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時空を超えた想いを繋ぐ使者たち  作者: さかき原枝都は
ファーストステップ・バイオマシン
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Code name・YURIKA コードネーム・ユリカ

 二千六十五年、人類は人体を「ゼプト・十のマイナス二十一乗」にまで細分化し、その情報を電子化情報に変換することに成功した。


 つまり、人の体を目に見えない、いや原子レベルに及ぶサイズまで小さく切り刻み、それを電子化つまりプログラムとしてデータ化することに成功していたのだ。実際に細分された体は、その破片ごとにマーキングをし原子レベルにまとめられる。


 その一つ一つを、更に圧縮することにも成功している。

 最終的に、およそ成人ほどの体が薬のカプセル位までに圧縮される。

 

 この十五年前。二千五十年に、人体電子化基本パターンとした研究が始まる。その三年後の二千五十三年、プロトタイプの基本設定が完成した。

 だが、この研究は、二つのプロジェクトに分割された。

 人体を原子レベルまで細分化するプロジェクトと、人間を作り上げると言う真逆のプロジェクトに。

 後者のプロジェクトはまさに難問だった。

 新たなる人類を創りあげる。神の領域に及ぶ研究をするというのだ。 

   

 当初この研究に携わった人数は5人だったと言われている。その後、第二世代の研究員がこの研究を受け継いだ。十七年という歳月を経て。

 人体細分化プロジェクトに遅れること五年。

 十七年後の二千七十年、人体電子化基本パターンから実際の人としての構造パターンの作成と、被検体人格の作成プログラムがようやく始まった。

  

 プロトタイプ一号、コードネーム『YURIKA・ユリカ』そう女性の設定だった。 

 

 ユリカは多くの人体パターン情報の塊だ。白人、黒人、黄色人種、男性、女性、子供、大人、老人、ありとあらゆる情報を組み込まれている。だが、現在を生きる彼女の年齢は十八歳だ。

 実際の体は今は無い、だが後にユリカは実態の体に移行される予定だ。それを踏まえ、彼女の体をデザインする、ボディデザイナーがユリカの体をデザインする。


 彼の仕事は、ユリカの今の体を単にデザインするだけだはない。

 彼女が母体の中で受精し、細胞分裂を繰り返し脊髄が形成される処から始まる。母体の中での胎児の生育状態を設定し、どのような出産をしたか、出産後の育児状況など、まさに受精時から設定デザインが行われる。


 ボディデザイナーは、医学的に幼児期の成長を設定する。そして、その後は心理デザイナーと共同作業となる。

 心理デザイナーはユリカの幼児期には、外的要因としか携わらない。ただ時には、泣く、笑う、ぐずる、体調を壊し熱を上げるといった。幼児期に起こりうる要因を設定する。これによりユリカの幼児期の性格と心理状態を形成させる。


 心理デザイナーは、彼女の生い立ちを設定する。

 ユリカの成長期、彼女が何を考え、興味を示したか。そして何をやってきたか。この部分は、ボディデザイナーとの密な連携が要求される。


 なぜなら彼女がもし、何かスポーツに没頭したとする。その場合、そのスポーツの種類により筋肉の付き方が変わる。また成長過程において、骨格の形成も変化するだろう。その変化をボディデザイナーは、心理デザイナーが設定した内容に合う形をデザインする。

 彼女が今、十八歳の設定に至るまで、ありとあらゆる場面を設定し、この二人はユリカの外見をデザインする。

 そのデザインデッサンは、数億パターンに及ぶ。

 

 そしてこれからもユリカが老いて、灰となる場面まで想定しデザインは遂行される。


 ユリカの人体としての内部構成は、内科医三人、外科医五人、整形外科医二人、産婦人科医二人、神経外科医三人、脳外科医十人でプロジェクト構成されている。

 ユリカの臓器はボディデザイナーがデザインした骨格と、機械工学の理論に元付いて設計された骨格および関節デザインに合わせ配置され、その大きさや処理の能力なども設定される。

 また、血管や神経経路についても抹消の深度や、主神系の伝達の速さなど、細かに設定されている。

 特に脳の設定においては、脳外科医、神経外科医、合わせて十三人と言う人数で設定、デザインが行われる。


 まず彼らは、ユリカの脳の大きさと重さ設定した。

 つまり脳の密度を設定したのだ。

 これによりユリカの標準的な記憶能力を確保した。

 頭部、頭蓋骨の設定は、ボディデザイナーが大まかに設定している。なぜなら、ユリカには顔、フェィスがまだ設定されていないからだ。

 ある程度頭蓋骨の設定がなされていることにより、それに合わせた脳の大きさを設定できる。

 フェィスのデザインは、後に僕が行うことになっている。ある程度のイメージは出来ていた。だから事前にボディデザイナーにそのデザインを伝えていた。僕が描いているユリカのフェイスが、頭部のデザインと合うように。


 脳の設定については、細かな作業と膨大な情報のアッセンブリが必要とされていた。

 脳の基本的設定は、心理デザイナーがデザインする前から行われている。それはただ単に、好きか、嫌いか、の判断が出来る程度だった。


 本格的な脳の設定が始まると、心理デザイナーは、今までユリカに設定デザインした情報を、すべて否定するように仕向けた。変更ではない。彼女、ユリカから帰ってくる反応を見るためだ。

 否定する情報、肯定する情報、共にユリカが初期的に判断した情報だ。その結果を元に人為的に裏付けした情報を流し込む。そしてまた、すべてを否定させるように仕向ける。それを永遠に繰り返す。すると、一つの答えが、二つになり、繰り返す内に十になる。それはユリカの意思となり想いとなる。


 これが大きなブロックとなり、ユリカの脳の処理の仕方のデザインとなる。

 こうして、数多くのブロックを形成させ、同一の情報を数多く重複させる。これにより脳にストレスを与え、保護するためのホルモンを分泌させるように仕向ける。実際、ユリカはまだデータの塊だ。ホルモンなど分泌することはない。だから、ユリカの処理速度を極限まで下げ困惑させる。


 すると彼女は、返す情報に否定でも肯定でもない。つまりエラーを吐き出す。これが彼女の曖昧さとして処理される。この曖昧な答えが、また彼女の脳にストレスを与える。これを大きなブロックとして処理しユリカの感情として位置付けさせた。


 まだこの時点では、ユリカプリジェクトは単なるプログラムの塊でしか過ぎない。実際に彼女の体が形成され、その姿をこの目で見るにはまだ先の事だ。

 だが、僕らに与えられた時間はもう残り少ない。

 先に先行研究されている、人体細分化プロジェクトはすでに実用段階まで、その成果を見せつけていた。


 ゼプト・オペレーション・システム


 ユリカはこのシステムを元に、彼女の体を構成させる予定だ。しかし、彼女は我々人類と同じ体ではない。

 それはある目的を持った計画だった。彼女の体を蘇生させるための構成原子自体を変えなばならない。

 そう、この世界とは違う人体機能を持ち遺伝子、ゲノムを持たない……

 新たな人類を創り上げる事が目的だった。


 でも…… ユリカは、我々人類と同じ心を持ち感情を持つ、推定年齢18歳の若き女性であることを、今ここで語っておこう。

 彼女は人を愛する心を持ち備えた新たな人類である。


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