プロローグ:4
わたしはベッドへ潜り、枕元の蝋燭を消す。
視界のすべてが暗闇に包まれるや、眠気はすぐさま訪れ、そのまま朝まで熟睡してしまう――
はずだった。
昼間の箱に続いて、異変が起こったのは真夜中過ぎのことだ。
「うう……」
家のなかにいるはずにも関わらず、猛烈な寒さに襲われわたしは目を覚ました。
しっかり戸締まりした筈の扉が開いていた。風はそこから吹き込んでいた。
「……?」何故?
灯りをともし、扉を調べてみるがどこも壊れてはいない。閂だってしっかり掛けてから寝床へ入ったことまで憶えている。
おかしいなぁ?
首を傾げて戸を閉めようとしたその時、
「――おい」
誰もいないはずのわたしの背後から、突然人の声が聞こえた。
────ぞくり
瞬間、皮膚があわ立ち。
うなじを冷たいものが這う。
血管がぎゅうとすぼみ、心臓が搾られるような錯覚に陥った。
恐怖に駆られるまま、誰?と声に出そうとするが声がかすむ。喉がかすれて音にすらならない。
「こっちを見ろ」
振り返ってはだめ。やばいと本能が警鐘を鳴らしている。
それなのに、相手の声には異様な拘束力が含まれ、わたしの身体はその見えない力に縫い付けられてしまう。
……逃れられない。
逃れられない。