30歳無職童貞が糞をこねて人形を作ってたら美少女が誕生した!
「ご主人様、起きて。ねえ、起きてってばぁ。」
それは夢でも異世界転生でもなく、もちろん糞でもなく紛れもない美少女だった。
-----無職は幸福である------
すべての始まりは下水工事だった。
駅から徒歩20分、築40年のボロアパートで俺は生活している。
生活していると言っても現在失業中の30歳無職童貞。
なぜ神は貧富の差をお与えになったのか。生きる意味は何なのか。
そんなどうでも良い事を考えながら、その日も求職サイトを見ながら、朝食の食パンをかじっていた。
程なくして猛烈な便意を催してトイレに行った。
「あれ?流れない?あっ断水だった」
ときすでに遅し。その日は下水工事のため半日ほど断水だったのだ。
「うんこどうしよ。。。あっそうだ。ビニールに包んで公園のトイレに流してくればいいんだ。」
スーパーで貰ったビニール袋を2重にして、先程した糞をビニール袋に詰めた。
「あれ、でもあと半日もしないうちに水復旧するよね。なんでこんなことやったんだろ」
ときすでに遅し。袋の口を縛り終えた頃自分の愚かさに気づいた。
捨てに行くのもトイレに戻すのも面倒くさい。すべて無かったことにしよう。
トイレの給水タンクの裏側に見えないようにビニール袋入り糞を放置した。
そして、それから3ヶ月の月日が立った。
まだ俺は無職だった。気が向いてトイレの掃除をしていたら、タンクの裏にビニール袋があることに気づいた。
「お?粘土があるぞ。前の住人が忘れてったのか?」
無職は退屈だ。そしてエネルギーがある。
この時の俺は棚からぼたもち程度の気持ちで糞を部屋に持っていった。
「どうせ作るなら美少女フィギュアでも作ろう。」
無職は無謀だ。そして夢がある。
それが自分の糞とも知らず丹念に捏ね上げた。
そして約2時間後、立派なフィギュアが出来上がった。
「かわいいなぁお前。しかし俺天才じゃん。」
IKEA効果のせいか土偶のようなフィギュアが本物の美少女のように見えていた。
土偶のようなフィギュアを手に取り正面から、斜めから
そして両手を高く上げて真下から完成したフィギュアを眺めていた。
ちょうどその瞬間落雷がアパートに落ち接続されていたテレビから電気が伝わって俺の体に
稲妻が走った。
俺は気絶したようだった。
「ご主人様、ご主人様 起きてください ご主人様ってばぁ」
まぶたをゆっくりと開けると、そこにはこんがり褐色の肌をした美少女がいた。
「あなたが私をご主人様で良いのよね?」
「あなた誰?もしかして、隣の部屋の住人で雷で俺のこと助けに来てくれたの?」
雷のショックで意識が朦朧としている。
「あなたが私を作ったんだよ?」
「まっまさか、あの美少女フィギュアが雷に打たれた瞬間そのエネルギーで生命が誕生したってことか?!」
「その通りだよ。ご主人様。」
辛く希望がない人生に光が差し込んだ瞬間だった。
-----無職は幸福である------end
-----彼女の名前はチャ子!スカロイド・チャ子である------
突然現れた褐色の肌をした美少女、名前はまだない。
「ねえ、ご主人」
「なんだい」
「名前」
意識が回復してだんだん現実を取り戻しつつあるさなか、
褐色の美少女が名前を問いただしてきた。
「我がアルジ様よ。私の名前は?」
褐色の美少女が名前を問いただしてきた。
「名前はないよ。茶色い肌だからチャ子とかでいいんじゃないか」
「ねえ、ご主人。なんでお茶は緑色なのに、お茶っていうの?」
俺は黙ってパソコンを指差すと察したのか一人でググっていた。
「ねえチャ子さん」
「何?」
「君は粘土から出来たから、もしかしてネンドロイドなのかい?」
「スカロイドだよ。」
初めて聞く言葉だった。何か触れてはいけないようなそんな重い響きを感じながら
俺は勇気を出して問いただした。
「スカロイドって何?」
「私はご主人のウンコから生まれたスカロイドなの!」
「なんですと!!!!」
-----無職は働かない------
スカロイドのチャ子が誕生してから1ヶ月がたった。
俺はまだ無職継続中である。
「チャ子、お米研いでおいて」
「あいあいさー」
「チャ子、パソコンで履歴書作っておいて」
「あいあいさー」
「チャ子違う!働くのは君だよ なんで俺の履歴書作ってんの!」
「馬鹿かお前は」
チャ子が生まれて半年がたった。
俺は未だに無職である。
チャ子はといえば、俺の代わりに家事をすべてこなしてくれ、
寂しい俺の話し相手をしてくれるかけがえのないパートナーとなっていた。
そして3ヶ月ほど前から、インターネットのアウトソーシングサービスサイトで仕事を受注し
立派に日本円を稼いでいた。
-----無職は働かないend------
-----月日は流れ20年の歳月がたった------
20年の月日は残酷だ。
それまでの間、就職や離職を繰り返していた。
ちょうど10年ほどたったある日、チャ子が「一緒に100均やろ」
と誘ってきた。
チャ子はクラウドサービスで身につけたスキルをもとでに
独自ウェブサービスを開始し、10年で2000万円ほど蓄財していたのだ。
100円ショップと言うのは、看板に左右されず、誰もが気軽に立ち寄れる唯一のお店である。
看板の100という文字は、魔法の言葉のようだ。
そして更に10年の月日がたった今、俺はガンで闘病中である。
と言ってももう長くない。入退院を繰り返し全身にガンが蝕み、自力で歩くどころか声を出すこともできなかった。
モルヒネを投与され2ヶ月後俺は程なくして息を引き取った。
「ご主人様、起きて。ねえ、起きてってばぁ。」
それは夢でも異世界転生でもなく、もちろん糞でもなく紛れもない現実だった。
おかしい。俺はガンで死んだはず。ここはどこだ。どうやら病院では無いらしい。
そして目の前にはチャ子がいる。
「ねえ、ご主人。チャ子が生まれたときの経緯覚えてる?」
「雷で打たれて・・・」
「そう、私はあの時の衝撃で生まれた。ただ生まれた瞬間、ご主人を守らなきゃって思ってご主人に雷のエネルギーがすべて回る前に私の方でエネルギーをセーブしたの」
「セーブってどこに?」
「この世界すべてよ。」
「この世界すべて?どういうことだ?」
「あのエネルギーを利用してトランザクションを開始していたの。」
「トランザクション?つまりロールバックができるってことか?」
「そう、でもこのトランザクションには欠点があるの。全て完璧には戻らない。」
「完璧に戻らないってどういうことだ?」
「ううん。なんでもない。でもご主人が生き返ってくれるなら私はそれでいい。」
「なんなんだ。どういうことなんだ。」
嫌な予感がした。
「もしかしてお前まさか・・・」
チャ子が泣いていた。
「今までありがとね。」そう言って気がづくとキスをされていた。
「バイバイ・ご主人。rooback そしてcommit」
「やめろおおおおおおおお」
-----月日は流れ20年の歳月がたったend------
-----丸焦げの土偶と褐色の美少女------
そして気がつくとそこは自分の部屋だった。
雷に打たれた気絶してる間とても長い夢を見ているような気がした。
手には、土偶のような人形が丸焦げなっていた。
どうやら雷に打たれた際この人形が守ってくれたらしい。
すべては夢だったんだ。何もなかったんだ。そう気づいた瞬間、涙がどっと溢れ出して来た。
なんでなんだ。どうして涙が止まらない。
どうして夢の出来事でこうも心は揺れるんだ。
雷で頭がおかしくなっちまったのか。
手に持っていた焼け焦げた土偶を強く握りしめ壁に投げつけた。
「ドンッ」
部屋中に音が響き渡った。もう何もする気が起きない。
放心状態でいると、部屋のドアを叩く音が聞こえた。
「雷落ちたみたいですけど、大丈夫ですかー?」
どうやら誰か親切な人が心配で見に来てくれたらしい。
ドアを開けると褐色の肌をした美少女が立っていた。
それは夢でも異世界転生でもなく、もちろん糞でもなくチャ子だった。
-----丸焦げの土偶と褐色の美少女end------