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二人は生と死を繰り返す

公爵令嬢は死を繰り返す

作者: ぽわぽわ


私は繰り返す。


「ぐ、ァ……ぁ……」


首を絞められ、いずれ死ぬ。

誰か分からない、この学園の人間ではない人物に。

誰の手の者か、それだけは分かっている。

第一王子、ルーダリオ。

私の、婚約者……


「………」


とうとう呼吸が出来なくなった。


どくん、どくん、どくん……


心臓の鼓動が弱くなっていく。

目が霞む。

苦しい……誰か……

誰も助けてくれない事など分かっている。

それでも助けを求めずにはいられない。

目の前が真っ暗になる。

私の意識がいったん途切れた。


……私は死んだ。

今回も駄目だった。

私は、また殺された。



私は目を開ける。

学園の寮の自室。

私は鏡の前に居た。

白金の長い髪に優しい紫の瞳。

私だ。

私は、また戻ってきた。

このどうしようもない世界に……

三か月ほど前に。

これからまた新学期が始まる。




******




私はアネモネ・ライラック。

由緒正しき公爵家であるライラック家の長女だ。

私は幼い頃に第一王子であるルーダリオ・セアルータと婚約した。

親が決めた事だった。

それでも私は頑張った。

いずれ王妃になるために学ぶことは多かったのだ。

私は必死に学んだ。

この国のためを思って必死に勉学に励んだ。

十五になって王立の貴族限定の学園に通う事になった。


そこから、おかしくなった。


もともと私は、ルーダリオがあまり好きではない。

確かに見た目は良いだろう。

母親譲りの金の髪に金の瞳。

いわゆる白馬が似合う王子様。

だけど、彼は馬が乗れない事は、ほんの僅かな人間だけが知る事だ。

それはいい、どうでもいいことだが、問題は彼が女に不義理を働く事だ。

気になった女はすぐに連れ込み、一夜を共にする。

下半身がとても緩いのだ。

彼の毒牙にかかった女性は数知れず。

同級生に限らす上級生、下級生、はては教師にまで。

流石に父である陛下に叱責され、今は少しはおとなしくなった。


しかし、それが裏目に出た。

ごく僅かな女子生徒たちとハーレムを作ったのだ。

ルーダリオ理想のハーレム。

私はそれまでずっと我慢してきた。

何処かで知らない女と粘膜接触してくるような男と結婚?

汚い、嫌だ。


私はルーダリオに抗議した。

仮にも婚約者である私が身近にいるにもかかわらず、その態度はいかがなものかと。

それが、いけなかった。

ルーダリオは何かにつけて私を敵視するようになった。

私の友人たちは私の事を思い、励ましたり、時には陰口をたたくようになっていった。

そんな友人たちはルーダリオに不敬罪を言い渡され、学園から追放されてしまった。

私は追い出されなかった。

曲がりなりにも婚約者。

婚約者を学園から追い出したとなれば再び陛下から御叱りを受けると考えたのだろう。

私は、一人になった。


一人になった途端、ある人物が事あるごとに私に嫌がらせしてきた。

男爵令嬢のマリーナ・オセロット。

彼女はルーダリオのハーレムを取り仕切っている取り巻きのボスだった。

嫌がらせと言っても、実害はない。

公爵令嬢に直接手を出すのは危険だと思っているようで、嫌がらせと言っても悪口程度だ。

イラつく事には変わりない。


三学年になって、あと一年で卒業、そして結婚か。

と考えていた。

ルーダリオと結婚したくないな、そう思うのは普通だろう。

両親にはその旨を伝えていた。

二人は残念に思っていたようだが、何分、王子の悪評が酷過ぎた。

結婚しないという方向で進めてもらっている。

私だって女だ。

私だけを愛してくれる人がいい。

それなら政略結婚でもよかったのに。


ルーダリオも男爵令嬢も同じ三学年。

あと一年、大人しくしていよう。

そう思っていた、初夏。


私は殺された。


首を絞められ、窒息死したのだ。

最初は何が何なのか分からなかった。

殺されたと思ったのに、春に戻っていた。

新入生の入学式の日に。


私は混乱した。

死んだと思ったら時間が巻き戻っていたのだ。

皆の話すことも、行動も同じ。

恐ろしくなっていった。

部屋に籠り、学校に行かなくなった。

そして初夏。


私は再び殺された。


部屋の窓際に居た際、矢で心臓を射抜かれた。

毒が塗ってあったようで声をあげる前に体は動かなくなった。

行動を変えても、結局死んだ。


そして、また春に戻るのだ。




*****




この繰り返しは、一体何度目になるだろう。

何度も死んだ。

数えきれないくらい死んだ。

色々な死に方を経験した。


首絞め

弓矢

刺殺

撲殺

水死

焼死

屋上から突き落とされて

無理矢理服毒

食事に毒

飲み物に毒

自殺に見せかけた首つり

小部屋に閉じ込めて練炭


まだまだ他にあった気がしたが、忘れてしまった。

この中で一番痛くなかった死に方。

……練炭だ。

練炭が忘れられない。

あれはいい。痛くないし苦しくない。

初めて練炭で殺された際、ルーダリオの所に直接行って練炭を所望します! とお願いしたぐらいだ。

本人は意味が分からなさそうな顔をしていた。当たり前か。

あの時は結局、弓矢だったかな。


何度もループして、私を殺しているのがルーダリオだと分かった。

彼は沢山の女性と遊びたいから私の様な堅苦しい令嬢はいなくなって欲しいのだ。

それを焚き付けているのはあの男爵令嬢だ。

男爵令嬢はしたたかだ。

余程ルーダリオと結婚したいらしい。

性に奔放な振りをして近付き、ルーダリオから一番の愛情を注いでもらっているようだ。

側室を幾らでも取っていいから、私を正妃にして? とねだるのだ。

やり手だ。

彼女はルーダリオと結婚したいのではない。

第一王子と結婚したいのだ。

肩書きしか見てないのだ。


婚約破棄してくれ! と叫びたいが叶わぬ願い。

ルーダリオの方から婚約破棄してもらえればどんなにいいか。

それは叶わない。

王家の力が弱まりつつある。

現国王派か、国王の弟派で貴族は二分している。

内乱秒読みとすら言われているのだ。

ライラック家は現国王派だ。

公爵家の娘たる私が嫁げばしばらくは安定する。

ルーダリオは私をどうする事も出来ないのだ。


いつも通り、入学式が終わり、始業式が始まる。


いつもの光景、変わらない光景。

私は、また殺されるのか。

もう、何度目だ?

いつの日か私の瞳から光が消えた。

私は自分の目が好きだった。

母譲りの優しい紫。

もう、見る影もない。

せめて今回は……


練炭がいいなあ。


私は生きる事を諦めかけていた。




*****




変化があったのはそれから一ヶ月後だ。

転校生が来た、と言うのだ。

今まで、そんな事は無かった。

こんな時期外れに?

一体どんな人なのだろう。

今まで繰り返してきた日々の中では一番の変化だ。

転校生はこのクラスに来るらしい。


どんな方かしら。


少しの間思いをはせてみた。


ガラッ


担任教師が入ってくる。


「皆さん、席についてください」


一人一人思い思いの場所に居た生徒たちは自分の席に戻った。


「噂になっているかも知れませんが、今日から転校生が来ます」


入りなさい、と担任が言うと、扉を開けて入ってくる。


「……!」


黒い髪に青い瞳。

しっかりとした佇まいは気品を感じる。


「皆さん、初めまして。ユリウス・セアルータと申します」


彼はユリウス・セアルータ。

ルーダリオの異母兄弟で第二王子だ。


黒い髪は母親譲り、青い目は父である陛下譲りだ。

第二王子の話は第一王子とは違い、良いものばかりだ。

ルーダリオの僅か数か月後に生まれた彼。

同じ年なはずなのにユリウスはもう国政を手伝っているのだ。

第一王子があまりにも酷いせいか第二王子には賞賛の声が飛ぶ。

天才である、神童である。

そう言われているのにもかかわらず、彼はとても謙虚だ。

だからこそ、好感が持てるのだ。


ホームルームが終わり、第一王子とは距離を取っている令嬢がユリウスに近付く。

ユリウスは良物件だ。

彼には未だ婚約者が居ないのだ。

自己アピールをし始める令嬢をそれとなく上手くかわして、ユリウスは立ち上がる。


「アネモネ!」

「まぁ殿下……お久しぶりでございます」


スカートの裾を摘み、礼をする。

ユリウスとは子供の頃からの付き合いだ。


「この様な場所で呼び捨てはおやめになって……勘違いされてしまうわ」

「そう? 僕は勘違いされてもいいけど」

「まあ、お上手ですわね」


ユリウスとは本当に久しぶりに会う。

随分と大人っぽく、凛々しくなった。

……ルーダリオとは違い。


「アネモネ、君に学園を案内してほしいのだけど」

「私ですか?」

「昔からの知り合いは君しかいないんだ……どうかな」

「えぇ、分かりました。お受けいたします」


では昼休みに、と言う事になった。




*****




学園を案内し終わり、食堂で一緒に食事を取った後、ユリウスと別れた。

裏庭のベンチに座り、ぼおっとする。

私はよくここに来る。

沢山の木々と木漏れ日、優しい風が私を癒す。

よく訪れるせいでここで殺されることも多いが……


「アネモネ!」

「……ユリウス殿下?」


ユリウスは私の隣に座る。


「良かった、探したよ」

「何かご用でしょうか?」

「アネモネ、大丈夫かい?」

「……何がでしょう?」

「その……元気が無いように感じて」


それは私が殺され続けているからだ。

生きる希望を持っていないから。

仕方の無い事だ。


「兄上と君の事、王宮で噂になっているよ」

「……どのような噂でしょう?」

「婚約者である君を孤立させ、ハーレムを作って碌に授業に出ないとか」


事実だ。

ルーダリオは朝から晩までハーレムと楽しくやっている。

私も久しく会っていない。


「この噂を聞いて君のお父上はカンカンに怒ってしまってね」

「お父様……そうなのですね」

「君に元気がない原因が兄上ならば、僕が代わりに謝罪する。すまなかった」

「殿下! おやめください! 私などに頭を軽々しく下げないで下さい!」

「ここまで兄上を野放しにしておいた王家に問題がある。申し訳ない」

「……殿下」


ユリウスは頭を下げ続けた。

私はその謝罪を受け入れる事にした。

心の中で自分を笑う。

受け入れたところでなんだ? 私はどうせ死ぬのに?


「君は今でも兄上と結婚したいかい?」

「………」

「アネモネ?」

「いいえ……」

「……そう、分かった」


ユリウスは言った。

陛下はこの婚約を手放したくないのだ。

でもユリウスが何とか説得してくれるようだ。

それが何になる? 私は死ぬのに。

壊れかけの心に、ヒビが入る。

もう、これ以上期待を持たせないで。

やめて、心に荒波を立てたくない。

立ち上がる。


「もう行きます。殿下、お心遣い痛み入ります」

「っ、アネモネ! 待って、まだ話が」


私はユリウスの手を振り払った。

期待するだけ無駄だ。

どうせ私は死ぬ。

これは決まっている事だ。


「これ以上私に優しくしないで!」

「アネモネ……」


上手く行きそうな変化だった。

何度も繰り返した中では一番の変化。

だが、それがどうした?

私は死ぬ、どうせ死ぬ。

裏切られて、結局死ぬのが一番つらいのだ。


「期待させないで! お願い……っ、私はどうせ死ぬの」

「………」

「何回繰り返したって無駄、どうせ死ぬ」


こんな事、ユリウスに話したって分からないのは分かっている。

事実ユリウスはすごく驚いた表情をしていた。

もういいの、私が死んだら元に戻る。

この会話もなかった事になる。

だから話してしまっても何の問題もない。


「アネモネ……ごめん」

「っ? 殿下?」

「ごめん、アネモネ……ごめん」


私はユリウスの腕の中に居た。


「孤独だったよな……助けてあげられなくて本当にごめん」

「……」

「今までよく頑張ったな」

「っ……」


ユリウスは何も知らない。

何も知らないのに私の苦しみをくみ取って、優しい言葉をかけてくれる。

何度も殺された。

殺されないように頑張っていた時期もあった。

上手くいったかな、そう思った時もあった。

けど、変わらない。

終わってみれば全部同じだ。

涙が溢れだす。

枯れてしまった涙が、ユリウスに苦しみが理解されたようで、あふれ出す。


「アネモネ、君は僕が守るよ」

「殿下……?」

「何も心配しないで」

「っ」

「君を殺させたりしないから」


私は大声で泣いた。

貴族の令嬢としては正しい行いでは無かった。

でも、止まらなかった。

座っていたベンチに再び戻って、ユリウスは私が落ち着くまでそばに居てくれた。

授業が始まる鐘がなっても、側に居てくれた。


「アネモネ、聞いてくれる?」

「……はい」

「兄上と君の婚約を白紙に戻す」

「うん……」

「もしかすると僕と婚約なんて話になるかも知れない」

「あっ……」


ユリウスには現在、婚約者はいない。

王家としては公爵家の血を入れたい。

そうなると必然的にユリウスに話が行くだろう。


「僕は嫌がる女性と結婚したくないんだ」

「……はい」

「君が良ければ、僕との事考えてほしい」

「殿下はそれでよいのですか?」


ユリウスは少年ぽくにこりと笑う。


「僕はずっと君の事が好きだったから」

「えっ!?」

「だからそうなってくれると嬉しい」


手の甲にキスをされる。


「愛してるよ、アネモネ……君だけを愛するよ」


頬が熱くなる。

これは、どういう展開だろう。

こんな風に愛を囁かれたのは……生まれて初めてだ。

ルーダリオにはこんな事されたことない。


「あっ、でん、か」

「それと、これからは名前で呼んで欲しいな」

「えっ?」

「君にはユリウスって呼んで欲しい」


さらに熱が上がって行く。

頭が沸騰しそうだ。


「ユリウス殿下……」

「呼び捨てで良いよ」

「そんなっ……できません」


ユリウスは納得していない様で私の見つめる。


「ユリウス、様……」


ユリウスは満足したように笑った。




*****




そこからは、早かった。

今までの繰り返しは何だったのだろうと思うぐらいの怒涛の展開だった。

なんと、ルーダリオが廃嫡されたのだ。

彼の母である王妃が不義理を働いていた。

夜な夜な高頻度で男と二人きりで密会。

王妃はばれない様、用意周到だった。王妃の側仕えのメイドの入れ違いが激しいのは有名な話だが、まさか、こんな事が原因だったなんて。

ルーダリオの異性に奔放な所は母親似だったのだ。


彼に廃嫡を言い渡したのはユリウスだった。

学園の月一回の集会の時。学生全員が集まったタイミングだ。

ユリウスが壇上に上がる。


「陛下からの書状です。預かってまいりました、お聴きください」


ユリウスは良く通る綺麗な声で話す。

内容は上記のとおり、母親の不義理から息子は廃嫡される、そんな内容。


「そのような内容! 出鱈目を言うな!」


声をあげたのはルーダリオだ。


「まだ途中ですよ、何か問題が?」

「問題しかないだろう! なんなんだその内容は」

「ええ……あなたはもう王家の人間ではありません、と言う内容ですが?」

「俺が廃嫡になるはずがないだろう! ユリウス! お前の妄想ではないのか」


ルーダリオが怪しく笑う。


「どうしても国王になりたいのか? いやしいメイドの子」

「……」

「これだから嫌なんだ、嘘を付いて成り上がりたい一心か? 全く反吐が出るよ」


ユリウスの母は確かに元王宮で働いていたメイドだ。

私は二人の母親に会った事があるが、正直ユリウスの母の方が好感が持てた。

ルーダリオの母は、昔から苦手だ。


「兄上……いえ、もうあなたは僕の兄では無かったですね」

「まだ嘘を付くか!」

「嘘ではありません。そう思うなら王宮に帰られてはいかかでしょう?」

「いい加減にしろ!」

「まあ、その前に、不敬罪で処罰されることになりますがね」


兵士が数人、ルーダリオを取り押さえた。


「なっ! 俺にこのような事をしてただで済むと」

「ルーダリオ、あなたはもう王族でも貴族でもないのですよ」

「ユリウス! おまえっ」

「今は僕が第一王子なのですから」

「っ! やめろ! 離せ!」

「さようなら」


ルーダリオはわめきながら兵士に連れて行かれる。

会場は騒然としたままだ。

誰も、彼を助けようとはしない。


「嘘だ! 嘘だあああ!」


ルーダリオがなんとかして拘束を抜け出た。

兵士は捕まえようとするが生徒の列に入ってしまう。

私は咄嗟に離れる、

死が頭をかすめたからだ。

無理心中でもされたら嫌だ。

折角死なずに済みそうなのに。

しかし、予想に反して彼は私の所にも、ユリウスの所にも向かわなかった。


「ぐあっ! 離せ!!」


とうとう取り押さえられる。

這いつくばって、高慢な面影がほとんど無かった。

彼の目の前にはとある女性が居た。


「マリーナ!」


男爵令嬢マリーナ。

華美な見た目だが、中身は腐っている。


「君だけはっ! 君だけは俺を裏切らないだろう!?」


私はそれを冷たく見ていた。

結果は分かり切っていた。


「は? マジ無理なんですけど」

「っ! マリーナ?」

「ごめん、貴族でない人とは無理、ごめんね?」


彼は放心状態なまま、兵士に連れて行かれた。

それ以来、私は彼と会う事は生涯一度も無かった。




*****




数年後、学園を無事に卒業できた私は、ユリウスと婚約し、結婚した。

結局、ルーダリオとその母はどうなったのだろう?

聞いてもユリウスは教えてくれない。

きっといい結末じゃないからだ。

優しいユリウス。

私の夫。

そんな彼は、王位を継ぐために大忙し。

王弟派の貴族とコンタクトを取ったり、色々と忙しい日々を送っている。


「ユリウス」


そんな彼は、かならず夜には会いに来てくれる。


「アネモネ……寝てていいっていつも言ってるだろ?」

「ええ、でも……会いたくて……」


忙しいユリウスが帰って来るのは日がすっかり落ちた後。

ユリウスは私の顔が見たくてここに来るのだ。

私はユリウスの膝の上に座る。

片手を優しく握られる。


「もう君一人の体ではないのだから」


もう片方の手は私のお腹を撫でる。


「ユリウス様が頑張っていらっしゃるのに?」

「僕は良いんだよ。君の事が心配だ」

「私もよ……あなたの事が心配なの」

「アネモネ」

「もう少し早く帰ってこれないのかしら?」


ユリウスの事が心配だった。

ちょっと働き過ぎな気がしたのだ。


「……今大事な時期で、すぐには難しいけど」

「……」

「子供が生まれる前には落ち着くと思うから」

「そう、今が大切なのね」

「寂しい思いをさせてごめん」

「いいの、お仕事頑張ってね」


そう言って額に口付けた。

ぎゅっと抱きしめられる。


「もう君を殺させたりしないから」

「……はい」

「愛してるアネモネ」


ユリウスはそう言って、私と唇を重ねた。




あとがきっぽいなにか



書いてる途中で、これ設定練れば長編でもいけそうだなぁと思いました。

短編故ループ物の強みがあまり出せなかったのが反省点です。


ユリウス視点はそのうち書くかもしれないです。


7/11追記ユリウス視点書きました。「第二王子は生を繰り返す」よかったらどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後のほうに 数年後、学園を無事に卒業できた私は、ユリウスと婚約し、結婚した。 とありましたけど、アネモネは留年でもしましたか?後の文章から結婚した後の時系列っぽい事からそこに対する『数…
[一言] とても面白かったです。 ただ、ループの原因などがわからないままだとスッキリ出来ずモヤモヤしてしまいます
[気になる点] 何故アネモネは、何回もループしたのでしょうか? 気になります。 [一言] ルーダリオが王族はおろか貴族ですら無くなったのは、母親である王妃の長年に渡る不倫と関係しているのでしょうか? …
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