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テレ子  作者: 倉田京
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ありがとうのお墓まいり

 粘土(ねんど)みたいに重苦(おもくる)しい色をした空から、二月にしては珍しい季節外れの雪が降り始めた。コンペイトウほどの結晶は墓石に落ちると、小さな涙ほどの水滴(すいてき)になった。

 お墓参りする時の作法というものを私はよく知らない。無駄におしゃれなスカートなんて履いてきてしまった。一本一本自分で選んで作った花束は送別会用みたいに華やかになってしまった。それに今日は聡君の命日じゃない、誕生日だ。何だかデートにでも行くような感じになってしまった。来る途中の電車の中、窓にうっすら映った自分の姿を見て、一度引き返すことも考えた。でもこれでいいと思う。今自分ができる一番綺麗な服装をする。お店の人にお任せせず、相手の事を想った花束を自分で作る。悲しい命日より誕生日に手を合わせてあげる。そんなお参りがあってもいいんじゃないかと思った。

 花束を置き、墓石の上をハンカチで拭いた。桶にお水を()んできたけれど、この寒い日に墓石にお水をかけるのは何だか可哀想な気がしてやめておいた。来る途中のコンビニで買った百円ライターで束のままの線香に火を点けた。

 手を合わせ、目をつぶり、想った。

 ちゃんと話せなかったけれど、助けてくれてありがとう。


 あれからそろそろ一ヶ月が経つ。恵子さんに聡君の心残りを渡した後、私は時間の許す限り外に出るようにした。そして周囲に住む人達に思い切って話しかけるようにした。やっぱり彼は私以外の家でも同じ心霊現象を起こしていた。私は自分の部屋でも同じ現象が起こっていた事、そしてもうそれは起きなくなった事を伝えた。聡君のしてくれた事が、住んでいる人を追い出すような『悪い事』という結果で終わらせたくなかった。声をかける勇気が出ない時は彼のことを思い出した。たとえ小さな事でもいつか相手に届く日が来る、そう思うと『きっと大丈夫だ』という気持ちになれた。周りに住んでいた人達は少しずつ戻ってきてくれた。


 墓参りを終えた私は携帯を取り出し、来年の同じ日にスケジュールを入れた。

 携帯にメールが届く。今度一緒にご飯食べに行きましょうという文面。隣に住む女子大生の子からだった。彼女と私は友達になった。私は『はい!よろこんで!!』と返信を送り、携帯をバッグにしまって歩きだした。雪はいつのまにか止んでいた。

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