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プロローグ
あかぎれだらけの指先で、わたしは今日も土を掘る。
親兄弟親戚友人。名前もしらない勇敢な兵隊さん。みんなみんな、死んでしまった。
殺されてしまった。臆病なわたしだけがどうしたものか生き残っていた。
とてもとてもかなしい。
かなしすぎてかなしすぎて涙はもう涸れつくしてしまった。
なにもない。家もたべものも、もうなにもここにはのこってはいない。
けれども臆病なわたしは、もうどこにもゆけない。どこか平和な土地へ移り住もうと考える気力さえ、もはやどこにものこっていない。
だからわたしは、あきらめた。
ただ、みんなのお墓をつくるために、今日も庭先の堅く黒い土を、ひたすら指先で掘り続けてている。
お腹がすいたなぁ……