〜 プロムナード 〜
こうして──ひとつの危機を乗り越え、大きな秘密を共有した私たちの関係は、一つ別のステージに変化していったように思う。
この日を境に、私の魔法屋アンティークでのアルバイト生活は、一見順調に軌道に乗っていった──かのように思えた。
実際、魔法屋のアルバイトの日々は本当に楽しかった。
家に帰るのが惜しいくらいだった。
少しずつ馴染みの人たちも増えていき、仕事も順調にこなせるようになっていった。
なにより、ティーナやバレンシアと一緒に困難を突破して、大きな秘密を共有できたことが嬉しくて仕方なかった。
私はティーナの秘密を知り、無邪気に喜んだ。
なによりも深い絆ができたのだと──このときの私は錯覚していたのだ。
だけど、私は何も知らなかった。
知らな過ぎた。
やっぱり私は世間知らずの、単なる甘ちゃんでしかなかったのだ。
私は──すぐに思い知らされることになる。
人の心の奥に渦巻く、どす黒い感情を。
ティーナの──無表情の奥に隠された、本当の秘密を。
なにより私は、自分自身のことすら何も分かっていなかったのだ。
眼の前に容赦なく突きつけられる、逃れようのない現実を前に──綿菓子のように甘い私の認識は、徹底的に破壊されることになる。
でもそれは、絶望や悲しみへの道筋ではなかった。
私が、私であり続けるために必要な──茨の道なのだ。
なにより──私が探し続けていた本当の『答え』は、その道の先にこそ存在していたのだから。
全ての道が舗装されて歩きやすい訳じゃない。
未舗装の道だって、歩きにくい道だってある。
それでも私が自分で選択して、選んだ道であるなら──。




