プロローグ:2
冬が近づいていた。
吹きすさぶ冷たい木枯らしに、ほつれた髪をもてあそばれながら、わたしは今日もお墓を掘りつづけていた。
そんな最中、この日はちょっとした異変が起きた。
わたしは普段、自宅の庭の前を掘りつづけていたが、あまりに指がかじかみ、ちょっとひと休みしようと思いかけたその時──指先が石とも違う、なにか硬いものに触れたのだ。
これは──
「箱……?」
興味を引かれ、注意深く掘り進めて行くと、次第に木肌の表面が覗いてきた。大きさは鶏か、あるいは普段かまどにくべる小鍋ほどある。
土を丁寧に払うと、艶のある金属のふちが見えてきた。見事な彫金が施されており、それなりに高価なものが収められているように思える。
これ、一体なんだろう……
どうしてこんなものがうちの庭に埋められていたんだろう?
手に取るとそれはほんのり暖かく、まるで仔猫を抱いているみたいだ。
「へんな箱……」
わたしは思わずそう呟いた。
けれども、捨てるには勿体ない。もしかしたらお金に変えられるものが入っているのかも知れないし。
誰にも見つからないように、そっと──ここには時々敵の兵隊や盗賊が現れるのだ──素早く懐へその箱を隠し、わたしは隠れ家へと戻った。