エピローグ
サラスはレインの希望もあり、カスト達の三人で光魔を撃退したと町の皆に伝えた。セトの存在や、ジーンの事を話すと余計な心配をかけてしまうとの判断だった。
レイン達はギルドの紹介で町一番の宿屋に泊まっていた。そこで話し合った結果、ジーンはセトが再び襲ってくることを考慮し、最も安全なレイン達の旅に同行することになった。これは本人の希望もありすんなりと決まった。
「まさか子供じゃなくて、愛人を作るなんてさすがのお母さんも想像出来なかったわ」
ミトのその言葉にカストは同意し、フウは否定をジーンはお義母様と呼び喜んでいた。そしてレインはと言うと、その場にいるだけで面倒くさい事になると思いその場を離れ、バルコニーに出て月を見ていた。
(終わったか・・・何度死を覚悟したか分からないな。傀儡化にされたときはフウを傷つける事になって辛かったし、ジーンの首輪に関しては触れてからの記憶がないからなぁ。気付いたら外れていて、ジーンの傷も治っていたし・・・俺は一体何者なんだ?)
それから一週間後。レイン達三人はセト撃退した翌日に帰ったカスト達が自分たちは何もしていないからと受け取らなかった、特別報奨金を貰っていた。レインは光魔は撃退をしていないからと初めは受け取らなかったが、ジーンの力の暴走を最小限に留めた為、それに該当すると言われ押し付けられる形で受け取った。
「じゃあ、そろそろ次の町に行くか」
宿屋に戻ったレインのその言葉にフウとジーンは、身支度を整え三人は宿を後にした。三人の旅の最優先事項は変わらず「石巫女達の開放」である。そもそも何故フウの石化が解けたのか?それすら当人たちにもさっぱり分かっておらず、石巫女の存在を知っている者ですら一部だけという事を考えれば、まさに雲を掴むような話だった。魔族であるジーンに聞いてみたが、全く聞いたことが無いらしく、どうやら人間だけでなく魔族ですら知るものは少ないみたいだとレインとフウは少し落ち込みはしたがすぐさま立ち直り、それなら諦めずに進めばいつか答えに辿り着くさ。と明るく歩き出した。
「ねえレイン。もう疲れたー」
「まだ町を出て一時間ぐらいし経ってないぞ?ほら頑張れジーン」
「やーだー。おんぶしてくれなきゃ動けないー」
道端に座り込み駄々をこねるジーンを、しょうがないなぁと屈もうとしたレインを手で制しジーンの前にフウは笑顔でしゃがみ込んだ。
「これぐらいで疲れたんだったら、町に戻る?むしろ町で一人で暮らす?」
「あははは。やだなぁフウったら、冗談に決まってるじゃん」
とジーンは立ち上がり「しゅっぱーつ」と元気に歩き出した。
「何だったの?」
呆気にとられるレインにフウは一言。
「レインに甘えたいだけだから、甘やかさなくて良いわ」
と言い、ジーンに近づいた。
「ねえジーン。レインがセトと戦っている時にレインの事セトって言いかけたよね?あれは何?」
フウはレインに聞こえないようにそう小声で聞いた。
「あれは聖魔様って言いかけたんだけど、違うかもしれないからレインって言い換えたの。紛らわしかったよね?ごめんね?」
「その聖魔様って何?」
「聖魔様って言うのはね」
「おーい。こそこそ話すのも良いけど、ちゃんと前見て歩けよー」
「レインに叱られちゃった。続きは後でね」
ジーンはフウにそう言い、後方を歩くレインに駆け寄った。
「ごめんなさいレイン。今度からあなただけを見ているからね」
とジーンはレインに抱き付いた。
「だ・か・ら抱き付くなー!」
「魔物が襲ってきたー」
「誰が魔物よ!こらっ、待ちなさい!」
ジーンを追いかけるフウを微笑ましく見てから、レインは空を仰いだ。
(いい天気だなぁ。石巫女達の開放が一日でも早く出来るように頑張らなきゃな)
「まぁ。まだ旅は始まったばかりだし、今はこの時を楽しむか」
レインは誰に言うでもなくそう呟いた。
「ほら、遊んでないで先へ進むぞ」
待ってよーと言う二人の声を背にレインは未だ見ぬ場所へと歩を進めた。
久々に書き始めて、やっと完結しました。読んで頂きありがとうございます。またの作品でお会いしましょう。