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プロローグ
眼を焼いた逆光、唐突に襲うフラッシュライトに思わず目を覆う。
瞼の裏が薄ら紅く照る、それはつい先程まで月も無い新月の夜にはおよそ起こり得ない現象であった。
視力以外の五感でおよそ感じ取れる事は自らが地べたに尻を付けていることと己の眼前に大きな空間が広がっているであろう事そして、ガヤガヤと聞こえる大多数の人間の声。
光に徐々に馴れ初め、ボヤケた視界が鮮明になり始める。
意識が覚醒すると同時に眼前の情報が脳みそを巡る。
大きな講堂、地を照らす自然の光、ヒンヤリと冷たい大理石の床、その空間に身を置く事に分不相応である己の格好。
特に顔の見えない者たちの刺さるような視線。右も左も後ろも上も、面白おかしな珍生物でも見るかの様な好気な目。ある者はワイン片手のタキシード、ある者は紅茶を啜るドレス姿のマダム。
刺さる、刺さる刺さる、吐き気を催す程の他人の視線が、皮膚を透き通り内蔵でも逆撫でされてるかの様な歪な感覚が。
その時、俺───亜堂 千里は数百の聴衆群がる城の中─────嘔吐する。