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幼馴染の恋愛便り  作者: 世嘆者
8/12

佐藤さんと新たなる七不思議開拓の予感

ご無沙汰しております。

この話の元々のタイトルは『お節介な佐藤さん』にする予定でしたが、ぜんっぜんお節介じゃないじゃねぇじゃねぇか。

という自分自身のツッコミが原因で変わりました。


中一の冬。僕達は初めて二人だけでスキーに行った。

スキーと掛けて、君が好きーなんて冗談を言ったりしたっけ。


あのときの真っ赤になった顔は可愛かったなぁ。

「し、しもやけだもん!」とか言っちゃって。

しもやけであそこまで真っ赤になる訳ないじゃん。それに、恋ちゃんの体温で雪が溶けて蒸発しているのに気づかない僕でもないのだよっ!


それに、あれですね~リフトって良いよねぇ。高いところに足場のない不安定な形で上るから、怖がった恋ちゃんが抱きついてくる。いつもは恥ずかしがって手もつないでくれないんだけどねぇ。

昔の人はすばらしいものを作ったものだよ。


まあ、スキーは恋ちゃんぜんっぜん出来なかったんだけど。運動神経が悪いのか、下手すぎて転けまくってたし。


でも、またスキー行きたいなぁ。


もちろん。恋ちゃんと一緒に。

__________________________________________________


sire恋


「あっ……見知らぬ天井だ……」

「は? アンタばかぁ?」


よく周りを見回してみると、見知らぬ天井でもなかったし、寝起きに投げかけられた辛らつな言葉は最近よく聞くようになった声だった。


でも、一回やってみたかったんだよ。このネタ。

でも、まさか佐藤さんがこんな秀逸な返しをしてくるとは思わなかったけど。


「……って、佐藤、さん?」

「なによ?」


私の横たわるベットのすぐ横に足を組んで座っているのは、佐藤さんだった。短いスカートから伸びた傷もムダ毛もない綺麗な太股がまぶしかった。


って、あれ?

今どんな状況だったっけ?


ここ保健室、だよね?


「はぁ……まあ、一応目が覚めて良かったわ」

「ふぇ……?」


私が素っ頓狂な声を上げると、佐藤さんはばつが悪そうにそっぽを向きながら答えた。


「いや、遅刻ギリギリだったとはいえ無理矢理走らせたのは悪かったと思ってるのよ、私も」


なんだか意気消沈というか、佐藤さんはいつもの不機嫌オーラを出していないどころか、なんだか少しだけ元気もないように見えた。


「ぇ、あ、はい」

「でも、人がガチで白目剥いてるのは始めてみたけど。あの時のアンタ、ものすっごい怖かったわ」


ホラーだったわ。と、佐藤さんは自分の体を両腕で抱くようにしてぶるりとふるえた。

あ、だから元気なかったんだ。


「……ええと、ごめんなさい……?」

「いや、まあ無事なら別にいいのよ。本当に」

「……は、はい」

「……」


え~と。


「……」

「……」


たびたび発生するこの沈黙。

どうにかなりませんか? なりませんか、そうですか。


静寂。

外からは呑気そうな小鳥のさえずりがちゅんちゅんと聞こえた。

……ちゅんちゅんじゃねぇよ。


まあ、そんなふうに理不尽にキレたところで、私のベットの周りにあるカーテンが閉められていて外の様子を伺い知ることは出来ないんだけど。


これじゃあ鉄板ネタの天気の話も出来やしない。


「……」

「……」


静かすぎる真っ白い部屋の中、その静寂を裂くかのようにぐぅ~とうなり声のような、地鳴りのような音が響いた。

私のお腹の音だった。

全力で目をそらしたかったけど、私のお腹が空腹を訴える音に間違いなかった。


「……」

「……」


突然のことに佐藤さんは驚いて固まってしまった。

私は恥ずかしくてベットのシーツを握って下を見ているしかなかった。

うぅ泣きそう。


今度はさらに嫌な静けさが保健室の中を支配する。

ただ、そんな中でもまたしても空気を読めない私のお腹は、「食い物よこさんかいっ!!」と憤怒していた。

ぐ~ぐ~ぐるぐる。

ああ、もしかしたら私のお腹は楽器だったのかも知れない。

だけど、楽器にしては自分勝手で、意志でも持っているかのように奏者の意図に反して一人でにソロを奏でていた。


「ええと……お腹減ったの?」


佐藤さんは半笑いで気遣うような感じで問いかけてきた。


「……ぐすっ」

「……あ、あのあれよ! 今お昼の時間帯だし。私だってお腹が鳴ることくらいあるわ。別に恥ずかしい事じゃないわよ!」


泣きそうになっている私を励ますかのように、そんなふうに早口でまくし立てた。


もうやめて!

いっそころして!

優しさの方がグサグサと心に突き刺さってくるんだよぅ。


「って、あ、ぇ? お昼……?」

「そうよ。もう時間的にはお昼の時間よ」


え? もうそんな時間?

私さっき登校したはずなのに。そんなに寝てたの? 私。

あ……出席日数とか平気なのかな?


「まああれよ、今回は私のせいでこんな事になっちゃったわけだし、先生にはアタシからどうにかするように言って置いたわ」

「あ、うぅ、はい」


何したのかな、佐藤さん。

私がきちんと出席になってるのはうれしいけど、あんまり先生をいじめないであげて。

なんかあの先生は同じ匂いというか、同じ世界の住人って感じがするんだよね。しんぱしーってやつだと思う。

びびびっえんぱしー。


…………うん。こういう遊びはもうやめよう。


「そういうことだからこれ!」

「ぁ……お、お弁当……私、の?」


佐藤さんは昨日と同じように私のお弁当を持ってきてくれているようだった。ありがたやありがたや。


「お腹すいてるんでしょ? さっさと食べちゃいましょうよ!」

「ぁ、は、はい」


そういって佐藤さんは自分のかわいらしいお弁当の包みを広げた。私もそれにつられてお弁当を開く。

今日はいつもと違って二段あるお弁当箱だったので、自然と期待に胸が膨らんだ。


……だれ? 今笑った人。

膨らむほど胸無いじゃんって言った人だれ? 泣くよ。泣いちゃうよ!


私が頭の中でそんな茶番劇を繰り広げている間、佐藤さんはかわいらしいお弁当箱のふたを広げてどれを食べようかと箸をさまよわせていた。

それを見ると、またぐぅ~とお腹が小さくなった。期待で胸は膨らんでもお腹は膨らまないもんね。


「フッ……ククッ……」

「……」


目の前の佐藤さんがお腹が鳴ったのをきいて、二回目はさすがに耐えきれなくなったのか口元を隠して笑っていた。

うぅ~! ヤケになって箸をとり出し、お弁当箱の一段目をあけると……え?


「……」

「……」


私も、先ほどまで笑っていた佐藤さんまでお弁当箱の中身を見てフリーズした。

もしかして世界が止まったのかも知れない。ざ・〇ーるど的な。


だけど、世界が止まったにしろ止まってないにしろ、お弁当箱の中身は変わらない。

スッカラカンのその箱の中心。そこに異彩を放つものが入っていた。

異物が。


それは。


「五百円玉?」

「……」


入っていたのは五百円玉。しかも三枚。

ご丁寧にセロハンテープでお弁当箱の底に張り付けられていた。

…………いや、なにこれ?

佐藤さんは遠い目をして何もいってくれない。

お願いだからなんか言ってよ。

って言うか本当に何これ。新手のいじめ? 泣いていいの?


「…………あ。で、でも、二段目にちゃんとしたお弁当が入ってるのかも知れないじゃない? まだあきらめるのは早いわよ!」

「・・・・・・う、うん」


何があきらめるには早いのか分からないし、どこからが遅いのかも分からないけど、何の気なしにうなずいてみる。というかもう自棄ヤケだ。


そして、意を決して二段目をあけようとすると…………動いた。

お弁当箱が? 否、おそらく中身が。


「え、ちょっ……何入ってんのマジで! 動いてるんだけど、危険物じゃないわよね? ねぇ?」

「……う、うぅう」

「爆発したりとかし無いわよね!? あと虫系もぜぇっっっっったい無理だから!!」


佐藤さんは半狂乱になって私にしがみついてくる。

そんなこと言われたって私だって知らないよ。……っていうか朝お母さん何を作ってたんだよぅ。

怖いよ。


「……」

「……」


うわぁ。まだ動いてる。

動くお弁当箱。なんか学校の七不思議にはいりそうな感じだった。当事者としては面白くも何ともないけど。


でも、何時までも放置しているわけにも行かないから意を決してお弁当箱二段目のふたをはずした。

危険物かも知れないので箸で。


そろりとふたをはずすと、中から出てきたのは。

まさかの。


「……携帯?」

「スマホね。しかも着信してるわ」


中に入っていたのはなんとスマホ。

しかも私の。かかってきている番号は知らない番号。


無視で良いかな?

いいともー。


「……」

「……いや、出なさいよ」

「い、いいともー。…………いや、やっぱり嫌です」

「何言ってんの?」

「あの、で、でも。こわい、です」

「…………はぁ。仕方ないわね。私が出るわ」


佐藤さんはちょっと、というかかなり気が進まなそうにお弁当箱二段目からスマホを取り出し、液晶の中の通話ボタンをタッチした。

そして、相手と二言三言しゃべってから電話を切った。


「…………ぇ、ええと。誰、だったんですか?」

「あぁ~うん。すぐに分かるわ」

「すぐに分かるって何ですか!!? 怖いんですけど! 怖いんですけど!」


佐藤さんは何とも渋い顔をしていた。

何とも微妙な表情というか。


そこに。

ガラッと大きな音を立てて私たちのいる保健室のドアが開いた。

そして、外から誰かが入ってくる足音が聞こえる。


ひた。

ひた。

ひた。


ヒィイイイイイイ!!

なんかきたぁぁああああああ!!


しかもだんだん私たちのほうに近づいてくるぅう!! きっと来るぅ、きっと来るぅという謎のホラーな音楽が頭の中に警鐘代わりに鳴り響いた。


…………私、死ぬのかなぁ。


半ば諦めに近い境地でびくびくしながら待っていると。

バッと私と佐藤さんの入っているカーテンが勢いよく開けられた。


「ぎゃぁぁあああああ!!」

「ッきゃぁああああ!!!!」


説明しよう。

黄色くない悲鳴をまず上げたのは私、次に悲鳴を上げたのが佐藤さん。

どうも私の叫ぶ声に驚いて声を上げてしまったみたいだった。


えぇと、ごめんなさい。


っと、そんなことはともかく、カーテンを開けた主は、私たちの悲鳴に驚いてぽかんとした表情をしていたが、すぐさま営業スマイルに戻って薄い段ボールの皿状の箱を渡してきた。


「木下恋さんでよろしかったですか?」

「……え、ぇえと、は、はい」

「こちら、『赤いのと白いの色々ぶっかけ山盛りピザ』税込みで1500円になります」

「あ……あの、はい」


思わずさっきお弁当箱から取り出した500円玉三枚をその人に渡すと、すぐに「では!」とか言ってその人は帰っていった。


って言うか誰あの人。


「ピザデリバリーの人……ネーミングセンス無いわね」

「ぇ?」

「って言うかアンタが頼んだんじゃないの? この『赤いのと白いの色々ぶっかけ山盛りピザ』税込み1500円」

「え、あの、ちがいます」


何が悲しくて学校でデリバリーのピザなんぞ頼まなければならないのか。それに佐藤さん。恥ずかしがるぐらいならその商品名言わなければいいのに。

顔真っ赤。


っと思ったけど、こんなネーミングのピザを頼むような人は一人しか心当たりがなかった。それにお弁当箱に入っていたものからみても、これ頼んだの……。


「アンタじゃないなら、このピザアンタのお母さんが頼んだのね。無茶するわね、色々な意味で」

「……う、はい」


ピザの箱のふたを開けてみると、中にはマルゲリータ風のピザが入っていた。

なぜマルゲリータと銘々しなかったのか分からなかった。


「へぇ、赤いのがトマトソースで白いのはチーズって訳ねぇ。普通においしそうじゃない」

「……ええと、食べますか? その、い、一緒に」

「え? いいの?」


佐藤さんはちょっとうれしそうに聞き返す。

ピザ好きなのかなぁ。


「お言葉に甘えてご相伴にあずからせていただくわ。まあ、代わりに……なるかは分からないけど、私のお弁当分けてあげるわ」

「あ、ありがとう、ごじゃいます」


ま、またかんじゃった。


「ふふっ……じゃあ食べましょう」

「あ、はい」


思えば、須島君以外の人と一緒にお弁当を食べるのは今日が初めてかも知れない。

というわけで、ピザの材料になってしまった哀れな食材と学校の中までデリバリーのピザを持ってきてくれた勇気あるアルバイトの人に感謝して。


「「いただきます」」

次話投稿は未定です。

最近筆があまり進まないので、モチベーションが上がったら投稿する予定です。


どうも茶番が多くなってしまっているような気がしておりますが、まあ気にしないで行きましょう。

誤字脱字等のご指摘お気軽にお申し付けください。

ついでに、感想を書いていただけると作者の文章がほんのちょっとランクアップするかもしれません。

では次回。

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