佐藤さんと学校までの道
前回までのあらすじ
木下恋の騒がしい朝。
いつも通り玄関を開けると、そこには幼馴染の彼はいなくて、いたのは佐藤さんだった。
なんかこうやって書いてると、色々思い出して来ちゃって本当に書きたいことがなかなかかけてないなぁ。
まあいいや、このまま限界まで突き進むぜっ!!
ということで中一の秋頃か~何かあったかな~プラネタリウムに行ったり、山に登って山菜を取りに行ったくらいかな。
どちらもただじゃ転ばなかった。終わらなかった・・・・・・。
プラネタリウムに行くことになったのは、そもそも実際の夜空をみようと思ったら雨天中止になって恋ちゃんが泣いちゃったからだし。
仕方ないからプラネタリウムで我慢してもらおうと行ったら行ったですぐに寝ちゃってほとんど何も見てないし。
山菜の時なんて毒キノコしか集めてこないのに、平気でそのキノコ食べようとしてたなぁ。
赤とか黄色のキノコをどうして普通に食べようなんて気になるんだか、時々僕には彼女のことが分からなかった。
でも、天然な恋ちゃんもなかなか可愛いと思うけどねっ!
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side恋
「・・・・・・おはよう」
「・・・・・・」
「おはようって言ってるんだけど、無視?」
玄関の重い扉を開け、外に飛び出した私を出迎えたのは、なんとも言い難い不機嫌な顔をした佐藤さんだった。
またしてもそこに須島君の姿はない。
って、佐藤さん?
「え、ええと。その・・・・・・おはよ、ございます」
「はぁ・・・・・・さっさと学校行くわよ」
「・・・・・・は、はぁ」
佐藤さんはその短いスカートを翻して、学校の方に向かって歩き出す。
なんか私もついて行くことが決定事項みたいなので、肩をがっくり落として彼女について行くことにした。
きっとこれを仕組んだのは須島くんだと思う。
彼のことだから、たぶんこうやって一緒に登校すれば佐藤さんと友達になれるとか考えているんだろうけど。無理だよ。
ただの罰ゲームだよこれ。いじめだよ。
「ところで」
「・・・・・・なん、ですか?」
「アンタの家から頭の薄いおじさんと背のちっさいお姉さん(?)が出てきたんだけど、あれ何なの? あんたんち歌劇団かなんかなの? は~し~れ~高速の~とか歌ってたけど」
え、ええと。
何でそんな歌ってたんだろう?
それと、別にその人たちは歌劇団ではないし。
ましては帝国にいる心まで鋼鉄で武装した人たちでもないから。
「それ、たぶんお母さんとおとう・・・・・・いえ、知らない人です」
私のお腹の音を地球の断末魔とか言うような人に知り合いはいませんです。はい。
「はぁ? あんたん家から知らない人が出てきたって事? もしかしてアタシ通報した方が良かった?」
「・・・・・・だ、大丈夫です、よく見かけるので」
「・・・・・・そう。よく分かんないけどアンタんちって大変なのね・・・・・・その、いろいろと」
「う、はい」
佐藤さんは私を見て、なんか戦々恐々としていた。
何で粟くんだろう。
もしかしてギャグだって分かってないのかな? 佐藤さん。
ええと・・・・・・大丈夫だよね?
佐藤さんはちょっと難しそうに眉を寄せながら学校に向かってぐんぐん進んでいく。私もそれに従って、なんとかついて行くけど・・・・・・佐藤さんって、歩くの早い。
須島君と一緒に歩くときはそんなこと感じないのに。
もしかして、私の歩く速度が遅いから須島君はいつも歩調を合わせてくれてたのかな。
「あ、そういえばあなたの家こんなところにあったのね。本当にアタシの家から近くってびっくりしちゃったわ」
「ぇ、あ、あの本当に、って・・・・・・?」
私の、重箱の隅でもつつくような細かい質問に、佐藤さんはちょっと渋い顔をしてじっくりと数秒考えた後、仕方ないと言った感じに答えた。
「・・・・・・・・・・・・はぁ。須島君から聞いたのよ」
「あ、ぇ? す、須島、君から・・・・・・?」
「だから、アンタと友達になってやってほしいって頼まれたのよ。彼から!」
「ぁ。そ、そう、なんですか?」
「・・・・・・そうなのよ。って、何でアタシなのかしら・・・・・・?」
佐藤さんは不機嫌そうな顔でそう返した。
それは問いかけるようでいて、私には向かっていない言葉だった。きっとこの問いは、須島君に宛てたものだ。
今、彼はいないから返事が返ってくることはないのだけど。
でも、そんな不機嫌ポーズの佐藤さんの耳は、いつもよりちょっとだけ赤く色づいていた。
もしかして照れてるのかな?
それに・・・・・・。
「さ、佐藤さんって、自分のことあ、アタシって言うんですね」
「は?」
・・・・・・ハッ!!
ぼうっとしてたら思ってることが口からこぼれ落ちてしまった。
やばっと思ってお口にチャックしたときには時すでに遅し。佐藤さんが私を驚いたような顔で見下ろしていた。
私は佐藤さんの次の反応と視線が怖くて、目を合わせられなくて、地面とにらめっこをする羽目になった。
今日も、真っ黒いアスファルトに舗装された地面が朝日を受けて鈍く乱反射していた。よく見ると、真っ黒い大地は綺麗に輝いていて、天衣無縫と言ってもいいくらいよく整備されていた。
土方の人・・・・・・いい仕事するなぁ。
「って、聞いてる?」
「・・・・・・あ、聞いてませんでした」
ああ! 変なこと考えてたせいで、また言葉が勝手に口をついて出てしまった。
って、私素直すぎぃ!!
佐藤さんはそんな私の返答に、怒るでもなく驚くでもなく、なんだか少しあきれたような顔で私に語りかけてきた。
「だから、アンタ意外と周りのことよく見てるのねっていってんの」
「・・・・・・ぇ? あ、あの、ありがとうございます?」
「お礼言うのはちょっとちがくない?」
「あう・・・・・・ごめんなさい」
「謝らなくても良いわよ、別に」
「・・・・・・ぅ、あ、はい」
って言うかさと佐藤さんは紡ぐ。
「私の一人称が変わるのは状況に合わせてるからよ」
「じょ、状況、れすか・・・・・・?」
か、かんじゃった。
佐藤さんは一瞬真顔になった後、吹き出して手で口元を隠しながらも、あえて気づかなかった体で話を進めてくれる。
「・・・・・・そ、そうよ。プフッ・・・・・・アタシは、先生相手には私。仲間内ではウチ、普段はアタシってかんじでククッ一人称を変えてるのよ」
「・・・・・・」
佐藤さん。笑いを抑え切れてないよ。
所々吹き出してるし。
まあ、それでもなんとか平静を保っている風を装おうとしてくれる辺り、佐藤さんの優しさが目にしみるよぅ。
「・・・・・・って、ごめんって、泣かないでよ」
「・・・・・・・う、だっで、ぐすっ笑うこと、ないじゃないですかぁ・・・・・・!」
佐藤さんが泣き出した私に、困った顔ですっとハンカチを渡してくれた。
渡された高級そうな布地のハンカチは、ふわっとまたいい匂いがした。
そして、その匂いと共に前に借りたハンカチを持ってくるのを忘れたことを思い出した。
これじゃ返せないと思って、どうしたらいいか分からなくて、泣いた。
なんか泣けた。
「ごめんなさぃいうぐっ、すん・・・・・・ごめんな、さい」
「何に謝ってんのかも分かんないけど、いいから泣きやみなさいよ! じゃないと、私なんか、今にも近所のおばさん方に通報されそうな勢いなんだけど!!?」
周りを見ると、朝のゴミだしのついでの井戸端会議をしていたと思われる近所ののおばさん方が、スマホ片手に「通報?」「やっちゃう?」「どっちが不審者なの?」みたいに盛り上がってた。
「・・・・・・あの、ごべんな、さい。おざわがぜして、ごめんな、さい」
って感じで。
私が何とかこの場を納めようと、涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔でお騒がせしてごめんなさい的なことを言うと・・・・・・何故か井戸端会議がさらに加速した。
もっと先へ、加速したくはないか? おばさん方。
もう自分でも何言ってるか分からない。
「あれ絶対言わされているわよね、警察?」
「いや、いじめは悪よ。自衛隊でしょ!?」
「公安もアリだわっ!」
「いえ、米軍基地に今電話かけてるから! お嬢ちゃん、もうちょっとまってね、今おばちゃんが助けてあげるからね!!」
みたいな叫び声が聞こえた。
・・・・・・何でこうなった。
閑話休題
カァ~カァ~カァ~
なんか電柱の上にとまっているカラスが、私たちをバカにしているような鳴き声をあげていた気がした。
実際、バカやっているのかも知れない。私たち。
んで。長いから省くけど、おばちゃんたちには佐藤さんと二人で頑張って状況を説明して、何とか納得してもらった。その、いろいろと。
ついでに、何故か私には防犯ブザーとかビデオカメラとか、痴漢撃退用スプレーとかくれた。
一応もらっとく・・・・・・いらないけど。
「いじめをなくすためならどんな出費も惜しまないわっ」と口をそろえて言っていたおばさんたちは、なんか、ものすごく色々間違っているけど輝いて見えた気がした。
まあ。
そのおかげで。
「ああもうっよく分かんないおばさんたちのせいで遅刻ギリギリじゃない!!」
「・・・・・・ハァ、ゼェ・・・・・・」
という感じに遅刻ギリギリの時間になってしまった。
歌劇団風の両親を無きものとして扱いながら家を飛び出した時には、出席をとる時間には全然余裕で間に合うはずだったのに。
おばさんの長話は侮りがたし。
のべ一時間。
朝なのにカラスも笑いにくるわけだよ。
そして現在。絶賛、息巻いて全力疾走中。
「・・・・・・ぜぇぜぇ」
「さっさと走りなさい木下恋!」
「・・・・・・はしっで、まず」
佐藤さんの走るのが早いんだよぉ!!
足が長いどころか走るのも早いなんて、神様は不公平だよ。
イメージ的にはウサギと亀。しかもウサギのペースについていけなくて、ウサギに引きづられるようにしてついて行く亀。
もちろん私が亀で佐藤さんがウサギ。
最近はウサギがペットとして人気らしいし、ひえらるきー(序列)とかぽぴゅらりてぃー(人気)的にも間違ってないと思う。
ついでにいうと、私の日本語の使い方も間違ってないと思う。たぶん。
※ぴんぽんぱんぽーん
ヒエラルキーはドイツ語で、ポプラリティは英語です。
知らないと須島君に笑われちゃいますよ。
あ、でも、なんだかんだ言って私を置いていかない佐藤さんの優しさに、また目がうるうる来て、なんだか友達らしさみたいなものを感じた。
友情かな?
これもう、友達って呼んでもいいんじゃないだろうか。
「おっそいのよこのグズっ!!」
「・・・・・・」
良い、のかな?
あ、その、はい・・・・・・・・・・・・将来に期待です。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・何とか間に合ったわね」
「 」
時は平成世は乱世。
じゃなくて、今はやっと学校までの道のりをトライアスロンよろしく完走した私たちは、なんとか教室の扉の前までやってきていた。
「ちょっと、聞いてんの?」
「 」
「ねぇちょっと______大丈夫?」
「・・・・・・」
私はしんだ。
神はしんでない。
う~ん。佐藤さんが何か心配そうに私の方を見下ろしてるけど。体が動かない。目だけを何とか動かすと、佐藤さんの下着の色も見えたけど、体はぴくりとも動かなかった。
私の食指も動かなかった。別に同性愛じゃないしね、私。
いや、そんなことよりも、さっきの急な運動の反動で酸欠を起こしてるみたい。力が入らない。だから返事も返せない。
目を閉じているのか開いているのか分からないけれど、目の前は真っ暗な暗闇が広がっていた。
「・・・・・・」
「うわっ・・・・・・・・・・・・白目むいてる」
佐藤さんの引いたような声を最後に、私の意識は暗い暗い闇の中へと堕ちていった。
あまりにも読んでもらえない。感想も評価ももらえないことにショックを受け、自分の作品は何がいけないのだろうかといろいろな作品を読み漁っていました。
結局。
ものによってはやはり、レベルが違うような面白い作品がいくつもありました。
正直、これに関して評価を受けるのは自明の理だと思います。かなり勉強になりましたし。しかし、こう言ってはなんですが、私と同等かそれ以下のレベルのものがたくさんの評価を受けている物が見受けられました。
なんかバカみたいだと感じました。
評価をする人や書いている人がではありません。私がです。
自分のやってきたことがバカらしくて、私は道端の石ころか何かのように見向きもされない、価値のないもののように感じました。
そんで凹んでふてくされてました。
ストックはあったのですが。
でも、私は諦めることすら許されない。そんな立場にない。
だから書き続けます。道端の石であり続けます。
ひっそりと。
今までにわずかでも自分を評価してくれたり、ブックマークを付けてくださった方には多大な感謝を申し上げます。
では次回。