表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

プロローグ:5

こつ、と実体化した足音が――



嫌。



こつ、



来ないで……



こつ、



こつ、



こつ、と確実に忍び寄る。


「嗚呼……」


身体は硬直し、抵抗さえままならない。


そして冷たい指先が、わたしの喉に触れた――――


それは氷柱のように、すべらかさを保つ細い指だった。


触れられた箇所がひやりとする。霜を纏っている。


つ、と首筋を撫でるたおやかな指は、そのままこちらの顎をたどり、わたしの頬に触れる。耳をなぞる。


「おんな」


それは奇妙に凜と響く声であった。


恐ろしいのに、同時に何故か懐かしい。


「おまえは」


誰なの。


「■■■」


そいつが髪に触れる。脂でこわばったわたしの黒い髪が、不思議な声の主に梳かれてゆく。


「く――」


寒い。


なんて。寒い。


凍えるほどの冷気に満たされる中、互いの吐息が重なり合い、霧となって流れてゆく。


足元から這い寄る冷気がたちまちの内に全身を覆い、猛烈な眠気が瞼をおおう。


(あ、っ……)


膝がかくりと折れるのが最後の記憶だった。


わたしの意識はそこでふつりと途切れ。


そのまま翌朝までどうやら倒れていたらしい。


翌朝。


うつ伏せに倒れていたわたしの頬を、生温かな感触が突然襲い、不快感で目が覚めた。


(…………?)


おぼろげな頭は急速にそれを理解する。


鼻腔を刺激する獣の臭い。


それは犬だ。


わたしが飼っていた灰色の犬の臭いだ。


なぜ。


だって、お前は殺された筈なのに――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ