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弱虫:1
お湯に浸かるなんて何ヵ月ぶりだろう。
小屋に戻ってすぐに、グリが温泉と云うものを作ってくれた。名前は聞いたことがあるけれど実際に入るは今回が初体験だ。
ついさっきまでの嫌な記憶はとおに過ぎ去り、今はとにかく至福の一時。もうもうと沸き立つ白い湯気に霞む冬の原野を見つめながら、これで何度めになるか分からない「はぁ〜」という間延びしたため息がこぼれでる。
「湯加減、どう?」
湯気の向こうからグリが訊ねてきて、いいよー、とわたしが返す。
「そう。じゃあ僕も入ろうかなー」
ふ ざ け ん な。
調子に乗るなよコイツ、とわたしは相手の方角に見当をつけ、熱々のお湯をぶっかける。
ギャー!と直後に悲鳴がきこえた。
フフフ、いい気味だ。