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1話 元異世界の勇者は、トラックにひかれたい

まえがき


高校生になる前の春休み。

望月悠は、この中学生でも高校生でもない中途半端な時期に信号無視のトラックにぶつかられて死亡。そして運よく異世界転生した。

そこで、転生時に神様から与えられたチート能力を駆使し仲間と共に盛大な冒険ファンタジーを繰り広げたのち、その地にはびこる魔王による侵略から世界を救ったのだった。そうして俺は平和になった異世界で仲間とともに面白おかしく幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし・・・・・・


とはいかないのが現実である。


異世界を救ったのち俺は神様から褒美として元の世界に転生。いわば逆転生させられてしまう。

こうして俺の異世界でのハッピーエンドは雲散霧消。トラック事故にあったものの奇跡的に大きなけがもなく生き残れたところから、俺の高校青春物語がスタート。


したもののそんなものはあっという間に終わり、3年の月日が流れ現在に至る。

 1話 元異世界の勇者は、トラックにひかれたい


 大学生になる前の春休み。

 高校生でも大学生でもない中途半端な時期。だが、3年前のようにぶつかってくれるトラックはいない。

 ぶつかりたいわけではないけど。痛いし。

 高校生活では特に目立つこともなかった。みんなと同じ制服を着て、みんなと同じように部活と勉学に励み、みんなと同じように行事を楽しんだ。

 俺の高校はその地域のなかでそこそこ賢いレベルの進学校。いわゆる自称進学校だったため、進路希望調査では進学にレ点をつけることがテンプレ。そこでもまたみんなと同じように大学受験。高望みした第一志望には受からず第二志望に進学した。

 この世界ではこうやって無難に生きていくことが正しい。とされている気がする。出る杭は打たれる。変わり者ぞろいの異世界とは違う。俺は高校に入ってすぐにそれを理解しモブキャラのように生きてきた。俺が救った異世界とは違う。あの世界にもう戻ることなんてない。あれは夢だった。と何度も言い聞かせた。

 そしてこの春、俺を出迎える大学は1000人にも届くほどの新入生を迎えるらしい。果たして望月悠にどんなキャンパスライフを用意しているのだろうか。1000人の中のモブの一人としてうまく馴染めるだろうか。俺の心の中で期待と不安が渦を巻く。


「気分転換に外でも出ようかな。」

 思えば春休み。特にやることもなく家にこもりがちだった。数日ぶりに外行き用のパーカーを羽織った。

 外に出て久々に吸った春先の空気はまだ少し肌寒い。もう引き返したくなる。特に用事もないから余計に。ただせっかく外に出たし何かしたい。とりあえず最寄のコンビニまで足を運ぶことにした。

「いらっしゃいませー」

 自動ドアが開き入店音がなると条件反射で若い大学生くらいの店員が声を出す。この店員も俺と同じ。コンビニ店員というモブに上手くなりきることでお金を稼いでいる。異世界では考えられない。人柄を示して愛されてこその商売人だ。やたら恩着せがましく高値ふっかけてきた武器屋の旦那の顔が思い浮かぶ。今思えばいい思い出だ。

 そんな考え事をしながら適当にスナック菓子を手に取り会計に向かう。

「1点で110円です。」

「ああ。トラックにひかれたい。」

「はい?」

「あ」

 やってしまった。異世界から戻った時からどうしても抜けない癖。トラックにはねられるのが異世界転生へのトリガーだと神様は言っていた。冗談としか思えない。だがそれでも、またトラックにひかれれば。と考えてしまう。異世界に置いてきた仲間、地位、名声、ハッピーエンド。ああ、なんて人間とは愚かな生き物なんだ・・・・・・


「ありがとうございましたー」

 会計を済ませて再び自動ドアをくぐるまでコンビニモブの視線を背中に感じていた。

 大学では絶対に気をつけないと。高校での二の舞は勘弁だ。絶対。


 家までの帰り道。行きと何の代わりもなく肌寒い。早く帰ろう。と足を速める。

 そのとき一人の少女とすれ違った。白いワンピースが似合っている。ほんの少し目線が吸い寄せられた。そして少女と目が合った気がする。慌てて目をそらしてすれ違おうとした。

 まだ少女の目線を感じる。めっちゃこっちを見ている。なぜ。

 少女の視線が離れるまで時の流れがすこし遅くなったような感覚がした。視界の端に映る少女の表情は、何か言いたげだった。

 気のせいだ。ここは異世界じゃない。異世界じゃこんな些細な事がきっかけで背中を守り合える仲間ができることもあった。だがここは現実。さっきコンビニでのアレと言い異世界に思考を染められてすぎている。

「ああ。トラックにひかれたい!!」

 声に出すことで発散しようと思った。がここが外であること、思いのほか大きい声が出たことに急に我に返った。あたりを見回す。右、左、後ろ・・・セーフ。

 大学生活への期待と不安で揺れていた悠の心は外出によって不安に向けて大きく傾いていった。

 明日は入学式だ。


元異世界転生主人公である望月悠の大学生生活を描く「異世界救った俺なら余裕でリア充できますか?(仮題)」

ここから始まります。

あとがき


いよいよ大学に初登校することになる望月悠。果たしてトラックにひかれたい欲を抑えられるのでしょうか。

また、私自身なろうに小説を載せるのは初めてです。

慣れない部分も多々ありますが、自分のペースで続けていこうと思います。よろしくお願いします。

誤字脱字報告、コメント、評価などなどお待ちしております。


2話「元異世界勇者は入学式攻略したい」

来週4/20(月)投稿予定です。

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