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ペダル  作者: 宇田川つむぎ
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なんでもある家族

 



 面倒だった。誰かのために叱るのも、誰かのためにわざと笑うのも、誰かのために自分を削るのも。誰かのために。この言葉だけでずっしりと重かった。結局私は頬杖をついて、ぼーっと、なんとなく眺めているだけだった。だからそれだから静かに生きていた。植物人間のように。だけど認められたくて、誰かに必要とされたかった、そうだった。今考えればそんなのは欲しがり過ぎだった。一緒にいて楽しいと思える友達もいた。わからないけど愛されてるっていう感覚が大きくて申し訳なかった。私を好きでいてくれる存在がいる、それがまるで他人のことのようだった。楽しかったけど、その分悩んだし辛くなった。今はただ忘れたい。こうやって自分語りをするときはいつだって自分じゃない誰かだった。自分の裏側に誰かがいて、そいつが、こう言えと指示してる。モゾモゾして、なんだろう、きもちわるい。でもそれが楽だしそれで良かったと、思う。こんなことしたって満たされないのに、かえって自分の価値を探してしまう。文字に起こす必要なんてないのにこの文章のどこかに才能があって誰かが認めてくれてあなたはすごい人なんだって、言われたい。こうしていても、自分でもわかるのに、なんだなんでやめられないんだろう




 真っ黄色の電気に照らされたリビング。最近変えたばかりでまだ少しだけ違和感のある光、呼吸を浅くして勢いでシャーペンを動かす。後ろから誰か近づいてくる音がして、思わず手でノートを隠す、が何事もなく通り過ぎる。自意識過剰もいいところ、世の中に少なからず期待をもっている自分がいる。


 倉井はそそくさと片付けを始める、散らばったルーズリーフ、お気に入りのシャーペン、真っ黒な消しカス、急にさっぱりして、もとから何もなかったかのように振る舞う白い机が違和感だった。黄色い光が反射してやけに眩しい。パチリとリビングの電気を消しソファーにダイブ。馬鹿馬鹿しい文章だったな、書くのやめてよかった、心から思った。変に書き続けていたら、ダラダラと推しの配信なんて見れていなかった。きっぱりとやめてやろう、そういう覚悟ができるようになった。嘘。覚悟がないから動けやしないのに。


 とりあえず、さっきのノートは捨てよう、新しい覚悟が生まれた。

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