙草を口に咥え込むと興味深く見ていたサチコの目線に気が付き目を合わせる。



 「あ、煙草吸っていい?」

 「え?あ、はい。私は大丈夫です」

 「ありがとう〜。サチコも吸う?」

 「そ、そんな.....私まだ未成年ですし...」



 ステアが差し出してきた煙草の箱をサチコは両手で断ると、ステアは「ふ〜ん。」とだけ言い、箱をしまって銀色の器具を取り出し、それで火をつけた。



 「フ〜.......サチコって未成年なんだ〜。私の勘だと成人と思ったんだけど、何歳?」

 「えっと...十七歳です」

 「ん?あぁ〜新天地じゃそうなんだ〜。私らの世界だと十七歳から成人なんだ。まぁもし気が変わったら言ってくれれば上手い煙草を教えてあげる」



 ――あ、確か本に載ってたような気がする...この世界の成人は十七歳だったっけ...


 教会で読んだ本の内容を思い返していると、ロアが後ろを振り向いてサチコをジーッと見詰め、サチコは思わず唾を飲み込んだ。




 「吸えるか吸えないかも分からないのに人の好意を踏み躙るのはどうなんですか?新天地の方々はそういう人の集まりなんですか?」



 嫌味混じりのその言葉はサチコの心臓をキューッと締め付け、自然と目を逸らさせた。するとその発言には気が触ったのか、ステアが声を荒らげた。



 「ロア!いい加減にしなって。態々そんな言い方しなくたっていいじゃん」

 「そうかもしれませんが、ステア様は今回の件は担当外です。現責任者は私です、故にステア様が口を挟める立場にはないかと」

 「責任者だからって全部の権利を持ってるわけじゃないでしょ?それに、今は送迎。アンタの任務はギルド内対象でしょ?」




 二人のバチバチとした口論にサチコはどうしていいか分からず、ただ黙り込んでいた。自分がいるせいで二人が口喧嘩していると考えると、今にも泣きそうな心境だった。


 ロアはジッと無表情でステアを見詰め、ステアも負けじと少し目を細めて目線を外さなかった。



 「.......確かにそうですね。わかりました、少し口を慎むことにします」

 「ん、ありがとうロア。じゃあ、ロアが喋れない内にお姉さんが色々喋っちゃおっかぁ〜。

 サチコは何か聞きたいこととかある?」



 話を振られたサチコは泣くことを耐えることに集中していた為、咄嗟に反応出来ず、真っ白の頭で考えた。



 「え、えっと...さ、さっき言ってた責任者って....」

 「あぁ〜。それはサチコの教育者ってことだね。サチコはまだ魔法どころかこの世界に慣れてないだろ?いきなり現場放り込んだらあっという間にお陀仏だから、それの教育。

 因みにその教育担当はロア、サチコが立派になるまでマンツーマンってこと」

 「え!!??本当ですか!?えっと...それって....」

 「ん〜まぁ言いたいことは分かるんだけど、私らも普段の仕事あるし。色々事情があってそうするしかないっていうか...まぁ、何とかなるでしょ!

 さぁ!他他!何かない!?」



 ステアが明るく質問を促すおかげで絶望的な気分に陥るのは何とか回避出来た。ただ質問を考えている間にもそれはチラつき、その度に泣きそうになって頭が時々真っ白になる。



 「...えっと....ふ、復国軍ってどんな活動してるんですか?その...私、建築技術なんか分からなくて....」

「あれ?バルガードから話は聞いてないの?サチコ、そんなんで良く入ろうと思ったね」

「ぐ、具体的な活動は全く分からなかったですけど、バルガードさんとかいい人そうだし、何より人の為に動くような感じがして....私、人を助けて尊敬されるような強い人間に生まれ変わりたくて」

「ふ〜ん。ま、目標持って活動すんのはいい事だ。頑張りなよ〜。

 それで...復国軍の仕事か〜。サチコは新天地出身なんだろ?バルガードが善人ぽく見えたってだけの理由じゃあ、私達が復活させようとしてるグルエル王国についても知らない?」




 そんなステアの問いにサチコは頷いた。無くなりかけた煙草をステアは口元に補充、新たな一本を味わいながらステアは語り始めた。



 ――――――――――――――――――――――



 この世界は永らく二つの巨大国家、ゴリアム皇国とイザゼル帝国によって支配されてきた。地平線まである果てしない海に囲まれたこの島を丁度半分づつ分け合うように領地があり、それぞれの領地で差別的な政策を行う。

 互いが互いに今の現状に満足せず、更に多くの土地と奴隷たる人間を欲していた。だが二つの国家がした事と言えば睨み合いだ。小さな衝突、小規模な問題にはなったりするが、お互い本気で攻め落とそうとはしない。


 その理由は相手が強国だからだ。負ければ折角築き上げた地位を丸ごと失い、その上酷い見せしめの後に殺されるのは確定。仮にその場を逃げれたとしても、二つの国が合わさったらこの世界はその国の者。つまり世界そのものが追手となる形、いずれ捕まるのは目に見える。


 ゴリアム皇国の上級国民以上は贅沢という沼にドップリと浸かり、そんな極貧の生活は死んでも嫌。

 イザゼル帝国という実力主義は攻めたいのは山々だが、相手は力をねじ伏せる技術が豊富。だから攻めれない。


 睨み合いし続ける状態がこの二カ国誕生から永遠と続いている。故に下級国民達には何も転機は起きず、ただただ理不尽かつ貧困生活を余儀なくされている。


 そんな状況を打破しようと何人もの革命人が腰を上げたが、その全てが二カ国の武力と政力、圧力により無様に潰された。国に反逆した行為は一族皆殺し、次第に立ち上がるものは恐怖によって消えていく。


 しかしそこで一人の革命人が立ち上がる。名はグルエル。彼は密かに自分と同じ意思の者達をかき集め、一つの王国を設立させた。

 自分の名を付けたグルエル王国。しかし王国と言っても、そんな大層な物は作れていない。二つの国にバレないように人員も建設もコソコソやっており、二カ国から離れた海沿い近くに設立させた砦のような物だ。



 この王国の建設目的は弱者達の安寧、弱き民同士慎ましく協力しながら生きていくという小さな民主主義の国だ。故に下級国民として苦しんできた民達は続々とこの王国へ足を運ぶ。

 王国設立後、民の募集を大体的にしてから一組織程度の人数から大観衆へと変わった。凡そ十万以上の民が故郷を捨ててグルエル王国へ移住する。


 砦から立派な城にする為の人員も急増。新たな国作り、幸せな未来が見える現実、グルエル王国に属した者達は王国の理想通り、協力し合って笑顔が溢れる環境になっていく。



 しかしこの状況を二カ国は面白くないのは当然だ。グルエル王国を敵対視し、王国に属そう者らを処刑にする行動を取り始める。そして兵士を送り、嫌がらせや解散の命令を発令したりする。


 グルエルはすぐに行動に出た。二カ国に向かい、王国の狙いと敵対の意思はないと面と向かって言葉にした。「我々は敵対心などない」「細々と弱者同士で手と手を取り合い平和に生きていたいだけ。」「我々の得た金と食料を二割納めさせて頂く。」「だからどうかそっとしておいて欲しい。」



 しかし二カ国は共にその要求に答えず、逆に二カ国同士同盟を結び、グルエル王国を滅ぼす為に共同戦線をとった。



 二カ国の軍勢がグルエル王国を襲い、彼らは必死に抵抗した。

 地の利、卑しい策略、幸せな明日を守るという士気の高さ、それらが結んだ結果なのかグルエル王国は善戦した。しかし結局は二カ国の力に呑まれ、この王国は滅んだ。



 ――――――――――――――――――――――



「...巨大な軍勢に王国は潰れたけど、殆どの人は生き残った。結構な下級国民があの王国に属してたからね、精算するのも一苦労。よってグルエル含む重役の処刑だけでこの話は終わり。王国に属してた者を記録し、反逆の意思やちょっとした犯罪でも犯したら速攻拷問の末に処刑。誰も立ち上がろうとしない。

 ....だけど、夢を見る馬鹿がまだ居たんだ。あの王国が目指していた未来を見る為に立ち上がる奴らがね」



 ステアは外の景色を眺めてながら嬉しそうに呟いた。外から差し込んでくる光は彼女をスポットライトのように照らし、その表情と煙草の煙が上手く合わり、綺麗だとサチコは感じた。

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