二人きりの昼食
なかなか伸びないもんですねぇ。
閲覧数も評価も。
ただ、これからの作品を書いていく中で参考にさせていただきますので、一言批評していただけると助かります。
小学校の高学年くらいになると、僕達はいつも一緒にいるようになった。
いつも一緒にいて、同じ物を見て、同じ物を聞いて、同じ時間を生きていた。
同じ物で笑って、同じ物を悩んで、いろんな物を共有した。
そのころになると、お風呂も一緒に入ったし、一緒の布団で寝たし、同じ釜の飯を食って、彼女が夜怖がったときには一緒にトイレに入ったこともあった。
あの頃はどんな小さなことにだって笑った。
どんな些細なことにだって涙を流した。
意味もなく暗闇とか、夜とか、そういった物を怖がったりしたこともあった。
あの時には、きっとあの時にしか得ることのできない、感じることのできない何かがあったと思う。一生に一度しかなくて、取り戻せなくて、やり直せなくて、得難い何か。
そんな小学校高学年時代を彼女と過ごせたことを、僕は一度たりとも後悔したことはなかった。
そして、それを後悔することは、きっと僕にはないだろう。
一生。
僕らはいつだったか、あんまりにもくっついて居すぎて、仲がよすぎて、そのことをからかわれたことがあった。僕も、きっと彼女も照れくさくって、彼女と距離を置いた時期もある。
でも、彼女がそのせいで泣いてしまったのを見て、僕はこの子から離れちゃいけないなぁって思った。ずっとずっとそばにいてあげなくちゃいけないって。
僕が彼女を守ってあげるんだ、なんて。
そんな風に思った。
そんな風に誓った。
幼き二人の、小さな小さな、だけどとても大きな誓い。
約束。
僕はそれを、これからもずっと守り続けていきたいと思う。
病めるときも、苦しいときも、幸せなときも。
いつまでも。
__________________________________________________
side恋
「・・・・・・ぃ」
何かが聞こえた。
声が聞こえた。
私は覚醒と眠りの狭間の中でそれを聞いていた。
誰かが呼んでいた、私の名前を。
「・・・・・・ん。お・・・・・・木下・・、木下恋! そろそろ起きなさい!」
「ん・・・・・・ぁ、え?」
眠っていたせいでしぱしぱする目をこすりながら起きあがると、ベットのすぐそばには相変わらず不機嫌そうな顔をした女生徒がたっていた。
その女生徒は、はぁとため息をつきながら私にメガネを渡してくれた。
「ぁ、あありがとう、ござい、ます。佐藤さん」
「・・・・・・良いわよ別に」
「・・・・・・あ、はい」
「・・・・・・」
まだ寝起きでぼうっとする頭を何とか回して今の状況を確認した。
と言うか思い出した。
そうだ。授業中。急に涙が止まらなくなった私を、佐藤さんが保健室に連れてきてくれて、それで私、ベットで寝てたんだった。
そのとき、佐藤さんは確か・・・・・・。
「アンタ、一人にしてあげた間にちゃんと泣きやんだのね」
「あ、はい」
「まあ、アタシとしてもめんどくさかったけど、落ち着いたならまあ良いわ」
そういいながら佐藤さんは私の寝ているベットの近くに置いてある椅子に足を組んで座った。
「・・・・・・ごめんなさい」
「何で謝るのよ?」
「面倒、かけちゃった、です。・・・・・・から」
「・・・・・・別に良いわよ」
佐藤さんは不機嫌そうにため息をつきながら答え。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
佐藤さんは私をきつい目で見下ろしながら、何もしゃべらない。
勿論私も何もしゃべらなかった。
というか、私の方はコミュ症拗らせて喋れなかっただけだけど。
「はぁ・・・・・・なんかしゃべりなさいよ」
「え、ぁ、ああ、あの。ごめんなさい」
「・・・・・・何で謝るのよ、これじゃ私がいじめてるみたいじゃない」
「・・・・・・ごめんなさい」
「ああ、もう!! イライラするわね! とにかく、ほらこれ!!」
「・・・・・・ぇ? あ、これ」
佐藤さんがイライラしながら私の方に渡してきたそれは、私のお弁当だった。朝お母さんに作ってもらったもの。
でも、どうして佐藤さんがこれをもってるの?
「ぁ、ええと、あの・・・・・・なんで、これ・・・・・・?」
めちゃくちゃ辿々(たどたど)しいながらも、何とかいいたいことを伝える。
すると佐藤さんは、何故か私から目をそらしながら答える。
しぶしぶ、というかものすごく言いたくないと言うオーラを出しながら。その顔は、「何で私がこんなこと!」とでも言いたそうな、ものすごく渋い表情をして。
「・・・・・・・・・・・・持ってきてあげたのよ」
「ぇ? え、と。なんで、ですか?」
「・・・・・・はぁ。時計見なさいよ」
「と、けい?」
私は促されるまま、保健室に備え付けられている丸い時計を見た。
時間は長い針も短い針も万歳でもするかのように上を指していた。
「もうお昼休みなのよ」
「あ。は、はい」
「だからアタシがお弁当持ってきてあげた訳なんだけど」
「ぁ、ああ、ありがとうございます」
「ふんっ」
佐藤さんは鼻を鳴らして私のお礼に答えた。
嫌われてるのかな。私。
でも、嫌われてたらお弁当持ってきてなんてくれないだろうし。佐藤さんは何を考えてるんだろう。
私、どうしたらいいのか分からないよ。
何を話せばいいのかとか。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
気まずい。
誰だよ沈黙は金とか言った奴。
ただ気まずいだけだよ、こんなの。
二人だけしか居ないからなおさら気まずい。
こう言うとき須島君だったらすらすら言葉が出てくるのに。佐藤さん相手だとそうもいかない。ううん。佐藤さん限定じゃなくて、たぶん誰が相手でも私は楽しくおしゃべりなんてできないんじゃないかな。
「何? アタシってそんなに怖い?」
「い、いえ! そ、そんな、ことない、です」
「あっそ」
気まずいよ~。助けてよ誰か~。
と、私の内心を察してか、佐藤さんはちらりと時計を確認した。
「アタシは邪魔みたいだし、もういくわ」
「あ、は、はい」
「ゆっくりお昼でも食べてなさい」
「・・・・・・」
ゆっくりお昼でも食べてなさいって言われても・・・・・・。
なんて返せばいいんだろう。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
おどおどしている私を残して、佐藤さんは保健室から出ていった。
保健室から出ていくとき、佐藤さんが一言二言誰かと話す声が聞こえ、入れ違いに誰かが入ってきて、すぐに扉は閉まった。
保健室の先生かな?
まあ、私には誰であろうと関係ないだろうと思うので、早速佐藤さんが持ってきてくれたお弁当を食べ始めた。
あ、今日は卵焼きにたこさんウインナーだ。
おいしそう。
まずはたこさんウインナーをほおばると、中から熱々・・・・・・ではないけど肉汁があふれ出してくる。
そこへ。
「初体験はどうだった?」
「ぶふっ!!」
突如聞こえた不穏な言葉に。口に含んでいたたこさんウインナーが口という大気圏を飛び出す。だが、第二宇宙速度に達することのできなかったウインナーは重力を振り切ることができずにリノリウムの床に墜落した。
べちゃぁ。
着陸失敗。あわれ無惨なウインナーさん。
「あれ? 僕今吹き出すようなこと言った?」
「・・・・・・須島君」
なんだか驚いたような顔をして私のベットの周りを覆っているカーテンの隙間から入ってきたのは、今朝からたびたび姿の見えなかった須島君だった。
「やっほー、元気してた?」
「・・・・・・別に」
「あ、もしかして僕が居なかったから寂しくて泣いちゃったのかな~?」
「べ・・・・・・別に?」
私は今日一日彼がいなかったせいでいろいろと思うところがあるので、ムスッとした顔で彼の言葉を適当に無視してお弁当の続きを食べ始める。
それと、さっき落としたウインナーはスタッフがおいしくいただけ無かったので、ありさんに処分してもらいました。
「まあそんなことはいいんだけどさ、初体験はどうだった?」
「うぐっ」
また吹き出すところだった。
なにいってるの?
「いや、そんなのど詰まらせるようなこと言ってないよ?」
「言ってるから・・・・・・!」
「ただ僕は佐藤さんとの二人きりでの初めての会話はどうだったのか聞いただけだよ?」
「・・・・・・」
え・・・・・・?
顔が見る見る熱くなっていく。
「あれあれ~? 恋ちゃんは僕がいったいどんなことを聞いたと思ったのかな~」
「うるさい」
「にやにや」
「うるさい・・・・・・!」
「ちぇ~まあいいや。それで? 佐藤さんとは仲良くなれた?」
「・・・・・・」
「なれ・・・・・・無かったんだね。なんていうか、もう少しがんばりましょう?」
「子供扱いしないで」
「いや~でもさ~せっかく佐藤さんがお弁当持ってきてくれたんだよ? 仲良くなるチャンスなんてこれ以上ないって位のアタックチャンスだったよ?」
「・・・・・・でも、佐藤さん終始不機嫌だったし」
「ん~」
彼は困った顔で腕を組んでうなる。
ダメだこりゃ、とか思われてそう。
「ダメだこりゃ」
「思ってても言わないでよっ!!」
思わず大きな声を出してしまった。
私涙目。
彼が、あっやばっという顔をした。
でも、何がやばいんだろう。私が涙目になることくらいいつものことだし。私泣き虫だし。
でも、その疑問はすぐに解消される。
乳白色色のカーテンの向こう側から声がかけられたから。
「き、木下さん? 目が覚めたんですか?」
「ぁ。ああ、はい」
声の主はカーテンの隙間から顔をのぞかせ、中を覗いてきた。
不安そう、と言うよりはおどおどした感じで。
「せ、先生・・・・・・?」
「はい、先生です」
そこにいたのは保健室の先生ではなく、私のクラス担任の先生だった。
っていうか、何時の間に入ってきたんだろう。
私の寝ている間かな?
「木下さん。少し寝て落ち着いたみたいでよかったわ」
「い、いえ」
「でも、ここ一応保健室だから、あんまり大きな声出さないようにお願いしますね」
「あ。う、ごめんなさい」
そうだった。
ここ保健室だったよ。
あれ? でも何で私だけ注意されてるんだろう。須島君も一緒に居るんだから___________。
「(っていない!!?)」
「・・・・・・?」
先生は不思議そうな顔で首をひねっていた。
私は周りを見て今気づいたけど、そこに須島君の姿はなかった。
一人で逃げたみたい。
ゆるさん。
「あ、まあ、そうね。木下さんも、大丈夫そうなら教室に戻ってきてね。皆心配してるから」
「・・・・・・はい」
それは、嘘だ。
先生は確かに、突然授業中に泣きだした私のことを変に思っただろうし、心配もしているかも知れないけど、きっとあの教室には私を心配してくれるような人はいない。
須島君くらいしか。
私が俯いたのを見て、これ以上の面倒事は避けようと思ったのか、一人にしてあげようと気を利かせたのか分からないけど、先生は保健室を静かに後にした。
はぁ・・・・・・。
私の居場所は結局。教室じゃないんだなぁ。
ましてや保健室でも、きっとほかのどこでもない。
須島君。私の幼なじみ。
きっと彼がいるから、そこが私の居場所で。
彼がいなければ私の居場所はどこにもない。
彼がいなくなってしまったら、もし須島君が私のことを見限ってしまったら、私は。
「私は・・・・・・どこに帰ることができるんだろう」
その小さな独り言は、薬品のにおいで満たされた難破船のように保健室の中に漂った。
難破しているのは私自身かも知れなかった。
その言葉を聞く物は誰もなく。
答える物も何もなく。
ただただ、壁に取り付けられている時計だけが規則的なかちっかちっと言う音を吐き出し続けていた。
絵も描かなくちゃいけないんですけど、小説だけで手いっぱいですねぇ。
あっ、誤字脱字、誤用、わかりづらい表現などございましたら遠慮なくご指摘くださいませ。
では、私は家の中に侵入した虫さんと戦うので今日はここまで。
また明日。