千里の眼
───すごく懐かしい夢を観た。
その日は確か穏やかな風が吹いていて、雲ひとつ無い快晴だった。
まだ幼かった頃の自分をあやす姉と母。
皆笑っていて何か良くも分からずに嬉しくなって僕も笑っていた。
仕事で忙しかった父が僕等家族をドライブに連れて行ってくれて、大きな湖を見に行ったんだっけ。
その湖はとても大きくて、手の届かないところまで真っ青で小さな頃の僕はそれが永遠にも感じて、いつまでも眺めていたら母に心配されたのを覚えている。
沢山走り回って、はしゃいで、
すごく疲れた僕はその後ぐっすり眠ってしまって………
あれ、この後、どうしたんだっけ。
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瞼の裏が激しく照る。
つい先日体験した物とは似て非なるもので太陽を直視したように、その閃光は眩くイガイガしかった。
此度の意識の覚醒は一瞬だ。眠りは浅く、先日とは比にならない程の光量に目を焼かれそうになる。偶に陰りまた明るくなりとそういうのが六回程過ぎた時には眼球の内側が熱くなり始めた
異常な事が起こっている。それは明らかなのだけど身体が言うことを聞かない。首の下から足の指先まで眠ったように動かない。
今、亜堂センリに出来るのはその重たい瞼を開ける事だけであった。
瞼を持ち上げる、目がシャバシャバして瞬きを繰り返す内に瞳が慣れ始めて視界がインスタントカメラで現像された写真のように景色を写す。
まずは凄く青くて、偶に白いモヤみたいなのがヒンヤリとした。次に俯くとカラフルな人工物、空気が澄んでいて遠くまで鮮明に見える。
青いのは空、カラフルなのは屋根、ゴウゴウと風の切る音が耳を掠めて止まない。地平線に沈む太陽が凄く綺麗で綺麗で、綺麗で……脳がパンクする。
「もうヤダァァァァァァァァァッ!!!」。
大陸レディアントが北北東、人都レイザール上空400メートル、初速度不明、重力加速度を受けて落下中。